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美形王子が苦手な破天荒モブ令嬢は自分らしく生きていきたい!《コミカライズ完結!》  作者: 紅葉ももな
『悪役令嬢ってもしかしてこれのこといってます!?』
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107『夢……』前半アラン視点後半シャノン視点

 アラン様と笑顔でリシャーナが俺に向かって駆けてくる。


 ゾライヤ帝国で再会した時はコロコロと丸かったが、遠征軍で生活する間にすらりとした立ち姿が美しい娘に変化していった。


 相変わらず胸は薄いが、性格に反して自己主張が控えめなのも俺は可愛いと思う。


 またアラン様とよびかけるリシャーナの身体が、一回り大きく……膨らんで……


 ズシンと地響きをたててアラン様と迫ってくる巨漢リシャーナに締め上げられて夢から覚めた。


「うわぁぁぁー! はぁ、はっ……ゆ、夢?」


 脂汗が額を濡らしている。 夢……それにしてはやけに現実味がある内容に嫌な予感がした。


「リシャ! 見てくださいモントレの新作期間限定スイーツですわ!」


 ここ数日、授業が終わる度に俺はリシャとお茶会をするのが日課になりつつある。


 ローズウェル王国の第三王子ルーベンス殿下とその婚約者のクリスティーナ嬢、第二王子カイザー殿下も一緒なのが気に食わないし、なぜか今日はシャノンと言う名前のフリエル公爵家の令嬢まで同席している。


 クリスティーナ嬢と新作スイーツに瞳を輝かせて、フリエル公爵令嬢にスイーツを薦める光景は、よく見る範囲内だろう。


「アラン様、何か?」


 ついついリシャに見要りすぎて居たのを訝しく思ったのかルーベンス殿下が声をかけてきた。


「いや、ちょっと気になった事が有ってね……」


 誤魔化すように温くなった紅茶を口に含んだ。


「気になること? ……あれ? もしかしてリシャ、まるくなっ……ぶふぁ!?」


 あえて俺が触れないようにしていたことを口に出したルーベンス殿下の顔面にハリセンが直撃した。


 扇子ににているこの凶器をリシャはハリセンと読んで愛用しているようで、スパーンと小気味いい音を当たりに響かせていた。


「失礼な! 丸くなってません!」


「そうですよ。 丸くても丸くなくてもリシャが可愛い事に変わりはないんですから!」


「クリスティーナ様、いっさいフォローになってませんわよ?」


 クリスティーナ嬢の言葉に、すかさずフリエル嬢が突っ込んだ。


「痛いじゃないか、暴力反対! 事実を指摘されたからってハリセン出してくるなよな、と言うか一体どこに隠し持っていたんだよそんなもん」


「うるさいわね」


 赤くなった鼻を擦りながらルーベンス殿下が抗議していたが、リシャーナは気にすることなくひょいっと口へ焼菓子を放り込む。


「それにな、言っておくがリシャが太ったのに気がついたのは俺じゃなくてアラン殿下だ!」

 

 紅茶を口に含んだとき、立ち上がったルーベンス殿下が俺を示して訴え始め、火の粉が飛んできて盛大に噎せた。 


「はぁ、何でバラすんですかルーベンス殿下。 私はリシャが一回り大きくなったとか、頬がふくよかになったとか、服がピッチピチになったなんて言ってませんよ」


 ニコヤカに告げれば、リシャは手に持っていたスイーツをぽろりとテーブルに落としていた……


「アラン様……私丸くなりました?」


「えぇ、この調子なら来年の今頃には前を凌ぐコロコロリシャが出来上がるでしょうね?」


 俺の言葉にリシャーナはわなわなと震え始めた。


「あっ、明日から減量すれば直ぐに……」


「無理だな」


「無理ですわ」


 それまで口を出さなかったカイザー殿下が断言し、フリエル嬢もすかさず否定した。


 フリエル公爵令嬢……実は意外といい性格をしているのかもしれない。


「はぁ、仕方ない私が減量に協力してやろう」


「はい!? いや、それはちょっとぉー」


 視線をさまよわせながらしどろもどろにカイザー殿下を見るとまるで助けを求めるような視線を向けていることに、苛立ちが起きる。


「確かに丸くなりましたからね。 アラン殿下がお嫌なら私が手取り足取りお手伝いいたしましょう」


 なにが手取り足取りだ。 カイザー殿下がリシャーナを見る目に苛立ちが募る。


「わたしの味方はいないのか……」


 絶望したような顔をしてリシャーナ嬢が立ち上がると一目散に走り始めた。


「さて逃げ出した姫を探しに行きますかね」


 立ち上がった俺に続いてカイザー殿下が立ち上がった。


「そうだな……あれの方向感覚が壊滅しているから変なところに迷い込む前に捕獲した方が良いでしょうね」


 なぜカイザー殿下までリシャーナを捜しにいく流れになっているのか……


「カイザー殿下はこのままお茶会を続けていただいて結構ですよ」


 ただでさえローズウェル王国に来てからというもの、しがらみばかりで二人で会う機会など皆無なのだ。


「いやいや、彼女はうちの公爵令嬢なのでね。 アラン殿下に迷惑はかけられません」


 二人で胡散臭い笑顔で応酬を繰り返していれば、クリスティーナ嬢が立ち上がった。


「それでは誰がリシャを先に見付けるか競争ですわね! 初めに捕まえた人が次の休養日にリシャを独り占めですわ、それでよろしいですわねシャノン様?」


「えっ!? 私も参加ですの!?」 


「勿論ですわ。 皆さん負けませんよ! お先に~! リシャ~、待ってくださーい」


 そう言い捨てて俺たちを残して走り去っていった。


「ふう、これはうかうかしてられませんね。 それでは私もお先に失礼します」


 そう言ってカイザー殿下は余裕たっぷりに歩いていった。


 深い溜め息をつき、俺は勝負の景品を得るためリシャーナが消えていった方角とあえて反対へと走り出した。


「ルーベンス殿下は行かれないのですか?」


「あはははっ、そうだね。 リシャは探すより釣った方が早いからね。 さて餌は何が良いかなぁ……」


 そう言いながら、なにやら考え込み始めたルーベンスを確認しながらシャノンは昨晩のリシャがいっていた事を反芻していた。

 

「ゲームだけど、ゲームじゃない……ね」


 いずこに逃げ出したか分からないリシャーナの言葉を思い出していた。

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