『東京郊外』 特殊訓練への出発
先日の吸血鬼襲来から、幾日か過ぎ、俺たちは、日常を過ごしていた。
エン先輩は、聖武器研究所に配属され、研究に没頭しているらしい。
アタルは、カホを助けられなかったのを後悔し、一人、自治区内の何処かに居るらしい。今は音信不通になっている。
そして、襲来をうけ、父さんたち、対吸血鬼の専門家が出した決断は、特殊訓練だった。
特殊訓練の内容は、三人グループに分かれ、それぞれ指定された場所に赴き、対吸血鬼の専門家による訓練だった。
さて、今日がその特殊訓練のグループの集合日だ。俺は用意を終え、集合場所に赴いていた。
「あっ、クロマくーん」
名前を呼ばれ、見るとユナが手を振っていた。
「ユナ! ユナが一緒なのか?」
「うん。そだよ」
ユナは手元の紙を見ながらそう言った。
「もう一人は、分かるか?」
「まだ、来てないけど、もう一人はね「おまたせー!」
ユナの声を割って入ってきたのは、
「…姫」
姫、…姫ことローザだった。姫っていうあだ名は金髪碧眼であることが由来だ。
「あっ、クロマも一緒なんだ。頑張ろうね」
「ああ」
「…クロマ、嫌そうな顔してる。私のこと苦手だっけ?」
「そうじゃないんだが、姫と行動して良かった試しがないからな」
「それは言えてる。私もクロマとなにかしてると、調子出ないんだよね」
「だな。調子悪い姫しか俺は見たことない。のくせして、俺より強いからな」
「そんな…褒めても何も出ないよ?」
「うわっ、姫ちゃん、顔真っ赤だよ!? 大丈夫!?」
と、ユナが言ったので、改めて姫を見ると、なるほど真っ赤だ。
「ええっ!? 真っ赤!? えー、恥ずかしいよ…」
「大丈夫、そうだね」
「うん。大丈夫だよ」
「じゃ、行こっか。私たちの行き先は『東京郊外』…って、え?」
「郊外って、おいおい、特殊地域じゃねえか。そんなとこに人が住んでんのかよ」
「特殊地域だからこそじゃない?」
という姫の反論に俺は納得するしかなかった。
「まあ、行けば分かるか」
「そうだね」
俺たちは、とりあえず出発をした。
『東京郊外』、そこへ行くには郊外電車を使うほかなく、俺たちはその電車を使う羽目になった。
羽目になった、というのはその電車は随分と昔から動いており、車体はオンボロ。運転手は過去の遺産であるアンドロイド…こいつもいつ壊れるかわからない。まあ、最悪、運転手が壊れても歩いて行けばいいのだが、一番の問題はレールだった。運転手にはアンドロイドを配しておきながら、レールは木材と鉄…ところどころ鉄が木にすり替えられてたりするらしい。木はほとんどが腐りかけ、鉄は錆びようとしている。いつ電車が脱線するか不安でたまらない。そういう移動手段の危険性も、『東京郊外』が特殊地域になっている理由でもあるのだろう。
「わあ…前の方、見て、クロマくん」
そう言われ、見てみると、なんと恐ろしい木の橋があった。
レールと同時期かそれ以上前に作られたであろう橋だ。落ちないよな? 落ちないでくれよ…。
「クロマ、お菓子あげる」
俺が震えてるのを見て姫は、俺にお菓子を差し出した。
「お、おう。姫、ありがとな」
「うん。あの橋越えたらすぐだよね」
「た、多分な」
「…大丈夫だよ。クロマ、怖がってないのなんて、ミナだけなんだから」
ミナが? あ、そっか…ユナか。はしゃいでるもんなユナ。
ははは…いいなあ…。
俺は、そのまま、夢の中に落ちていった。




