喪失
右側がストンとなくなって
なくなったこと気づかないで
何度も転びそうになった
左側は相変わらず
右側を補うわけでもなく
気遣うわけでもなく
右側の幻を想像する
現れては消える
こみあがるかなしみに
堪えきれずに泣き出した
右側は静かだ
端からなかったように
澄ましている
戻らないと知ってからも
右側の気配を感じると
声をかけてしまう
馬鹿、もうないんだよ
野暮な突っ込みを入れる
わかってる、わかってると
笑いながら受け流す
ない、違う
ある、違う
遠くにいってしまった
それだけのこと
独り言が多くなった
左側が時おり不審な目を向ける
わかってる、わかってる
泣きながら受け流した