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4話

ちょっと無理矢理すぎたかな…?

この世界に来て気が付けば5年が経っていた。

要するに今日で俺は5歳になる。誕生日だ。

ちょっと期待に胸を膨らませてベッドから飛び起きた。


「おはよ、母さん。」


起きてみるとシエルが朝食を作っていた。

シエルは俺に気付くと「おはよう」と返してくれたが、それ以上の事は何も言わず手を動かしている。


…ふむ、やはりこの世界には誕生日という文化はないっぽい。


俺は朝食が出来るまで外を探検していようかと思い、外に出ていった。




「ごちそうさまでした。」


朝食を終え、食器を台所に運ぶ。


「にー!まってー!」


まだ食べ終わってないティアが俺に声を向ける。

流石に固形食ではないが、お粥みたいなモノなら食べられるようにはなっている。

俺は食器を置くと、ティアの隣に座る。


「うぅ…。」


ティアは自分のごはんに入っていたニンジンを皿の端っこに寄せていた。


「ティア、好き嫌いはいけないぞ。」


「だ、だって〜。」


「お兄ちゃんは食べ物をお残しする子は嫌いになっちゃうな〜。」


「やだやだ!おのこししないからきらいになっちゃやだ!」


ティアはそう言うとスプーンでニンジンを掬い、少し間を置いてから口にふくんだ。

もぐもぐと口を動かし、涙目になっているティアのあたまに手を置いて、いい子いい子してやる。


「えへへ///」と、なんとも嬉しそうに目を細めて笑みを見せてくる。


「ほら、早く食べちゃいな。」


「うん!」


ティアはあっという間にごはんを平らげてしまった。


「んじゃあ、行ってくる。」


「うん、気を付けてね。」


朝食を終えるとグレイズはすぐに狩りの準備を済ませて早くも出かけるらしい。


「父さん、今日は早いね。」


いつもより早く家を出るグレイズに声を掛ける。


「ん?あぁ、リプルか。今日はちょっと寄るとこがあるからな…遅くなるかもしれないんだ。…多分、夕方あたりになっちまうな。」


「ふーん…気をつけてね。いってらー。」


シエルと共にグレイズを見送ると、服の裾を引っ張られた。


「にー!あそんでー!」


じゃじゃ馬だ。どうやら今日もティアと遊んで終わるっぽい。出来ればレイディンとも遊びたいが、シエルにべったりで相手にしてくれない。…(´;ω;`)ブワッ






「リプル、ちょっと水をくみに行ってもらってもいい?」


ティアと遊んでいるとシエルが声を掛けてきた。


「え?今から?」


「えぇ。水が無くなってしまって夕食が作れないの。お願いできる?」


ちらりと窓の外を見る。

オレンジ色に染まっている空。そろそろ東落ちてしまう時間帯だ。

しかも、ここから水をくみに行くとなると徒歩で片道30分以上、往復で1時間以上かかる。

…まぁ、いいか。実際、5歳児にこの時間帯に行かせるのもどうかと思うが。


「うん、わかった。」


「えー、じゃあティアもいくー!」


俺が了解するとティアも行くと言い出した。

もちろん、そんなこと俺が許すわけないので、「いい子にしていたらすぐに帰るよ。」と言ってなんとか引き下がってくれた。

ティアの頭を撫でてから水桶片手に俺は家を出た。




$━.+⌒+.━$━.+⌒+.━$━.+⌒+.━$━.+⌒+.━$




「あれは…父さん?」


水くみの帰り。木に背中を預けるように座っているグレイズを俺は発見した。

何やら苦しそうに顔をゆがめているグレイズに近づこうとした時、そのグレイズの前に青銀色の甲冑を纏った騎士らしき者が現れた。

俺は木の裏に隠れ、その様子を見守る。

何やら喋ってるっぽいが…グレイズの顔はあまりよろしくない。

ある程度、近付く事が出来たので耳をかたむける。


「どうやら、お前には資格がないらしいな…ここで殺してしまうのも勿体無いが、仕方ないだろう。」


騎士はそう言うと懐から剣を抜いた。


…今、何て言った?グレイズを殺す?


目の前で、苦痛の表情を浮かべるグレイズに剣を振り上げる騎士。


「…さらばだ、同志よ。」


させるか!!


俺は瞬時に水桶に物理系術式、それと自分の体に身体系術式をかけ、騎士に向かって水桶を全力投球。

水桶に気付いた騎士はそれを剣で一閃。


「おりゃああああぁ!!」


「っ!?」


剣を振り切った騎士の胸に俺はライダーキックを決めた。

騎士は少し吹っ飛ぶもすぐに体勢を立て直し、剣を構える。


「な、なんでリプルが…。」


「そんなことより、早く逃げて!」


「逃がすと思うか?」


気が付けば目の前には剣を横に構えた騎士の姿が。


いつの間に!?


左からの横振りにしゃがむ事で避けるが、そんなのは読まれていたらしく、俺の頭上で停止させ、振り下ろしてきた。


「てぇええぇい!!」


バシッと剣を白刃取る。


「なん、だと?」


さすがの騎士様もこればかりは驚きを隠せない様子。


あまく見られちゃ困りますぜ。身体系術式によって研ぎ澄まさせた反射神経を。


騎士は大きく後退し、剣を構え直す。


「父さん、借りるね。」


流石に素手じゃまともに戦えない。5歳児に対して向こうは大の大人。まず勝てるわけがない。

グレイズから取った剣を構える。どこにでもあるショートソードだ。

左に握られたショートソードに物理系術式を掛ける。


最初に飛び込んだのは俺。

右から左に振り抜くがもちろん、防がれる…いや、弾かれた。


「クッ!」


俺は弾かれた反動を利用し、距離をとろうとするが騎士がそんなことをさせてくれるはずもない。着地をしたところを追撃してきた。流れるような剣撃に俺は防戦一方を強いられた。

上からの振り下ろし。

その攻撃を見逃さず、ショートソードの腹で受け流し、お返しとばかりに上段から振り下ろした。

しかし、向こうはすぐに距離を開ける。

こっちには防ぐのに精一杯だというのに、向こうが余裕をもって攻撃してくるのがなんかムカつく。


「もういい、逃げてくれリプル。俺のことはいいから早く…」


「うるさい!」


グレイズの言葉を遮る。


「俺を置いて逃げろ?ふざけんな!お前が死んだら誰が家族を守るんだよ!」


「そ、それは…。」


言葉が見つからないのか、うつむいてしまうグレイズ。


「…ねぇ、父さん、約束して。絶対に家族を守るって。どんな事があっても大切にするって。信用するって。」


「り、リプル?」


俺の言葉に戸惑いの表情を見せるグレイズ。


「…ごめん、父さん。」


「な、リプ───」


俺はグレイズの胸ぐらを掴むと思いっきり蹴り飛ばした。

グオンと唸って吹っ飛ぶグレイズの後を追跡しようとする距離にショートソードを突き立てる。


「行かせねぇよ。」


「…なら、無理にでも通るまでよ!」


ガキンっ!とお互いの刃が接触し、火花を散らすと同時にお互いに距離をとる。


そろそろきつくなって来た。


次で決める!


俺はショートソードを逆手に持ち替えて構える。


向こうも次の一撃で決める気らしい。剣を握っている右手を左にまわして構える。


あたりは既に日が沈んで暗くなりかけている。


…今だ!


思いっきり地面を蹴った。出だしの踏み込みはほぼ同じタイミングだった。


何もかもが向こう側が上手だ。間合いを詰める速度に迫る際の威圧感。それに、剣技。

身体系術式をかけているにしても所詮は5歳児の体。運動能力なんて高が知れる。

勝てる見込みがない戦いだ。


俺は詰め寄った速度を殺さないまま跳躍。それと同時に向こうも剣を横に振るってきた。今までの速さが比にならない程の剣速。


その刃は俺の右の太腿ふとももを捉え、そして左側ごと切り裂いた。


「っ!?」


そんな感触をまた味わった。まだ、痛みは感じない。


相手は甲冑を身に付けている。普通に斬りかかっても弾かれるだけだ…狙うは可動部分。襟と兜の間、首の付け根部分だ。


「うらあああぁあああああ!!」


グジュリ…。


吸い込まれるように狂いもなく突き刺さった渾身の一撃。


「が…!?」


声を漏らす騎士。兜のしたで驚愕の表情を見せているに違いない。

俺は顔を相手の耳元に近付ける。


「相手がわるかったな。」


「こぉんの…クソガキがああああぁぁぁぁ!!」


騎士は俺の髪を掴むと引きはがして、投げつけた。

着地先には川が流れていた。

川にダイブする前に、騎士が力なく地に伏せるのをこの目で確認した。


…よかった。これで守れたかな?


意識が朦朧としている。太腿が熱い。痛みはあるものの、既に意識が遠くなっているおかげか、あんまり気にならない。


じゃあ、家族を任せたよ、グレイズ。

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