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36話

今回も短め。と言うよりは次話の繋ぎなので短くなってしまいました。

 ドンッ! ドンッドンッ!


 音に誘われて窓から外を覗く。

 音はまだ続いており、なる度に空に煙が上がる。


 どうやら予定通り行うらしい。

 このような表現は前世での運動会等にも用いられていたもので、思い出してはついつい頬が緩んでしまう。


 「ほらマリル、起きろー」


 よだれを垂らし、だらしない顔を晒しながらも気持ちよさそうに眠るマリルに声をかけながら体を揺する。


 あと五分と言いたげに寝返りをうって睡眠を妨げる魔の手から逃れようとする。


 まあ、なら布団を取り上げるだけだけどな。

 もちろん、窓全開で。


 3月とは言っても、まだまだ肌寒さは残る。

 見よ、窓から入ってきた風が布団を取られ丸まっているマリルに襲いかかる。


 『お、オニィ~……』


 どうやら念思を送れるぐらいには目が覚めたようだ。


 「だから言ったろ? ウィップちゃんなんて観てないで早く寝ろって」


 『ぬおおお』


 マリルはのっそりとした動きで起き上がると、まだ重いまぶたの上から目をこする。

 そう、一昨日はトリクトリーを練り歩いたせいでお金も魔力もかなり削がれたので昨日は英気を養うつもりでいたのだが……残念なことに、「魔法老女セクシー☆ウィップちゃん」の視聴をマリルに強制されたのだ。

 1日中……とはいかなかったものの半日はウィップちゃんだった。

 30話近く観た気がする。


 その辺りから俺は寝たのだが、マリルは視聴を続行。ソラも何故か観続けていた。

 とりあえずウィップちゃんは置いておこう。マリルを着替えさせなければ。


 「ったく……ほら、早く着替えちゃえ。一般枠で出る人は早めに行かなくちゃいけないんだから」


 『おぉ……そういえばたいかいだったね』


 その通り。今日は年に一度の大会、ドールロイド演武会の開催日である。



-*- -*- -*- -*- -*- -*- -*- -*-



 『んだぁぁぁぁい、126かぁい……ドールロイド演武会、 開 幕 だぁぁぁぁああ!』


 『『『『うおおおおおおおおおおおおおお!』』』』


 モニター越しからでもわかる程の熱狂ぶりについ顔を引き攣らせてしまう。


 今、いるところは大会会場の地下1階にある控室のようなところだ。

 もちろん、ここにいるのは俺とソラのように大会に出るドールロイドとその主人だ。


 『ひといっぱいだね……』


 まぁ、マリルみたいに付き添いもいるんだろうけど。


 『いまからなにするの?』


 「本戦に出るための予選さ。人が多いから予選を行って、本戦に出られる人を決めるんだ」


 『ふーん』


 あ、ダメだ。これ理解してないやつだ。

 ま、理解しなくても見てればわかるだろう。


 『実況は毎度お馴染みピエールこと、キッタバッグ・ジャゴビー・ヴァン・ピエールがお送りしまぁ~す!』


 両手を高らかに上げて、そう宣言するのはピエロを連想させる化粧に衣類を纏った男。


 『それじぁ本大会を軽~く説明するよ。

 まず、この大会は一般枠予選と本戦があって1日目に一般枠予選、そして2日間にわたって本戦を行うのさ。1日目の一般枠予選の内容は参加者の中から10人をランダムに選んでバトルロワイヤル形式で闘ってもらうよ。制限時間は10分で、決着がつかなかった場合は失格さ! 予選で手こずってるようじゃ話にならないからね。あ、それと10人って言ったけど人数によっては増減するから気をつけてね!

 2日間に渡って行われる本戦は時間制限無しのトーナメント形式。1日目に一回戦と二回戦を終わらせて、2日目に準決勝と三位決定戦、そして決勝を行って表彰式って流れさ!』


 そう言い切ったピエールはポケットに手を突っ込んでは中から筒のようなものを取り出しては先端を口に運び、喉を鳴らした。

 どうやら水筒のようだ。


 『ぷは~! やっぱり喉が渇いたらオレンジジュースに限るね!

 さてと、それじゃ試合の細かい説明は選手たちに追って説明するからいいとして……今9時21分か。よし、10時から予選開始するのでそれまでは休憩! あ、選手たちは説明をちょろっとするから終わるまでそのまま待機だよ?』


 じゃっ! と言い残してどこかへ消えてしまった。


 あれ、説明は……。


 と思ったところで微力ながら術式を展開する際に生じる魔力の流れを感じた。


 「おお~、やっぱり今年は人が多いね。うんうんいい事だよ。

 さぁーって、これから試合上のルールを説明するよ! とは言っても大筋は言っちゃったし、補足って感じだよん」


 どこからともなくピエールが現れた。

 どうやら感じた魔力はピエールのものみたいだ。

 天術式だろうか? しかし、天術式にしては違和感があった。

 なんと言うか、現れたと言うよりは集まったと言うべきか。


 「毎年参加してくれてる人ならわかってるとは思うけど……本大会において生じたドールロイドの被害は全部自己責任でぇ~す! 闇討ちにあっても、なんかされてもこっちでは一切責任を取るつもりはないから覚悟してね! そんな事でやられちゃう奴なんてそもそも本戦になんか出られるわけ無いから、自信がない子は今すぐ回れ~右! さぁ帰った帰った!」


 にんまりと口角をこれでもかと上げてとてもいい笑顔を見せながらぐるりとあたりを見渡すピエール。


 しかし、誰も動く者はいなかった。それだけみんな自信があるのだろう。


 俺、出でいこうかな。


 「うんうんこれだけいるのに誰一人怖気づいてないね……いいことだよ! と言いたいけど残念なことに雰囲気で出て行きづらいって子もいるみたいだね……ま、いいけど!」


 それにしてもこのピエロ、かなりテンションが高い。一体何者なのだろうか。


 「それじゃ改めて説明するよ。

 予選の試合形式は時間制限ありのバトルロワイヤル。参加者全511人の中からランダムに10人ずつ選ばれるから選ばれた人は素早く出てきてね。もし、1分以内に出てこなかったら……失格、帰れ!

 で、基本的に術式でも武器を使ってもなんでもOK! 全力で相手を行動不能にするか場外に吹きとばしちゃいなよ! あ、観客席の方はピエールの術式が展開されてるから思いっきり暴れてくれたまえよ!

 あ、そうそう抽選結果は番号でこのモニターに表示されるし、ピエールの方からも呼び出すから安心して。受付の際、貰ったでしょ? ネームプレートみたいなヤツ。あれの裏に書いてあるから確認しとくように。

 こんなもんかな……なにか質問があるひとー!」


 「はい、質問がありまーす!」


 右手を上げて主張する。しかし、向こうからは見えないと思いソラに抱き上げてもらってだが。

 説明では全力でとは言っていたものの、どうしても聞いておかなければ不安でしょうがないのだ。


 「はいはーいって可愛らしいお譲ちゃんだね、将来はすごく綺麗になるよ。ピエールが言うんだ間違いない」


 いつの間にか俺の目の前に移動していたピエール。

 驚くも、咳払いをして落ち着かせる。


 「あははは、ありがとーございます。えっと質問なんですが、もし相手や自分のドールロイドが修理不能となるまで壊してしまったり壊れてしまった場合ってどうなりますか? それも自己責任てことで大丈夫ですか?」


 「もっちろんだよ~。修理不能になったとしてもそれは実力のないドールロイドとそれを見抜けなかったマスターが悪いからね。

 しかしそんなこと聞くなんて……お譲ちゃん随分と自信があるね~」


 「いえいえそんなことは……。全部自己責任とは聞いていましたが一応、確認しておきたくて」


 「うんうん確認はいいことだよ。ピエール、お譲ちゃんのこと気になっちゃったな……今、きみを抱き上げてるのがきみのドールロイドだよね? 試合楽しみにしてるよ! はい他にはいないかな?」


 そして質問が終わっては俺の目の前から消えていつの間にか元の場所に移動していた。

 もちろん、違和感のある魔力を感じる。


 「特になさそうなので、かいさーん!」


 ぼんっ! と煙を上げて姿をくらましたピエール。

 奴は忍者だったか。



 そして早くも1回目の予選が始まろうとしていた。

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