21話
物語を書くのってやっぱり簡単にはいかないね。
書きたいのは決まってるのに、そこまで持っていく技術が欲しいぜ……!
ギルドに登録して早くも、二週間が過ぎた。
基本的に、Gランクの冒険者が受けられる依頼は街の中で行えるものがほとんどだ。
例えば、ペット探しやお世話、それにお店の手伝いや孤児院の屋根の修理などもある。
昨日は、馬車を売っている店の馬小屋の掃除をやった。
もちろん、これらの依頼によって得られる報酬額は多くはないものの、それ以上のものを得る事ができると俺は思っている。
そしてたった今、俺とソラは街の北部にある港での依頼を終わらしてギルドに向かう途中である。
「あら? リプルちゃんにソラちゃんじゃないですか、こんにちは。この前は依頼を受けてくれてありがとうございます、お陰で助かりました」
向こうの方から黄緑色の長い髪を三つ編みにし、眼鏡をかけた神父服を着た男性が食料が入った紙袋を両手いっぱいに持って近付いてきた。
「お! リプルとソラじゃん!ひさしぶり!」
「あ〜リプルちゃんとソラおねえちゃんだ〜。おひさしぶり〜」
その男性の後に続いて同じような紙袋を1つずつ持った、男の子と女の子が声をかけてきた。
神父服を着用した男性に
はバーナード・レオナール。
レオナール孤児院を切り盛りしてる人で、街で住む所のない孤児たちを引き取って育てている人だ。
で、にへら〜とポワポワするような笑みを浮かべている前髪ぱっつんの女の子は孤児院に住んでいる一人で、名前はヘレナ・レオナール。
その隣には、まるで昭和の頃にいそうな……いや、絶対にいる坊主頭の男の子がニカッと上の前歯がないことを気にしないで笑ってみせている。名前はエトム・レオナール。同じ孤児院の子だ。
一周間前、屋根の修理の依頼を受けたときにお世話になったのだ。
「あ、バーナードさん。それにヘレナちゃんにエルドくん、こんにちは。それにしても、みんな元気そうでよかったです。……あれから足の方はどうですか?」
途中までは三人に対してで、最後の言葉はバーナードに対して発した。
「えぇ、とても良くなりましたよ。今は歩いても前のような痛みなんて感じなくなりましたし、若返ったみたいです」
「あなたいくつですか……。でも調子良さそうでよかったです。てか、荷物多いですね……持ちますよ?」
男性は食料の入った紙袋を四つ抱えていた。
「いやいや、大丈夫だよ」
「……ホントですか〜?」
じと〜と、バーナードを見つめる。
「……はぁ〜。あまり無理はしないでくださいね? それじゃ、俺とソラは依頼報告があるのでこれで失礼します。……ヘレナちゃん、エルドくんまたね」
「またな!」
「またね〜」
「では、お気をつけて。ささ、行きますよ二人とも」
三人に手を振ってから、俺とソラは再び冒険者ギルドに向かい始めた。
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「昇進試験……ですか?」
時刻は正午を過ぎた辺だろうか。
ギルドにて朝済ませた依頼を報告したところで、そんな話しが出てきたのだ。
「えぇ。……はい、これ報酬の銅貨10枚。そろそろ貴方も慣れてきたでしょ? もうFになってもいいと思うの」
セシルとは別の受付嬢である、クリス・トゥニットはカウンター上に銅貨をトントンと置いていく。
「ランクか……んー。なにかメリットってありましたっけ?」
10枚あることを確認して銅貨を懐にしまいながら尋ねてみる。
「あるわよ? そもそもGランクの冒険者は制限されているからその制限を解除、ランク制限で依頼が受けられないってことも少なくなるし、何より第一印象がまず違うわよ。極端な例えだけどもし、護衛を雇うとして貴方ならGかAどちらを選ぶ?」
「む? それは……まぁ、Aですよね。……そう言えば、Gって制限されていたんですよね……はい、昇進試験受けます。受けさせてください」
制限のことをすっかり忘れていた。
クリスは俺の反応を見て、カールを巻いた金髪を揺らしながらクスクスと笑う。
「な、なんですか!」
「気にしないで頂戴。ちょっと可愛いな〜って思っただけだから」
「あ、はい」
「あら、怒らないの?」
どうやら俺の反応が思ってたものと違っていたみたいで、落胆しているのがよくわかる。
「えぇ、言われ慣れてますから……っとありがと、ソラ」
抱き上げてもらっていた体を降ろしてもらい、ソラにお礼を言う。
「なによその反応、可愛くないわよ?」
「フッ、可愛くなくてすみません。それより、昇進試験について教えてください」
ブーブー! とクリスがブーイングを送ってくるも、そんなもので怒る俺ではない。
伊達に前世も合わせて32年も生きているわけではないからな。
鼻で笑い飛ばし、さっさと昇進試験の説明をしてもらうよう促す。
「もう……。では、昇進試験の説明をするわね。内容は単純明快、ギルド側が指定した依頼を受けてもらい達成してもらうだけです」
「期限は指定されてますか?」
「基本的に、期限は指定されていないわ。だけど、内容によっては期限が設けられている場合もあるけどね」
ふむ……。試験とは言っても普段とあまり変わらないのか。……まぁ、下手に筆記試験とかあるよりはありがたい。
「はい、これが依頼よ」
クリスから差し出された1枚の紙を、ソラが受け取り俺にまわす。
「薬草集め?」
渡された依頼書には
薬草を10束採取。状態によっては報酬上乗せあり。
報酬 銅貨20枚
と、記入されていた。
「薬草を取りに行けってことですよね。そうなると……街の外に出るってこと?」
ソラに依頼書を渡してカウンター上に戻してもらう。
「そうなるわね。薬草を集めるなら、南の門から出て南西の方角にある森が密集しているから行ってみるといいわ」
「ほー、わかりました。……そう言えば、あの人は見かけませんね」
「あの人?」
トン、と依頼書に判子を押しながらそう聞き返してくるクリス。
「ほら、眼帯をした青髪の人……クラウスさんでしたっけ」
「あー、クラウスね。あの人がどうしたの?」
俺がギルドに登録した日に声をかけてきたあの青色の髪に、左目に眼帯をした男性の事だ。彼の名前はクラウス・ベルードル。Aランクの冒険者でありながら、その実力はSランク冒険者と対等かそれ以上と言われているほど凄い冒険者……らしい。
セシルから聞いた情報なので確かなのだろう。
それにしても、Sランクと対等かそれ以上の実力を持っているのに、未だAランクのままなのは何故だろうか……俺が気にしても仕方ないか。
「いえ、特には……それじゃ、いってきます」
適当にはぐらかして会話を切る。
特に気にした様子はなく、クリスは「いってらっしゃい」と言ってくれた。その言葉を背に受けながらギルドを出ようとした時だ、丁度、外から入室する冒険者とぶつかりそうになった。
「あ、すみませ……」
「おっと、わ……」
顔を見た瞬間、お互い言葉が詰まった。
噂をしてればなんとやら、相手は左目を眼帯で隠した青髪の男性、クラウス・ベルードルだった。
「……気をつけろよ」
クラウスはすぐに視線を俺から外すとそう言葉を残してカウンターに向かったって行った。
「……マスター?」
「あぁごめんごめん、いこうか」
クラウスが一瞬だけ見せた、悲しそうな表情に引っかかったものの、すぐに気持ちを切り替えてギルドを出て行った。




