19話
気がつけば30,000PV突破してました。
これも作品を読んでくださる皆さんのおかげてやんす。
ありがたや~ありがたや~( ´^ω^`)人
〜♪
歌が聴こえる。
いや、正確には響いてる……と、言うべきか。
誘われるかのように歌の聴こえる方へ歩みを進める。
昼間のような活気が嘘のように、しん……と静まり返った夜の街。
今の街を支配しているのは、星明かりの夜空と虫の音、そして透き通るようなソプラノの歌声のみ。
どのくらい歩いただろうか……。気がつけば俺は噴水のある広場に立っていた。
状況を把握するためにぐるりと辺りを見渡す。
街の中に丸く切り抜かれた石畳の広場は、四方に街の中に続く街道と、広場内にはベンチがちらほら目に映る。
〜♪
最後に見据えるのは、中央に存在する噴水だ。
そこには、満月をバックに噴水の縁に腰掛けるひとりの少女の姿があった。
蒼く光る月と相対するような紅い髪を揺らしながら歌う姿に、俺は息を呑んだ。
「……歌姫」
無意識に、そんな言葉を漏らした。
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「おはようございます、マスター」
目を覚めて最初に目にしたのは、ソラの顔であった。
ジトッとした双眸が俺をしっかりと捉え、揺らがない。
「お、おはようございます。……えっとですね、いったいなにをしていらっしゃるんですかね……ソラさん?」
耐え切れなくなり、ソラから視線を逸らす。
どうやら、ソラの今の体勢は四つん這いで俺を見下ろしている形だ。
「マスターの寝顔を見ていました」
思うんだよね。この子さ、天然って奴なのかな?
昨日、ソラがドールロイドだと判明し表情に変化がない原因が判明した。
だがしかし、ソラは時々このような思わせな行動をとるのだ。
実は中に人が入ってるんじゃね?
「と、とりあえずどいてくれ。これじゃ起きられない」
俺がそう言うと、ソラはすぐに体を引き、ベッドの上でちょこんと座る。
とりあえず上半身を起こし、腕を上げ寝起きの体を軽く伸ばす。
「マスター、お尋ねしたいことがあるのですが」
「ん? なにかな」
ある程度、体をほぐしてからソラと向き合う。
「昨晩、マスターはどちらにいらしてたのでしょうか」
ふと、ソラの目が細まった気がした。
もちろん、そんな気がしただけなので実際はピクリとも表情に変化なんてない。
それにしても昨晩か……。
「たしか、歌が聴こえたんだよな。それで噴水のある広場にいって……あれ? それからどうしたんだろう」
口元に手をもっていき、昨晩の記憶を掘り起こそうとするが、どうしても思い出せない。
「でもどうしてそんなことを?」
今度は逆にこちらから質問を投げてみる。
「……いえ、少々気になったことがありまして。先程の質問は忘れて下さい」
「おろ?」
そう言うとソラは俺の両脇に、己の腕を通すと俺を抱き寄せる。
そのままベッドから降りると部屋に備え付けられた机のところに連れてかれ、ソラと共にその机の前に座らされる。
「……はい?」
寝起きのせいだろうか。まったくもって状況が理解できない。なぜ今俺はソラの膝の上に座らされている。どうしてソラは机の上にナピュアミラーなど置いている。そしてなんでお前は櫛なんて持っているんだ。
ナピュアミラーには、いつも以上に髪が暴れている俺と櫛を手にしたソラの姿がちょびっとだけ映っていた。
「鏡と櫛なんて一体どこから。それに、そんな手でどうやって櫛を持ってるんだよ」
そう、今のソラはタンクトップにズボン、それに腕全体をすっぽりと隠した銀毛に覆われた獣腕だ。
銀毛のマントは外されており、櫛ならまだしも鏡をしまうところなんて見当たらない。
チラリとソラの方に視線を向ける。
「乙女のヒミ……ツ?」
「なんで疑問形なんだよ……」
俺のツッコミなど無かったかのように、俺を正面に向けさせると、手に持った? 櫛を俺の暴れている髪に当てて梳かし始める。
「……」
不覚にも気持ちいいと思ってしまった。
それにしても、髪を梳かしてもらうなんていつ以来だろうか。
前世では百合香に髪をかなりいじられたものだ。
ツインテイルにポニーテイルはもちろん、三つ編みやお団子なんてものもやられた事がある。
まぁ、要するに練習台にさせられていたのだ。
「マスターの跳ね毛、なかなか直りませんね」
「ん? あぁ、それはそうゆうもんだと思ってくれ」
鏡を見ると髪は大人しくなり、いつも通りになっていた。
「もう大丈夫だよ。ありがと、ソラ」
「マスターのお役に立てたようで嬉しいです」
ソラは持っていた櫛を机に置くと、キュ……とソラが俺を抱き寄せる。
「……あのー、ソラさん?」
「しばらくの間、このままでいさせてはいただけませんか?」
「あ、はい」
いきなりどうしたのだろうか?
ソラの唐突な行動に疑問を覚えながらも、俺を抱きしめている銀毛の獣腕に触れる。
うん、やっぱりすごくもふもふしてらっしゃる。
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「そう言えば昨晩、ソラは聴こえてこなかった?」
「なにがでしょうか?」
「歌だよ、歌。まぁ聴こえるって言うよりは、頭の中に直接響かせてきたって言うべきかもしれないけど」
もぐもぐとパンを噛りながらソラは首を傾げた。
「……いえ、昨晩は何も聴いてはいませんね」
「そう……」
俺はソラからの返答を聞いて、うーむと悩み始める。
所変わって、俺とソラは宿屋の食堂にきており、朝食を取っていた。
焼きたてのパンを2つと、野菜スープである。
昨晩のあれは夢だったのだろうか……。
あ、そう言えばグリムが「歌姫がいる」と言っていた。
それと関係があるのだろうか。
「あ、いたいた! おはよう、リプルちゃんにソラちゃん」
「ぬぬ? あ、セシルさん。おはよーございます。……何故ここに?」
背後から声をかけてきたのは、冒険者ギルドの受付嬢である、セシル・アルメートであった。
どうやら朝食をこれから取るらしく、その両手にはパンが2つと野菜スープが入った皿を乗っけたお盆が持たれていた。
「ふっふっふ〜驚いたでしょ? 実はこの宿屋、私の親がやってるんだー」
どうよ? と茶髪のボブカットを揺らしながら誇らしげに言ってきた。
あぁ、なるほど。だからここを薦めてきたのね。
「あ、隣座るねー」
ひょいと俺の隣の席に腰を下ろしてくるセシル。
「二人とも、今日はどうするの?」
席に着くなり、セシルはパンを手にしながら尋ねてきた。
「んー……ソラはどうしたい?」
「マスターのなさる事のお手伝いができれば私は嬉しく思います」
「ですよねー。……一応、ギルドの依頼を受けてみようかと思っています」
「ほほー。それじゃ、一緒にギルド行く? てか行こう!」
「あ、はい」
はい決定ー。と有無を言わせない素早い口調でトントンと決めてしまった。
まぁ、断る理由などないので何も言わない。
「ところで、昨日とはテンション違いますね。どうかしたんですか?」
「ん? ほら、昨日は仕事中だったから。それに、リプルちゃんみたいな小さい子が来るのは珍しいからどう接したらいいか分からなくて……5年もやってるのにダメだね」
「5年もやってるんですか? セシルさん今いくつなんですか」
「たしか、今年で21歳になるのかな」
「え、21!?」
「なによー、なにか文句でも?」
一瞬だけ、セシルの周りが黒く歪んだように見え、急いで首を横に振る。
「ち、ちがいます! まだ15、6歳ぐらいかと思っていたので……。21と聞いて驚いたんです」
「もう、リプルちゃんたらビクビクしちゃって可愛いー!」
「うわっ! ちょ、いきなりなにを!」
いきなりセシルに抱き付かれ、ばいんっと女性特有の柔らかな母性に顔が埋まる。
そんな中でも、ソラは黙々と朝食を口に運んでいたのだった。
「いや、たすけてよソラ!」
「……?」
何を言っているのか分からないと言いたげにソラは首を傾げたのだった。
なにかありましたら、気軽にコメントくださいな~




