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16話

 「マスター。マスターがおっしゃっていた、くるまいすと言うものはこちらでしょうか?」


 「おぉ! そうそうそれだよ。いや〜すまないね、探しに行ってもらっちゃって」


 「いえ、マスターのご命令ですので」


 差し出された車椅子に腰を下ろして、義足に送っていた摩力を切る。

 ふぅ……と、一息つくと口から白い息が吐かれ、雲ひとつない青々とした空に登っていく。

 それを追うように顔を上げる。少し日差しが眩しく、目を細める。


 「マスター? どうかしましたか?」


 「ん? どうもしないよ。……よし、じゃあいこっか」


 車椅子を反転させて漕ぎ始める。


 「………」


 しかし、少し進んだところで立ち止まり俺は振り返った。


 目の前に広がるのは、もともと村であった場所。今は火事や崩壊により、ほんの十数時間前の姿が見る影もなくなった光景。


 ………とはいってもこの村のことなんてこれっぽっちも知らないんだけどね!

 だって、一時間いたかどうかすら怪しいからな……。

 でも、きちんとアリアネさんは埋めたよ。流石にあのまま放置するわけにもいかないし……それに、命の恩人だからこれぐらいしないと。

 ホントは助けられたほうがいいのだろうけど……過ぎたことだし、いつまでも引きずるのはやめよう……うん。


 「……マスター」


 「ん? どうし────」


 キュ……と、いきなりソラが背後から包み込むかのように腕を回して俺に抱きついてきた。


 な、なにごと?


 「あ、あのぅ……ソラさん? いかなりどうなさったんですかねぇ?」


 予想外の行動に戸惑う俺に、ソラはゆっくりと口を開いた。


 「申し訳ありません、マスター。……しかしマスターの顔を見た瞬間、どうしてもこうしなければならないと思ってしまったのです」


 そう言い切ると抱きしめる腕に力が込められる。

 その腕に触れようとして初めて俺が拳を握っていることに気が付いた。それもかなり強く握っていたらしく、手のひらに血が滲んでいた。

 さらに、なにかが頬を伝ってソラの腕に落ちる。


 「……ハハ」


 そんな自分を見て、口から笑いがこぼれてしまう。

 どうやら俺が思っている以上に俺自身は怒りと悲しみを感じてるみたいだ。


 『聖剣、封印してくれない?』


 脳裏にウォーカーの言葉が蘇る。


 「あぁ、やってやるさ……」


 ぎゅっと再度、拳を作り涙を拭って呟いた。


 「マスター?」


 相変わらずの淡々とした音。しかし、今ならなんとなくであるが、心配してくれているのだとわかる気がした。


 「ありがとう、ソラ。おかげで落ち着くことができたよ。……いこっか」


 肩越しに覗いてきたソラに微笑みかける。

 ソラは静かに頷くと俺を抱きしめていた腕を離した。


 『パパ……やっぱりもっとぎゅってして』


 脳裏に幼い頃の百合香の舌っ足らずな声が響いた。

 ねだるように、その小さな両手を広げて突き出してくる光景。


 確か、この時は百合香が学校で友達と喧嘩をしたらしく泣いて帰ってきたんだっけな。そんで泣きやむまで抱きしめてあげたんだよな。んで、泣き止んで百合香がもう大丈夫と言ったから離してあげたんだけど……結局、「もっと!」ってねだられたんだよね。


 ……あの時も百合香はこんな気持ちだったのかな。


 もう一度抱きしめてほしい。


 無意識にこみ上げてくる感情を感じながら俺は車椅子を戻すと、ソラに対し言葉を発した。


 「ソラ。車椅子、押してもらってもいい?」


 笑顔を向けながら言ってみるも、ソラの表情はピクリともしない。


 「はい、マスター」


 その返事が不思議と力強く感じたのは俺の錯覚だろうか。……うん、錯覚なんだろうな。


 なんて思いながら、俺はソラに押されて村を後にした。


うわなにこれすごく短い。字数を平均的に書けるようにしたい……

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