第三種接近遭遇
私の妹はもう高校生だ。
やんちゃだったけれど可愛かった昔と違い、今では厚い化粧に最新流行の服を着て一分の隙もない「女」になっている。
私は棚の奥にしまい込んでいたアルバムを取り出す。ページを繰るとあかぎれの指がひどく痛む。ボロボロの私の指はまるで魔女のよう。
小学生の妹が見えて手が止まった。
息を飲んだ。
それは比喩的な意味ではなく、別人だった。髪の色も瞳の大きさも服も肌の色も何もかも今とは違う。
なんてすべすべの肌に丸っこい輪郭。艶やかな髪。二重の瞳は睫毛が長い。まるでマスコットキャラのよう。
今の彼女はといえば、丸坊主の頭に尖った耳、白目のない真っ黒で大きな瞳、肌の色は青く、三本指、背は低い三等身だ。
――考えてみればまるで宇宙人そのものだ……!
恐る恐るページをめくると、一年ごとに彼女は少しずつ現在の姿へと近づいていく。
小学生の時に入れ代わった宇宙人が徐々に本来の姿を表していったのだろう。その変化があまりにも緩やかだったため気づかなかったのだ。
本物の妹はもう生きてはいまい。あの宇宙人は仇だ、殺さなければならない。
アルバムを閉じると、妹――いや、宇宙人か――が部屋に入ってきた。
「おねーちゃん」
見慣れた姿の宇宙人は怪しげな箱を持ってやってきた。
「何」
「今日、誕生日だったよね。おめでとー」
箱の中はたっぷりクリームがデコレートされた手作りケーキだった。
「お母さんが死んでから、ずっと私の世話をしてくれてありがと。これからもどうぞよろしく」
私は数秒固まった。下唇を噛んで感情を堪える。
「……あんた、勝手に整形してるでしょ?」
「あは、バレた? だって東京で流行ってるらしいんだもん、エイリアンファッション。安いしお手軽だからね。ナノマシンのシールを買って貼るだけ。すぐに戻せるし」
片目部分を少し剥がすと、シールの下に年相応の瞳が現れた。
「友達の間で流行ってるんだよ?」
「あんたのは、やり過ぎ」
ケーキは焼きすぎてパサパサだったけど、食べてやるのも悪くない。
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