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27.キッチョムとリディア-2-

「……あれは地獄。地獄の入口だよ、君は見たのか?地獄の入口を……」

「ええ……」

「墓守は地獄の炎をとおして、地獄の入口に立つことができるんだ」

「そこでいったいなにをしていたの?」

「……ただ、ただ見ていただけさ。地獄の入口は僕たち墓守にとって聖地なんだ。わかるだろ。僕は君たちとは違う。町の人間のいうとおりなんだ。僕は化け物なんだよ」

「そう……」リディアはいぶかしげにキッチョムを眺めていたが、そっけなくそういうと本棚の本へと目を向け、歩み寄った。興味深げに背表紙を眺めている「オーハン……」

 キッチョムは驚いたように顔をあげると、背表紙を見つめ一冊の本に触れるリディアを見た。

「オーハン・キッチョム・エギオン……。あなたの名前でしょ?」

 リディアは一冊の本を書棚から取り出し、笑みをキッチョムに向けた。そして椅子を引き寄せると腰を下ろした。

「な、なにをしてるんだ、帰ってくれないか」キッチョムは慌てふためくように声を荒げた。

「あら?違ったかしら?」

「そうだ、僕の名前だ!そんなことはどうでもいいことだろ?さっさと帰ってくれよ」

「さっきいったでしょ。話はまだ終わってないのよ」

「いったいなんなんだ!?君はいったいなにしにここへ来たんだ?何が知りたいんだ!?」

「わたしのこと覚えてない?」

「覚えてるさ、馬車に乗ってた。その……、怪物が馬車を襲っていて……」

「そうね、あなたは私たちを助けてくれたのよ」そういうとリディアはまた笑って見せた「でもそのことじゃないわ、もっと昔……、ずっと前のことよ」

「……僕は君にあったことなんて……」

「覚えてないのね……、わたし……」リディアの眉根が曇り言葉に力が失われた。書物を強く握り絞め、リディアは唇をかみしめた。落とした瞳を意を決するかのようにキッチョムに向ける「恨まれて当然だと思っていたわ、わたしはあなたを見捨てたんですもの……」

「僕を……?」

「ええ……、本当に覚えていないの?」

「僕に君を恨む理由なんて……」

「いいわ、じゃあ話してあげる。約束するわ、この話を聞いてくれればわたし、大人しく帰るわ」

「いいさ、好きにすれば……」

 キッチョムは立ち上がりベットに腰を下ろした。


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