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27.焔翼の王と蒼天の聖女(みこ)-2-

 その腕を強く握る者がいた。

 握ったキッチョムの腕を引きちぎらんばかりに引き上げる。キッチョムの踏み出した足が後退する。その力に逆らうことができず体を後方へ向けた。


 キッチョムのうつろな瞳に深く濃い海碧の瞳が飛び込んできた。まるで冷たく澄んだ湖に身を落としたかのようだった。

その瞳は怒りに満ち、悲しみに震えていた。

 キッチョムは襟首を握られ引き上げられた。足がいまにも地上から離れ、浮かび上がる寸前だった。

 微かに光を放ち白く透き通る肌、きつく結ばれた紅く血色のいい厚い唇、瞳にのる長いまつ毛が微かに震えている。地獄にはあまりに不似合いな女性がそこにいた。

 金色に輝く長髪、白く輝く戦闘用の冠を頭にのせている。胸には白銀の鱗を持つ胴あてをつけ、たなびく白い羽衣をまとっている。

その女性はキッチョムを睨み付けていた。


――――あなたは、いったいこんなところで何をしているの!!――――


 その女性が声を荒げると同時にあたりに白く涼しげな風が吹き荒れた。驚くほど巨大な白銀に輝く翼がキッチョムの眼前に姿を現す。


―――あなたはいったい、なにを考えているの!!―――


 旗が風に揺れる音が耳に響いた。女性は天に届くほどの長い白銀の槍をその手に握っていた。蒼碧の巨大な旗がその槍に結わえられ、激しく風にたなびいている。まるで蒼天に雲が流れているかのように白い噴煙が旗の折り目から噴き出している。


 キッチョムの瞳が激しく震えた。目元に力がこもり瞳孔が凝縮する。漆黒の瞳が輝きを取り戻した。

「ぼ、僕はいったい……」


 その女性は天に瞳を向け、焔翼の王を睨み付けた。

 キッチョムの襟首をつかんでいた手から力を抜き、身をかがめた。背中の両翼が天に向かって広げられ白く輝いた。両翼を羽ばたかせると同時にキッチョムを掴み後ろに飛びあがる。白銀の疾風が二人を包み、焔翼の王の眼前から二人を掻き消した。



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