24.水底の怪物騎士-2-
ジャックは暗い水底を覗き込んでいた。
嵐がやみ、微かな雨糸が川面に波紋をあげている。
月が顔をだし水面のうろこ状の光がかすかにジャックの顔に反射していた。
『さあ、かわいい傀儡子たちよ。忙しくなるぞ……。そして面白くなる……。いっそうのことこの世を地獄に変えてやろうじゃないか!!』
ジャックの口元に炎があがった。
『おい……、カスパー。やつを逃がすんだ……。屈辱を味あわせ、ハカモリに泣きつかせるんだ……おい……』
喉が炎で音を立て始めた。すさまじい力が喉元に湧き上がり、腹に炎が渦巻いた。
『やめろ……。おれの楽しみを台無しにするんじゃな……グアアアアアアアアア!!』
すさまじい音を立てて、紺碧の炎が水面を破壊する。
スタンの体はゆっくりと漆黒の鎧を身に着ける怪物の前へと落ちてくる。怪物は兜を放り投げる。兜は水底に沈み土を巻き上げた。
腰を落とし巨大な斧を振り上げる。スタンは体はすでにその斧の間合いに入っていた。
――――これこそ、情けよ……。
慈悲深い主に感謝するがいい―――――
怪物の斧がすさまじい勢いで振り落とされると同時に紺碧の炎が渦を巻いて水底に落ちてくる。怪物の斧はスタンの体を逸れ、水中に激しい流れを起こした。
二つの力がぶつかり、水底に濁流が生まれた。スタンの体は木の葉のように頼りなげに飲み込まれていく、濁流の力か、ハカモリのマントがその体を包みこんだ。
流れ行くスタンに、怪物は巨大な斧をつきつけた。
――――わたしは主の命なしに賽を揮わぬ……。
ハカモリに伝えろ……。古の契約を破るなと……。
城に、主に、仇をなすなら報復だ……。
忘れるな報復あるのみだぞ!!――――――――