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24.水底の怪物騎士


水底の怪物騎士


 深く深くスタンの体は運河の水底に吸い寄せられていく、今にも消え入りそうな意識の中でスタンは自分の体から小さな気泡が噴き出ているのを、見つめていた。

 皮膚が剥がれ落ち、まるで固まっていた血が解けたかのようなどす黒い噴煙を上げている。流れに乗っていくその黒い異物を眺めているときだ。

 意識をよみがえらせるような痛みが全身を襲った。

 スタンは声をあげずにいられなかった、しかし開いた口から喉元を水が逆流し、喉の奥まで焼けるような痛みが襲った。うめき声が水を激しく揺らした。

 まるで酸の川に投げ込まれたように自らの体が溶けていく。


――――――地、地獄に落ちたのか……。

       俺は地獄に……俺はソルマントの死人………

       その俺が地獄に……?

       キッチョムどこにいるんだ……

       いるんだろ、そこに……。どこにいるんだ……?

       キッチョム……キッチョム……――――――――



 土煙をあげながら大きな黒い影が、深い足跡を水底に作りながら歩を進めていた。その足跡のすぐそばに細く長い、まるでナメクジが歩いたような線ができている。影は巨大な両刃の斧を足元に引きずっている。斧を引きずる音が深く黒い水底に響き渡っていた。

 スタンの体が頼りなげに揺れながら、水底の怪物に引き寄せられるように落ちてくる。

 その大きな影は鉄の塊だ。



 雨は上がり、どうやら月が水面を青く輝かせ始めた。

 光のカーテンが水底の闇に微かに光を投げかけると暗い闇の中に漆黒の鎧が浮かび上がる。巨大な斧を引きずり、片方の腕に兜を持っている。

 スタンを見上げるように顎を上げる。その顔には皮膚がなかった。目玉もない。ただのむくろが鎧を着こんでいた。頸椎けいついにのせられたドクロがスタンを見上げた。ドクロの下あごには肉がないにもかかわらず白く藻のような髭が揺れている。


――――ソルマントの死人よ……

   わたしにはわかるぞ……、ハカモリの格好をしようとお前の腐敗した匂いがわたしの鼻先をかすめていく……。

    ソルマントの死人よ……

   われらが城、グレスフォードにあだなすものよ……。

   われらが主、グレスフォードにあだなすものよ―――――――


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