23.スタンリーベルフォード、地獄へ
赤く炎が渦巻いている空から落雷が落ち、黒く焼けただれた地面を吹き飛ばす。そこから真紅の血が吹き出し、辺りを赤く染めたかと思うと、トグロを巻いて炎が天に立ち昇り、轟音があたりに響き渡る。
スタンの耳に自分の名が聞こえた。
――――スタンリー・ベルフォード……タンリー……ベルフォード……
スタンリー・ベルフォード……ベルフォード……タンリー・ベル……
スタンリー・ベルフォード……――――
自らの名は遠く地獄の果てまで、目に見えるかのように広がっていく。スタンは手を伸ばしそれを引き戻し、押し隠したい衝動にかられた。しかし遅かった。
彼の足首を何者かが掴んだ。恐怖に目を見開き足元を見た。地面に目玉があった。焼けただれ、皮膚がはぎ取られた腕が地面から突出し彼の足首を掴んでいる。その亡者の顔は頬が引きちぎられ奥歯から血が噴き出していた。
その無残な亡者は血を吐き出しながら叫んだ。
――――ようこそ、地獄へ……スタンリィィィィィ・ベルフォォォォォド!!――――
彼は叫び声をあげる寸前だった。
肩が硬くいかり、喉が締め付けられた。
『ようこそ、地獄へ……スタンリー・ベルフォード……』
ジャックの低く、唸るようなその声を聞き、スタンは目を見開いた。顔をあげると冷たい雨が頬に当たる。屋根に立ち、冷たい悪寒を感じながら、スタンはジャックに目を向けた。不敵な笑みを浮かべジャックはスタンを見つめていた。