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16 .キッチョムのいない夜-5-

 タムズは布団を蹴り上げた。マルゴーの悲鳴を聞いたのだ。彼はいそいでベットから足を下ろすと立ち上がり、ドアを開き駆け出した。

 マルゴーの部屋の扉を開くと、マルゴーはタムズに背を向け窓の外をなにやらぼんやりと眺めていた。

「マルゴー!気が付いたのか!?」

「ドウザン……、ダンテ、ウヅグジイゼガイナドガジラ……。ドテモ、アヅイ……。アヅイ……」

「傷が熱を持っているんだ、さあ、ベッドに横になりなさい…」タムズはベッドに残されている血のしみ込んだ包帯を手に取った「すぐに新しい包帯をもってきてあげるから……」

「ゴレノゴトカジラ……?」マルゴーは窓の外に体を向けながら背後のタムズに新しい包帯をみせた。マルゴーの視野の中ではすべてのものが炎をまとっていた。自分の手のひらが炎に包まれ、そしてその包帯も炎を上げている。

「おまえ、目が見えているのか……?」

「フフフ……」

「……ああ、そうだ!さあ、新しく巻きなおしてあげよう……」タムズはマルゴーの眼が見えていることを知り、笑みを見せた「さあ、こちらへ来なさい」そう言いながらマルゴーの背中に手招きをする。

「ジブンデ、デギルバ……」

「なにを言ってるんだ……、遠慮することはない、さあ!!」

「デデイギナザイ……!!」

「……え?」

「ギゴエナガッタノ、デデイゲトイッダノ……、ゴノウヅグジイゼガイヲ、ミデイダイノ……、ギットドウザンハ、メザワリダワ……」

「な、どうした……?マルゴー……?」

 マルゴーは片足を激しく床に叩きつけ、包帯を強く握りしめた。

「デデイギナザイ!!ゴノエヤガラ!ワダジノゼガイガラ!!デデイガナイノナラ、ゴロジデヤルワ!!」

 タムズは後ずさった、マルゴーの怒りで震える肩を見つめながら、その肩を抱きしめてやりたいという衝動を持ちながら、恐怖が彼の足を彼女から遠ざけていた。

 腕に人の柔らかい感触を感じ振り向くとそこにアルトが立っていた。頬に涙を流しながら呆けたようにマルゴーを見つめている。

「あ、アルト……、姉さんは…、め、目が見えているんだ……」そういうとタムズはほほ笑んで見せた。さあ、お前ももう寝なさい、姉さんは大丈夫だから……」そういうとタムズはアルトの肩に手を置き優しく廊下へおしやった。「マルゴー、お、お前ももう寝なさい……、すこし休めば気も落ち着く……さあ、二人ともベットへもどろう……」

 タムズはアルトの肩を持ちながら後ろ手にドアを閉め、廊下を歩いた。アルトを部屋に入れると優しく笑みを見せた。

「大丈夫……、姉さんは少し……混乱しているんだ、私たちがしっかりとマルゴーを支えていこう……」

 そういうとアルトはタムズの胸に顔をうずめ、何度もうなずいた。

 タムズは閉じられたマルゴーの部屋に目を向けると歯を食いしばり涙の落ちそうになるのを必死に引き留め、アルトの頭にやさしく手をのせるのだった。


 マルゴーの世界は炎に包まれ、窓の外の世界は大火と化し、通りの向かいの家々も燃え上がっていた。音をたてて燃え上がるその家の屋根に青い炎を上げてスプリング・ヒールド・ジャックがじっとマルゴーを見ていた。

「わたしがこの世界を灰に変えてやるわ……。あなたもしっかりと見えてる、フフフ。すべてが灰に変わるのね……」そういうとマルゴーは月を見上げた。月はまるで火の玉のようになり、炎を上げながら宙に浮いていた「素敵だわ、やがてあの月が灰となってグレスデンの町に降り注ぐの……!!世界の滅びるときだわ!!フフフ……!!」


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