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10.スプリング・ヒールド・ジャック

10.スプリング・ヒールド・ジャック


 朝日が昇ろうとするころ、光の届くことがない暗い地下の通路。そこに赤く燃える目玉が二つぼんやりと浮いていた。石造りの壁はアーチ状になっている。どうやらそれは水路らしく四角く切り取った溝があり水が流れていた。その通路はいくつもわかれて蜘蛛の巣のようにグレスデンの町の地下に張り巡らされていた。しかしこの水路の存在を知る者は今となってはほんの一握り、完全に忘れ去られた過去の遺産であった。

その蜘蛛の巣の中心は少し広く彼にとって格好の隠れ場所となっていた。彼の目玉の炎がかすかに瞬き光を強くするとあたりがうっすら明るくなる。目の前に山積みになった鉄くずをジャラジャラと崩しながら彼はそれを手にとっては眺めていた。

「アイアン…、アイアン…」そう呟きながらただ鉄を眺めている。口から蛇の舌のような炎が鉄をなめあげている。鉄は温度を上げ赤く光る。

 彼は口に鉄をほおばると口の端から煙が立ち上った。彼の体の中で炎が立ち上る音が響き、その音が地下の水路に響き渡った。

彼は口から鉄を吐き出した、それはゴトリと重たい音を立てて石の上を転がった。球形の形に変えた鉄くずを指の間に挟み持ち上げ目の前に掲げそれを眺めた。

赤く熱を帯びた鉄球…。

その球を眺め、スプリング・ヒールド・ジャックは不敵な笑みをみせるのだった。




 『スプリング・ヒールド・ジャック』…彼が生まれたのは海を越えた国、グレートブリテンだった。彼がどのようにあの海をこえたのか。おそらくは誰にもわからないことであろう。彼に聞いてみたところで彼自身もおそらく覚えていないだろう…。


 ただ、ここにひとつの恐ろしくも悲しい物語がある…。



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