29勇敢なる者たち-3-
辺りにはかび臭い匂いが微かに漂っている。リディアーヌ・グレフォードはランプの明かりを左右に向けながら山脈のように連なる白いシーツをあてもなく眺めていた。そこはグレスフォード家の倉庫になっており、多くは武器や鎧の類が置かれていた。幾分質が良く見栄えのするものは、売り払うか、装飾として屋敷に飾られていた。とりあえず、手近なシーツを一枚取り払うと、そこに甲冑が姿を現す。肩のあたりが大きくへこんでおり、おそらくは売り物にもならないだろう。
リディアは深くため息をついた。馬車に隠されていた赤さびたサーベルが思い出された。これらガラクタともいえる。武器、鎧の数々はまるで現在のグレスフォードの象徴とさえ思えた。
ランプの明かりを倉庫の奥に向けるとシーツの奥へとリディアは歩み進んでいった。手ごろな木箱を見つけると、ランプをそばに置き思い蓋を開いた。中には革製の小手や何かが乱暴に放り込まれていたが、彼女の目はその隙間に鉄製の網目を見つけた。手を突っ込みそれを取り上げる。鎧の下に着こむ鎖帷子/(くさりかたびら)だ。
リディアはその重さを確かめるように両手で広げ、サイズを確かめる。
「うん、これくらいなら……少し大きいわね」
そういいながら、リディアは頭から鎖帷子を被り、肩と脇腹のベルトを締めた。
「うん、なにもないよりはましね」
そういうとランプを取り上げ、壁に欠けられてる武器に光を当てる。槍に斧、どれも重くリディアには不釣り合いに思える。剣でさえも、リディアが持ち上げて振り回すには重く大きかった。彼女は倉庫の一端に武器の置かれている場所を見つけそこに歩み寄っていく。