諸刃の剣
社畜君
「メガネ先輩、相談に乗って貰えますか?」
メガネ先輩
「おう、大丈夫だぞ」
社畜君
「今稟議書いてるのですがなかなか通らなくて…」
メガネ先輩
「どれどれ見せてみろ」
「ふむ…申請段階で結構値切ったな」
「しかも採用したA案に対して比較検討のB案も出来がいい」
社畜君
「最終的に良いものを通すためにかなり頑張りました!」
メガネ先輩
「多分、俺や上様が最終承認だったら通すと思う、組織内の説明資料なら立派だ」
「どちらも完成度が高いものながら、それでもA案を選んだ理由が専門的にしっかり説明されている」
社畜君
「自分でも会心の出来だと思いましたが」
「上様が書き直せと…」
メガネ先輩
「まあこれは仕方ないかな」
「まず、稟議って誰に見てもらうものか考えてみよう」
社畜君
「上様、じゃなくて所属の本部長、取締役や社長ですね」
メガネ先輩
「そうそう、例外はあれど上に行けばいくほど我々とは畑が違う場合が多い」
「この金額が安いのか分からない、技術的な見解を話されても分からない、なんかどちらも良さそうに見える」
社畜君
「たしかに自分が別の業種ならきっと分からないですね…」
メガネ先輩
「経営層の方々の興味は要するに、効果、金額、リスクだ」
「直接的にせよ間接的にせよ、いつ頃いくらの利益を生むか、もしくはいくらの損失を防ぐか」
「いくらかかるのか、安い案は無いか」
「実施することで発生するリスクはあるか」
社畜君
「なるほど」
メガネ先輩
「まず値引き前の金額か、相場感のわかる資料を入れよう」
「専門的な見地は中学生に見せるくらい噛み砕いて簡潔に」
「あともう1つ案を入れよう」
社畜君
「もう1つですか?」
メガネ先輩
「人間、同じくらい良い選択肢が2つあると迷うんだ」
「採用させたい案を引き立たせるような、別の案も入れると進みやすい」
「言い方は悪いが、捨て案だな」
社畜君
「ありがとうございます」
「書き直します!」
メガネ先輩
「この辺は、リベロを見習うのもありだぞ」
「必ず後で値引き交渉をしろと言われるから」
「それを見越して、最初の段階では値引きをしない」
「言われたタイミングで値引きするんだ」
「あと選びたくない案はそもそも積極的な値引き交渉をしない」
社畜君
「どうしてもズルいと感じてしまうんですよね…」
メガネ先輩
「程々なら円滑に進めるためのテクニックだ」
「ただやりすぎるとめんどくさいことになる『諸刃の剣』だな」
…
上様
「リベロ、お前の提示金額だがB案が高すぎる」
「値引き交渉本当にしたのか!?」
「懇意にしてるX社が安くできるらしい、そちらも候補に入れろ!」
「あと本件の打ち合わせは次回から俺も入る」
リベロ君
「げっ…まじですか……」
メガネ先輩
「ほらあんな感じ」
社畜君
「まさに『諸刃の剣』ですね」




