映画作家を目指しているユミ。彼女の目論見は成就するのか。
ユミは、投稿されている動画を、1本30分程度の長い動画に編集して、一つの動画集を作ろうとしている。それは、ユミが作ろうとしている映画のコンセプトの一つ、「見る人にとって、ストレスのない映画」を具現化するはずのものだったのだが。
「応募してきたチームの中から、7チームを選んで、それぞれのチームの成長過程を、ドキュメンタリーにしようと思うんだよね」と、ユミ。
「なんで7チームなの?」と、康祐。
「見てれば、分かるから」
「ふ~ん。……」
「これ、見て」とユミ。
ユミの部屋のテーブルのPCが、VR空間で踊っている5人組の少女を映し出す。ユミがPCを操作して、一人一人の表情をアップする。どの子もすごく可愛い。まぁ、VR空間なんだから、アバターを作る人しだいで、どんな可愛い顔も作れるのだろうと、康祐は思った。
「ダンスがいいでしょう?」と、ユミ。
「う、うん。……」
ユミは、同じダンスを踊る実写のような動画に、切り替えた。
「こっちの方が、こーちゃん好みなんじゃない?」
「……」
よく見ると、実写のようで実写ではない。少女たちの表情に違和感がある。
「気づいた?」とユミ。
「彼女たち、首から下は実物なんだけど、顔はAIなの」
「ふ~ん。……」
「最初はね、右から二番目の子が踊っている、ソロのダンス動画を見たのが始まり。彼女はイプシロン4(フォー)Z」
「うん」
「このダンスを完コピする子が、あと4人いたらと思った」
「ふ~ん」
「曲に合わせて、一糸乱れぬダンスをしたり、それぞれ別の動きをするけど、調和の取れたダンスをしたり、4人が後ろに下がって、一人が激しくソロで踊る。4人それぞれに、独自のソロがあるの」
「うん」
「最後の決めのフレーズに入る前に、明らかに調和を乱すダンスをする子が一人。1小節それを見せてから、最後は再び一糸乱れぬダンスをして、キメる」
「……」
「それをDMで提案したの」
「ふ~ん」
「まず、VRで、今言ったようなダンスを作ってもらった」
「うん」
「次に、それを知り合いのIT技術者に見せて、それぞれに似せたAIの美少女を作ってもらったの」
「うん」
「彼女たちも気に入ってくれたわ。マキュリー5というユニット名を付けて、実写版も投稿し始めたの」
「へぇ~」
「どっちも再生回数を伸ばしているわ」
「ふ~ん」
「このダンスに合う楽曲の募集を動画の中でしたら、音楽制作ソフトで作ったという曲を提案してきた人が、何人かいたの」
「うん」
「その中の一曲が、特に最高だった」
「ふ~ん」
「それが今流れているこの曲」
「……」
「何?」
「よく、そうそう都合よく求める人を、探し出せるなって、……」
「自慢じゃないけど、イプシロン4Zを探し出すまでに、何十時間、いえ百時間以上は動画を見たわ。AI美女を作っている人を知ってたのは、確かに私の幸運ね」
「普段はグータラしてるけど、ユミは目標を設定すると、ガムシャラになる人だったね」。康祐は、少し微笑んだ。
ユミは、窓際のカラーボックスの上の、撮影用カメラのスイッチを切った。
再びカメラを撮影モードにして、康祐に向き直った。
「ここまでの部分を、冒頭をAA”、撮影を切った所をAB”として、一コマ0.2秒で、20コマにまとめてくれる?」
「へ?」。なんで俺が、という表情で、ユミを見上げた。
「手伝ってくれるでしょ?」
「う~ん。……」
「こーちゃん、薫子さんにコクって、速攻フラれたでしょ?」
「な、なななな、なんで、……」。激しく狼狽しながら、康祐は立ち上がって、ユミを指さした。
「大丈夫よ。薫子さんには、誰にも言わないように、頼んでおいてあげたから」
「……」
「薫子さんは、私とこーちゃんが付き合ってると思っていて、私にだけ教えてくれたの」
「私たちのことをよく知っていれば、そんな誤解はなかったのにね」
「……」
「私は怠け者だからね、締め切りがないと、何もできない」
「……」
「今日の、このマーキュリー5と、あと6チーム、一日ひとチームずつやっつけていって、一週間。全体の調整と整理に一日、九日目には、完成品として投稿するの」
「ふ~ん」
「呑気な返事をしてられるのも、今のうちよ。こーちゃん」。ユミが唇を曲げて、ニヤっとした。康祐は、怖気を感じた。過去、何度か、こういう表情のユミを見た。決まって康祐は、災難に襲われた。
「私、飽きっぽいからね。せいぜい根気が続くのは、十日間なんだわ」
「……」
「こーちゃん家は、うちの隣の陶器のセレクトショップ、うちはカレーショップが元の、定食屋。こーちゃんは、今年大学に入ったばかり。もう学業に飽きて、気儘な店番のバイト生活、ていうか、家業の手伝い。まあ、私も似たようなものだけど」
「う~ん。……」
「何?」
「俺は、顔を出すのはイヤだなぁ。……」
「その点は大丈夫」
「ん?」
「こーちゃんの顔も、AIで変えておくから」
「ユミを手伝ってるっていうだけで、バレバレだよ」
「じゃぁ、私の妹っていうことにしちゃう」
「ユミも一人っ子じゃん」
「だから、いいんじゃない」
「ふ~ん」
「それに、そんな所まで詮索する人なんていないよ」
「いや、……」と、康祐は思う。ユミの大雑把な所が出た。それが災難の元なんだ。彼は独人ごちた。
「はい。さっき切った所からが、AC’ね。それでここまでがAD’。一コマ0.1秒で、30コマ。お願いね」
「……」
「返事!」
「はい」
「それと、一番最初には、マーキュリー5の、VR動画と、実写動画。それを見てもらってから、次がウチらのくだり。ウチらのことなんか、何の興味もない人もいるからね」
「うん」
「ダンスだけを見たい人に、ストレスを与えないように」
「うん」
「興味がある人だけ、スロー再生して見てくださいっていう方針で」
「はい」
二日目。
「今日は、この動画ね」
ユミが再生を始めた動画には、ユミ自身が映っていた。
「これって、ユミじゃん」
ユミが動画の再生を止めた。
「一通り見てからにして欲しいんだけど、まぁ、いいわ。何?」
「……」
「何か問題ある?」
「ユミは、募集した動画に、グランプリとかナントカ賞とか授与するんだろ?」
「そうよ」
「主催者みたいなもんじゃん」
「だから?」
「主催者自身も応募者の一人なんて、どうなのかなぁ」
「私が評価するわけじゃないから」
「……」
「グランプリは、期間中の再生回数で決まるの」
「うん」
「他のナントカ賞も、決め手は再生回数なの。それにグランプリ取ったからといって、それが何かになるなんて保証は、何もないのよ」
「……」
「私が企画したこの一連の動画集が、あまり注目されなかったっていう結末だってあり得るんだし。てか、その可能性の方が大きいんだし」
「うん。……」
「『うん』って何よ」
「いや。……」
動画は、ユミの後に、様々な世代の男女が、一人ずつ登場して、ユミと同じようなダンス(?)を踊っていくものだった。
再生を見ながら、ユミが言った。
「この動きはね、ドジャースの大谷選手が、ヒットを打った後に、塁上でやるパフォーマンスなの。野球に何の興味もないこーちゃんは知らないでしょうけど」
「……」
「同じドジャースの、キケ・フェルナンデス選手の発案でチーム内に広まったから、キケ・ポーズって言われているわ」
「ふ~ん。……」
「流れている曲は、ドジャー・スタジアムでの試合で、大谷選手がバッターボックスに入る前とか、ピッチャーとしてグラウンドに登場する時に、球場にながれるThe Show Goes Onっていう曲」
「ふ~ん。……」
「私の動画に、告知のテロップを付けて、同じキケ・ポーズを踊ってくれる人を募集したの」
「うん」
「応募者のパフォーマンスを見て、私の企画の趣旨を説明して、『ほとんど見返りは期待できないけど』っていうことの諒解を得た上で、この連続動画に編集したの」
「ふ~ん。……」
「二日目の動画としては、この動画集を頭に持ってきて、今日の私たちのやり取りは、AE’からAF’まで、0.1秒の30コマね」
「……。はい」
「何か?」
「ゆうべ、昨日頼まれた『0.2秒20コマ』っていうのを、作ろうとしたんだけど、……」
「ん?」
「再生を早送りして、その早送り再生を録画して、録画した早送り再生を、さらに早送り再生して、……」
「そんなアナログなこと、やってたの?」
「じゃあ、どうしろって、……」
「私のイメージとしてはね、1コマ分のカットがあるとするでしょ」
「うん」
「そこに、マンガの一コマみたいに、それぞれのセリフが噴き出しで書かれているの。それを続けて一連の流れを作るの」
「う~ん。……」
「難しい?」
「そうだなぁ。……」
「なんとか頑張って。ユミ、一生のお願い」
「何回目だよ」
そこで二人は、すこしの間、笑いあった。
「じゃ、お願い」
「まぁ、頑張ってみるけど。……」
「『けど』?」
「4月も20日過ぎじゃん?」
「だから?」
「GWには俺、ユミの手伝いはできないんだよ」
「ん?」
「栃木の益子っていう町に、何日か泊りがけで行くことにしてるんだ」
「……」
「『春の陶器市』っていう販売イベントがあるんだよ」
「……」
「作家の新作がいっぱい出るの。それを写真撮影して、店のホームページに即、掲載するの」
「……」
「それを見た店のお得意さんから、俺に注文が入るんだ。買い逃すと、もう二度と手に入らないっていうことも、大袈裟じゃないんだ」
「……」
「ホームページを持っている陶器店には、ウチのお得意さんを紹介して、注文が入ったら発送してもらえるように話をつけてくるの」
「へぇ~。こーちゃん、やるね」
「どうも学校っていうか、学業には身が入らなくてね。……」
「ふふふふ。でしょうね」
「俺の何を知ってると言うんだ?」
「大抵のことは知ってるわよ」
口では、ユミには適わない康祐だった。
「益子とか、茨城の笠間だとか、鎌倉。陶器市がある時に行って、泊りがけで商談をまとめて来ようって思ってるんだ」
「おぉ~。商談だって」
「笑っていいよ。俺自身、うまくできるとは思えないんだ」
「コラ、康祐。やる前から、弱音吐いてどうする」
頭をボリボリかく康祐だった。
「私の方は大丈夫。今月中には完了させる予定だし、完了しなかったら、みんなに謝って、諦める」
「そんな訳にも、いかないんじゃない?」
「だって、私。今まで、何かをやり遂げたっていうこと、ないから。……」
「まだ、二十歳にもなっていない小娘が、言うことかよ」
「そうなんだけど。……」
「お互い、心許ないことだよなぁ。……」
三日目。
「今日は、これ」
康祐の知らない曲が流れ、思い思いのダンスを、次々に披露していく主に30代の男女。たまに20代も混じる。
「どう?」
「うん。……」
「自然と、からだが動き出すような感じ、しない?」
「うん。そんな感じ、する」
「有名な人の、超、名曲よ」
「ふ~ん」
「今日のは、あまり加工の必要はないと思う」
「へぇ~」
「みんな、自然と見つづけちゃうと思う」
「ふ~ん。……」
「こーちゃんの作業が大変そうだから、今日はこの辺にしておいてあげる」
「そりゃ、どうも」。口だけで、対応した。
「で、どう?」
「うん。マンガを書くソフトを使って、どうにかならないかと。……」
「うん!」
「ユミから頼まれた部分の映像をUSBに入れて、今夜、タカマサの家に行ってくる」
「タカマサって?」
「ほら、6年生の夏休みに、本庄に引っ越してった奴」
「そうだっけ?」
「たまに連絡を取り合っててさ」
「ふ~ん」
「漫画家志望を、捨てきれてないんだ。と言うよりも、増々本気になってきてる」
「へ~」
「大学にも無事、入ったしさ」
「うん」
「二十歳までに芽が出なかったら諦めるっていう約束で、親公認で、今マンガに打ち込んでる」
「ふ~ん。……」
「ん?」
「そういう人に、迷惑かけちゃ悪いんじゃない?」
「ちょっと、ヒントっていうか、教えてもらうだけだから。……」
「くれぐれも迷惑かけないように」。ユミは、キツく念押しした。
「今日の部分も、動画以外は、0.1秒30コマで」という声を背中で聞いて、康祐は、掃き出し窓からユミの部屋を出た。
四日目。
例によって、午後四時頃のユミの部屋。ドアを開ければ、店の厨房に出る。
店は、ランチの営業が終わって、ユミの父母が厨房内で寛いでいることだろう。洗い物が溜まっている。今日は金曜日。ユミが、洗い物の担当だ。月・水・金がユミ、火・木・土が康祐と決まっている。本当は、ユミが毎日やらなければならない。ユミの頼みで、康祐が半分手伝っている。
「ダンスといったら、この人を外す訳にはいかないわね」
ユミが見せたのは、マイケル・ジャクソンのスリラーだった。よく見ると、マイケル本人ではない。どうやらソックリさんの、物マネ動画のようだ。
「こーちゃんも、聞いたことはあるでしょ?」
「うん。……」
「クドくは言わないわ。今だに、こういう物マネを動画に上げる人が多いことを見ても、マイケルの偉大さが窺い知れるということよね」
「ふ~ん。……」
「凹んでるの?」
「いや。……」
「今日はまだ、こーちゃんを凹ますようなっこと、何も言ってないよね?」
「まぁ。……」
窓際のカメラが、もう既に自分たちを撮影しているのだ。迂闊なことは言えない。康祐は、用心深くなっていた。
「この動画も、延々と見ていられる」
「うん。……」
「ビート イットのもあるの」
ユミはそう言って、次の動画を見せた。
「今日は、動画2本。それと今まででの所にしておくね」
「うん。……」
沈んだ様子の康祐に構わず、ユミは部屋を出て厨房に入った。康祐に構ってもいられないし、康祐のあんな感じは、珍しいことでもない。
洗い物は、営業終了後にやってもいいのだが、それだと差し障りもあるので、時間の都合がつく日は、今頃に一旦片付けておくようにしている。
五日目。
作業に入る前だった。
「こーちゃん。ちょっと相談なんだけどさ」
「ん?」
「私がやらなきゃならない店の洗い物の仕事」
「うん」
「今、半分こーちゃんにやってもらってるけどさぁ」
「気にすることないよ。ユミんちの賄いのお陰で、俺も爺ちゃんも飢えることなく生きて来れたんだから」
「大袈裟ね」
「でもないさ。で?」
「私が、ランチ営業の後の洗い物をするから、こーちゃんには営業終了後の洗い物をしてもらえたらなぁって。……」
「いいよ」。即答だった。
「ありがと」
「全然。でも、火・木だったら、4限目の講義を履修科目に入れなきゃいいんだから、気にすることないんだよ」
「そんなんじゃないんだ。……」
「ん?」
「私ね」
「うん」
「今、美大を受験する為って言って、浪人してるじゃん」
「うん」
「でも、映画を作りたいんだったら、専門学校もアリかなぁって。……」
「ふ~ん」
「そもそも、今すぐ映画関係のプロダクションに就職して、下積みから色々経験するっていうやり方だってあるし。……」
「だね」
「でもね」
「うん」
「私が作りたい映画は、今の映画産業に身を置いてたら、到底ムリな映画なんだよね」
「ふ~ん。……」
「そもそも、今、映画業界にいる人たちにとっては、『ケンカを売ってるのか?』っていうやり方だもん」
「……」
「でね」
「うん」
「最低限の常識的なことだけでも勉強できないかなって思って」
「うん」
「専門学校の夜間部に、行こうかなぁって思って。……」
「ふ~ん」
「どう、思う?」
「どうって。……。ユミが決めることだよ」
「うん。……」
「どういう風に決めたって、後悔するヤツは後悔するんだよ。『こうしたい』っていうのがあるんだったら、やってみればいい」
「……」
「ん?」
「よし。決めた。こーちゃん、たまには、いいこと言うわね」
「たまにで、悪かったね」
お互い、含み笑いし合った。
「今日の動画はね」
「うん」
「昨日と同じく、マイケルのソックリさんの物マネ動画」
「うん」
「ビリー ジーンとBADの2本」
「うん。あと、俺からの報告ね」
「ユミの構想通りに、話の展開を圧縮できそうだよ」
「サンキュー」。ユミの表情が、嬉しそうに崩れた。
「無料の漫画制作ソフトでもできるって、タカマサから教えてもらったからさ」
「うん」
「ユミの言う締め切りまでには、間に合わせてみるよ」
「ホント、ありがと。こーちゃん」
抱きついて来そうなユミの勢いをかわして、康祐はユミの部屋を出た。
六日目。ユミのPCには、ヒップホップを踊っている数人が映る。踊りながら、ラップでの応酬をしている二人がいる。音量を上げるが、言葉が聞き取りづらい。
「何を言ってるのか、分からないなぁ」
「確かにね。コウちゃんが、この手の音楽に疎いってのを、考慮に入れても、聞き取りづらいのは確か」
「ふん。……」
「このチームにはね、ラップの部分だけを別に、予め録音しておいて、動画にそれを乗せるように提案しておいた」
「えっ。……?!」
「何?」
「そんなの、アリ?」
「私が提案しちゃいけない?」
「……」
「私が選考するんじゃないんだから、別にいいでしょ」
「……」
「ダンスにはキレがあるし、このチームはいい所までいくと思う」
「かな。……」
ユミは、康祐に構わず、次の動画を映した。メンバーの自己紹介だった。
メンバー間のエピソードを紹介する動画も続いている。
「このチームは、気合が入ってるね」と、ユミ。
「うん」
「これだけで十分ね」
「……」
「素材が良かったら、余計なものを足さない方がいいからね」
「なるほど。……」
七日目。
「応募者の動画は、可能な限り載せたいの」
「うん」
「ダンスが好きな人は、次々に流れる動画を見ていて、飽きないと思う」
「うん」
「六日目までを『1部』として、今日のを『2部』としたらどうかな?」
「いいんじゃない」
「じゃあ、あと残っているのは、こーちゃんの作業だけね」
「だね」
「どう?」
「明日までには、終わるよ。出来たら、USBに収めて、ユミの机の上に置いておくから」
「ありがとう。こーちゃん」。しおらしく、ユミが頭を下げた。
「よせよ。そんなの。……」
「うん」
「それからは?」
「まず、投稿する前に、各チームのリーダーに、DMでブラッシュ・アップしなくていいか、伺いをたてて」
「うん」
「全チームの諒解が取れたら、投稿と同時に、1か月間の視聴者からの投票を募るの」
「ふ~ん」
「同時に、各チーム、独自に動画を公開してもいるから、期間中の再生回数もカウントしていく」
「うん」
「1か月後に集計して、最大ポイントを獲得したチームが、グランプリ」
「ふ~ん」
「他に、最優秀ダンス大賞とか、まだ名前はそんなに考えてないけど、〇〇大賞とかを付与するの」
「それだけ?」
「あとは、これからの展開次第といったところね」
「ふ~ん。……」
「足りない?」
「イヤ、そうじゃなくて、……」
「……」
「協力してくれた人たちに、もう少し何か、……」
「そうねぇ。……」
「……」
「もしかしたら、なんだけど」
「ん?」
「もし、私が何か、次の企画を打ち出した時には、またその企画に参画してもらえるか、声を掛けることを約束しておくわ」
「……」
「どう?」
「今の俺らの力では、そんなところかなぁ。……」
「うん。……」
予定通り、翌々日の水曜日、ユミは編集した動画を公開した。
「手ごたえは、どう?」。康祐が聞く。
「まだ、公開したばかりよ」
「そうじゃなくて、ユミ自身の達成感とか、自己評価とかさ」
「う~ん。……。随分バタバタだったからねぇ。……」
「そんな感じだね」
「自分で決めた締め切りに、合わせたのが仇になったかなぁ。……」
「うんうん」
「かと言って、締め切りを先に延ばしても、私の力不足が埋まる訳じゃないし、根気も続かないし。……」。自嘲気味のユミだった。
「……」。康祐は、笑い顔を控えて、表情を消している。
「今度挑戦する時は、もっと構想を練って、息切れしないように、脳味噌の体力も鍛えておこうと思う」
「……。ユミ、少し成長したかも」
「そう?」。康祐を振り向いて、ユミが微笑んだ。
「こーちゃんにそう言ってもらえたら、嬉しいな」 (完)




