絶滅危惧種 〜バカと親友〜
「俺ってさぁ」
「……」
分かってる。ユタカはバカなことしか言わないって。だから身構えることなく玉子サンドイッチを食べた。ユタカは僕の目を真剣に見つめながら言った。
「絶滅危惧種なんじゃね?」
「……」
ユタカは目を輝かせていた。そんなことより、玉子サンドイッチのカラシがいい塩梅でおいしい。
ユタカは、続ける。
「だってさ、俺って一人しかいねぇじゃん! 俺が死んだら俺が絶滅する!」
したらきっと静かだろうなぁ。と思いつつ、パックのオレンジジュースを飲む。ちょっと酸っぱい。目が少しピリッと動いた。
僕の表情を見て、ユタカは何かを察したかのように続ける。
「コウキも、絶滅危惧種だ!」
コウキ。僕の名前ね。
僕が黙って聞いていると、ユタカは道行くお婆ちゃんや散歩中の犬、子どもなどを見て苦しむように頭を抱えた。
「世界が、絶滅危惧種だ……」
「……」
ユタカは、少ない脳みそで情報を処理しようとしている。僕はずっとそれを見ている。ユタカはこの難問の答をどう弾き出すのか。バカの答えを聞かせてくれ。
「俺、今ある命を親友のお前に使う。だから俺になんかあったら真っ先に俺のことを憶えててくれよな」
……。
この絶滅危惧種は、本当に絶滅危惧種らしい。
「僕は、君と友だちになったつもりないけど」
「え!? だって、帰り道同じじゃん!」
「それが友だちになる理由になるの?」
「一緒に帰ってんだから親友だろ!」
こんな変でバカな奴。初めてであった。絶滅危惧種かつ天然記念物。
「余ったからサンドイッチあげる。ユタカ」
「お! カツサンドだ! サンキュー!」
ユタカが何の疑いもなくカツサンドを手に取って食べている。僕の手は親指が変な方向に曲がっていて気味悪がる人が多いのに。
「ふふ」
「どした?」
ユタカが僕の方を不思議そうに見た。
「餌付けって楽しいね」
「なんだとぅ!」
絶滅危惧種は、僕の手を払わなかった。僕の唯一の親友。




