#1 死なない転校生
あぁ~!!
めんどくさ…
本当、学校ってなんのためにあんの?
「将来のためですよ、深緑さん。」
俺は深緑 桜汰。
六桜高校の2年。
「え?俺、声に出てた?!」
「あなたの考えていることなど筒抜けなんです。
さっきからあくびしかしてないじゃないですか。」
「まあまあ、寝ないだけいいじゃん?」
「当たり前のことを威張って言わないでください。」
「えー?厳しいな〜…」
「これが普通です。」
俺が喋っている相手は、同級生で隣の席の生楽 歌。
名前と反して歌ってなければ笑ってもない…
ただの無表情マシーンだ…
「…」
「何か?」
「いや?別に〜?」
「何か含みがありますね。」
「いや、気のせいでしょ?含みといえばその大きなお胸があるけど。」
そう、彼女は、とてつもなく大きなお胸を持っているのだ。その母性の塊は、あっという間に男子の理性を粉微塵に破壊する。
「な!?な、何を言ってるのですか!!?」
珍しく彼女の無表情が崩れる。
「あ、ごめん、膨らみであって含みじゃなかった。」
「そんなことを怒っているのではありません!」
「え?じゃあなに?」
「うー…うるさいです!!」
「お前もうるさいぞ!!
二人共、窓から放り出してやろうか!!!」
「はい、すみません…」
「すいません…」
そんな俺達のくだらないやり取りも、鬼教師の一喝で終演を迎える。
「よろしい、さて、ホームルームを始めるぞ〜
と、その前に、今日は転校生を紹介する!」
「えぇ〜?どんな奴だろ〜?」
「女子かな?女子だといいな!」
「男子たちうるさい…」
「では、入っておいで」
「はい」
担任がそう言って入ってきたのは、
黒髪の美少女だった。
しかも…
「おいおい、マジかよ…」
「かわいい子かと思ったけど、まさか…」
「嘘でしょ?!」
「なんで、ここにあの平月 梨音がいるの!!?」
「うるさいぞ!!お前ら!」
『はい…すみません…』
教師の一声で皆が静まり返る。
「よろしい、では、自己紹介、お願い。」
「はい。」
そう言うと、転校生は黒板にチョークでカツカツと音を立てながら文字を綴った。
「私は平月 梨音。
前は水無月学園学園に通っていました。
こちらには親の仕事の都合で転校して来ました。
よろしくお願いします。」
「うおおおお!!」
「マジか!」
「ねえ…水無月学園って…」
「うん…超お嬢様学園…」
そう、彼女は平月 梨音。
なんでこうなってるか?
彼女は巷では人気だから。
「皆さんもご存知でしょうが、私は
芸能の仕事もしています。
あまり無断で私をSNSに上げたり、
冷やかしなどはご遠慮願います。」
平月 梨音は、超有名なモデルだ。
しかも、超絶美人な、だ。
モデルさんは確かに皆美人ではあるが、
彼女はそんなレベルではない。
もはや格が違う。
そんな人がこの高校に来たら、お祭り騒ぎにもなるわな。
「まあ、そういうことだ。
頼むから、変なことはしないように。
それじゃ、席に座ってくれ、平月君。
そうだな…深緑の隣が空いてるから、
そこに座ってくれ。」
えぇ〜!!!?
ちょっと待って?!
いや、決して嫌ではないぞ?
だがしかし!
あの平月 梨音の隣なんか座ったら…
男子からの嫉妬・怨嗟の視線が痛いくらいに刺さる未来しか見えない…
「よろしく、お名前、聞いてもいい?」
「あ、はい、深緑 桜汰です…よろしく…」
「よろしく、平月 梨音よ。お隣同士、仲良くしてくださる?」
「あ、あぁ、こちらこそ…」
男子の視線が痛い!
ってあれ?なんか右隣からも悪寒が…
って、歌さん〜〜?!
な~んで、睨んでるの〜〜〜!??
もーのすごく怖いんだけど〜?!
「えーっと…何かな?歌さん?」
「別に、何でもありません」
「あ、そう…?」
「そんなことより、桜汰さん、でしたわね?」
「あ、あぁ、そうですよ?」
『ジー…』
視線が痛いッ!
「私、ここに来て間もないの。
色々と教えてくださる?」
「あ、あぁ、いいですよ?」
「あ、あと私、まだ教科書が配られていないの。
あなたの教科書、一緒に見せてもらってもいい?」
「あ、はい、別にいいですよ?」
それから、俺はその日1日ずっと、梨音さんに絡まれ続け、男子の視線から射抜かれながら授業をし、それ以外は特に何もないまま、家に帰った。
「ふぅ~…」
…
ぁあああああ!!?
どうすんの!?
ヤバいってこれ!
今日一日でこれって、明日からは大変なことになりそう…
はぁ、胃が痛い…
とりあえずコーヒーでも飲も…
あ、切らしてた…
とりま買いに行こ…
気分転換にもなるし…
〜5分後〜
うむ、いいコーヒーが買えた!
さ〜て、落ち着いたところで、
明日からどうしよ…ってあれ?
梨音さん?
コンビニの帰り道、噂をすればと言うやつか、
ちょうど梨音さんご本人に遭遇した。
ま、会ったし、声かけとくか。
ん?誰かいる?
梨音さんの後ろから、誰か歩いてるのが見えた。
…黒尽くめって…
どう考えても梨音さんのストーカーだよな…
20mくらいだし、走れば追いつけるか。
そう思って走り出そうとしたら、
(!!?)
男は懐から刃物を出した。
は?!!
嘘だろ?!!ストーカーどころか犯罪者だろ!?
あれ!まずい、何か起こる前に止めねえと…
とは言え、俺とストーカーとの距離は20メートル程。
梨音さんとストーカーとの距離は大体5メートルくらい。
それくらいなら早歩きでも余裕で気づかれずに近づける…。
くっ…声かけて俺が追いつくまでの時間稼ぎをしてもらうか!?
いや、危険すぎる…
いや、それしかない!
俺は必死に走りながら、梨音さんに声をかけた。
「梨音さん!!後ろ!!」
「え?」
彼女が後ろを振り向いた瞬間…
彼女は、後ろから刺されてしまった。
間に合わなかった…
いや、まだ間に合うかも。
距離は8メートル。
「この犯罪者!!ふざけんな!!ブタバコにぶち込んでやる!!」
「ッ!ヤッベッ!」
「!?逃げんな!」
結局、犯人は取り逃してしまった…。
「梨音さん、梨音さん!」
「あ、桜汰くん…」
「大丈夫ですか?背中、刺されて…」
「大丈夫…」
「え?とてもそうは見えませんけど…」
「大丈夫だから…とりあえず…桜汰くんのお家…連れてって…?」
「え?!今は病院に行かなくてはいけないのでは?!」
「私は大丈夫…この程度で死なない…
まあ…訳、わかんないと、思う、けど…
とりあえず、桜汰くんの家に着いたら説明するから…」
「え…えぇ…よくわからない…でも、分かりました…」
「ありがと…」
俺は、梨音さんを背負って、本人の要望で
背中にコートをかけ、なるべく人目につかない最短ルートを通り、家に帰った。
「はぁ、はぁ…つ、つきましたよ…」
「ありがと…」
「と、とりあえず、おれの部屋に…」
「うん、ありがとう…」
そういって、俺はガラクタまみれの自分の部屋に梨音さんを連れてきた…。
「と、とりあえず、何をしたら…警察?止血?
あぁぁぁ…どうしたら…」
このままじゃ梨音さんが…
「大丈夫。もう再生してるし。」
「はい?って、あれ?傷が…」
気づいたら、背中の傷が、綺麗さっぱり消えていた。
「こ、これは、どういう…」
「私、科学実験が好きで、いつも変な薬ばかり作ってたんだけど、ある時自分で効果を試したら、
こうなりました!」
「へ?それは一体何の薬で…?」
「殺されても再生して死なない薬」
「え?つまり、再生力がすごいと…?」
「ま、そ!」
「えー、つまり?」
「私は、死んでも死なない!」
「…俺の心配は…」
「あぁ、いや?本当に助かったよ?
桜汰くんいなきゃ、死にはしなくても死んだ扱いになってたし。」
「あ、そうですか…」
「そうだよ?本当に助かったんだから!」
「は、はい…」
いや、どゆこと?!!
死んでも死なない?!
いや、わけわからないんだが?!!
そんなのありか!?
まあ、いいか…
それより!
「えーと…梨音さん…」
「ん?」
「なんかキャラが違くない?」
「あ~、うん!そうだね!」
「何故…」
「いや〜、普段のあれは外面で、
こっちが本来の私!」
「えーと…なら何故俺に今外面を使わないんですか…?」
「だって、いろいろ知られちゃったし!
それに、桜汰くんなら、こんな私でも普通に接してくれるだろうし、いろいろ気にする必要もないし!」
「えぇ…」
いやいや!気にして?!
俺の理性、もとい性欲ボッコボコ!
どうしたら…イイノ?
「あ~、それと」
「ナンデスカ?」
「シャワー貸して」
「ブッッ!!いやいや、何を!?」
「え、だからシャワーを…」
「だから何故!」
「こんなに血がべっとりだし…
とりあえず血を流したくて
それと、服も貸して?」
「いやいや!?ここ、MEN'Sのうち!」
「知ってるよ?」
「どう考えても危ないでしょ!!」
「何が?」
「え、いや、わかるでしょ…」
「あ~、なるほど…」
「分かったようで何よりです…なら」
「別にいいよ〜?」
おぅい!!
「俺が良くないんですよ!?」
「え~?じゃあ、桜汰くんは私にお風呂貸したくないの…?私のこと、嫌い?」
「嫌いな訳ありません!」
「ならいいよね!」
「あ…」
〜10分後〜
だあぁぁぁ!?!何を言ってしまったんだ俺!
くっ…今度から気をつけよう…
「出たよ〜?」
「はーい…って服を着て?!」
風呂から出た彼女は、なんと一糸まとわぬ姿であった…
「え~?別によくない?」
「よくない!」
「まあまあ、気にしないの〜」
「いや?!気にしますよぉ〜?!?!」
…結局梨音さんは俺の話を聞いてくれず、
その後彼女は服を貸り、そのまま帰った。
「あぁぁぁ…」
このまま俺は一体どうなるんだ…
明日からが不安だ…
〜翌日〜
はぁ…
憂鬱だ…
今日も通学路の途中の土手を歩きながらそんな事を考える…
はぁ~、近くに谷があるから、絶景を見ながら登校できるうえ、今は心を落ち着かせてくれる…
などと初老の爺さんのようなことを考えていると、後ろから声が聞こえてきた。
「あ、おはよう!桜汰く〜ん!」
「あ、おはよう…」
梨音さんは、俺の5メートルくらい後ろから走って追いかけてきた。
「よかったら一緒にとうこ…うわっ?!」
彼女は急ぐあまり、足をもつれさせた。
「わあああ!!?」
「梨音さあ〜ん!」
彼女はそのまま、手すりから滑り落ち、
土手から転がりながら、谷に落ちた。
「え、嘘…あぁぁぁ!!」
すぐに谷底を覗いたが、下では、梨音さんが全身グシャグシャで、血まみれになって倒れていた。
死んだ死んでしまった…
梨音さんが…
「え?生きてるよ?」
そこには、谷底で既に再生し終わった梨音さんがいた。
「あ、そうだった…」
「とりあえず、そっちにいきたいんだけど〜!」
「あ、はい、分かりました!」
そう言って、俺は10分近くかけ、梨音さんを引っ張り出した。
「ハァ、ハァ…と、とりあえず出られましたね…」
「でもビチョビチョだ…
桜汰くんの家行っていい?」
「え?!」
「だって、このままじゃ学校いけないもん!」
「は、はい…分かりました…」
「わ~い!やった~!」
俺の目の前を、さっき谷底から落ちて血まみれになったとは思えない梨音さんが走り回っていた。
はあ、やはり俺は、これからも彼女に振り回され続けるのだろう…
__この、死んでも死なない梨音さんに。
はじめまして。
この春、高校生になった、変人小説家!
立花明日香です!
この度はこの作品、『死んでも死なない梨音さん』を
読んでいただき、ありがとうございます!
作者は感謝感激雨あられでございます!
どうぞ、気軽に『梨音さん』と読んでください!
当初、この作品は、『日常の中にひょっとしてひょっとするとあり得るかもしれないファンタジー』というテーマから思いつきました。
ですから、本編には出てはいませんが、梨音さんの能力も、『無限に再生するのではなく、再生力がバカ高くなり、一瞬のうちに治癒が可能になっているだけで、使いすぎるとエネルギーを消費、再生が一時的にできなくなり、心肺機能停止、放っておいても細胞は腐らないし死滅しないが、エネルギーを与えない限り、修復はされない』という、リアルにありそうな設定もございます。
まあ、本編じゃそんなになるまで滅多刺しにすることもありませんので!さすがにそこまで行ったらR-15への特急列車が完成してしまいますので…
さて、次回は、ほのぼのでギャグ満点なストーリーを予定しておりますです。なので、ぜひ、読んでいただけると作者は再び、感謝感激ゲリラ豪雨でございます!
え?災害を起こすな?まあまあ、気にしないでください?
では、近いうちに公開したいと思いますので、ぜひとも、この立花明日香をフォローして、待っていていただけると幸いです!




