詩小説へのはるかな道 第84話 普通のプリンが救う夜
原詩: 気がかりとお願い
夜も寝ずに 勉強して
公務員試験に受かったのね
それは良かったわ
それで 昼はちゃんと寝てたの?
昼も食べずに プレゼンの準備して
契約が取れたのね
本当にお疲れ様
そのお祝いで ホールケーキを丸ごと食べてるのね
友達と縁を切って 部屋にこもり
書いた小説が新人賞に選ばれたのね
すごいことよ
でも 誰からもお祝いメールがないのね
心からのお願いです
どうか
死ぬほど頑張って
死なないでね
ーーーーーーー
詩小説:普通のプリンが救う夜
ワンルームマンションの小さなテーブルには、真新しい「昇進通知」が置かれています。
僕はこの半年間のプロジェクトを完遂しました。
同期で一番乗りの昇進。年収も上がります。
周囲からは「期待のエース」と呼ばれています。
プロジェクトの追い込み中、一食を「エナジードリンクとサプリメント」だけで済ませるのが常習化していました。
胃は悲鳴を上げ、まともな食事を受け付けなくなっています。
深夜まで働き続けたせいで、自律神経は狂い、疲れ果てているのに目は冴えて眠れません。
「……勝ったんだ」
手に入れたのは「成功」という名のチケットでしたが、その代償に、僕は「正常な暮らし方」をどこかに置き忘れてきてしまいました。
午後10時。僕はフラフラと近くのコンビニへ向かいました。
何かを食べなければいけません。
でも、何を食べたいのかがもう分かりません。
棚を眺めていると、背後から「あ、健吾じゃん」と声をかけられました。
高校時代の友人、冴木でした。
どこかで飲んできたのか、少し赤い顔で、カゴには牛乳と食パンが入っています。
「昇進したんだってな、おめでとう! グループラインで見たよ。……でもさ、お前、その顔なんだよ」
冴木は、僕の顔を覗き込んで眉をひそめました。
「なんか、死にそうな顔してるじゃん。お祝いに何か奢ってやるよ。一番高いアイスにするか?」
「いや、いいよ……。食欲もあんまりないし」
「ダメだ。お前、今にも消えちゃいそうなんだよ。仕事で勝って、自分の命に負けてどうすんだよ」
冴木は無理やり、僕のカゴに高くもない「普通のプリン」を入れました。
「いいか、今夜は仕事のことは忘れろ。そのプリンを食べて、アラームを全部消して、死んだように眠るんだ。いいな、『死んだように』だぞ。本当に死ぬまで頑張るなんて、バカのすることだ」
僕はカゴの中の安っぽいプリンを見つめました。
昇進の通知よりも、プリンの重みが妙にリアルに感じられました。
「……わかった。プリン、食べてから寝るよ」
「おう、また明日な。生きてたら連絡しろよ」
冴木の冗談に、僕は少しだけ肩の力を抜いて微笑みました。
帰り道、冷たい空気の中、僕はプリンを握りしめて、自分の帰るべき「生活」へとゆっくり歩き出しました。
=====
わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。
連作短歌:普通のプリンが救う夜
一 昇進通知
成功とは 机の上の 白い紙
暮らしの影を そっと踏みつける
眠れない 勝利の夜の まぶしさに
置き忘れたのは ただの食事だ
二 夜のコンビニ
食べたいを 思い出せない 身体には
蛍光灯の 白さがしみる
棚の前 空腹よりも 空虚抱え
名前を呼ばれ やっと振り向く
三 冴木との再会
「死にそうな 顔してるぞ」と 笑う友
眠気の奥の やさしさが刺す
高くない 普通のプリン 落ち着いて
心の底に ひとつ灯る灯
四 帰路
昇進の 紙より重い プリン持ち
やっと戻れる 生活という家
帰り道 冷たい風に 息を吸う
生きて明日へ 歩くためだけ
詩をショートショートにする試みです。
詩小説と呼ぶことにしました。
その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。




