婚約破棄した王子の末路が怖すぎた件
「フロリア。お前との婚約を破棄して、俺はこのシュヴァリエと婚約する」
俺は高らかにそう宣言した。
理由?
フロリアに飽きたから。
ただそれだけだ。
これでも俺は第一王子だから、政略的にも世間体的にも、婚約者というものを持たなければいけなかった。
この風潮が嫌いだ。貞淑なんてクソ喰らえ。
そもそも、優秀で顔が良く、身分も高い俺が、婚約者とか言って一人の女に縛られるというのがおかしいと思わないか?
俺に尽くしたいって女はいくらでもいる。
全員連れてきて並べておけばいいじゃないか。
俺が王になったら絶対そうすることに決めている。
とは言え思ってることをそのまま言うわけにはいかないが、表向きの理由なんていくらでも整えられる。
別に罪を捏造したって、なにかの難癖をつけたって構わない。王太子の俺に意見できる奴なんてそうはいないんだから。
だけどまあ、フロリアは都合よく、今俺の隣にいる新しく婚約者として添える予定の女、シュヴァリエ男爵令嬢に危害を加えたとかなんとか。
本当かどうかなんてどっちでも良い。
フロリアの“執着癖”なら本気でやりかねないし、口実としては十分だ。
キツく吊り上がった目、長身で筋張った感じのフロリアと違って、シュヴァリエは丸っこくて可愛らしい。
特に、従順で素直で扱いやすいのが良い。
しばらくは新鮮な気持ちで楽しめるだろう。
どうせそのうち飽きるだろうが、シュヴァリエなら、他に女がいても文句を言わないはずだ。
フロリアとは数年前からの付き合いだ。
執着癖の他、独占欲が強く、俺に真実の愛とやらを説いてくる。最初はそれも悪くなかったが、最近は鬱陶しいだけになった。
愛しているなら、自由に遊ばせるべきだろ。
何が真実の愛だ。くだらない。
「私には、身に覚えがありません」
フロリアはきっぱりと否定した。
俺はシュヴァリエを片腕で抱き寄せる。怯えた顔をしているし、体も震えている。フロリアは否定しているが、シュヴァリエも演技しているわけではなさそうだ。本当にフロリアに何かされたんじゃないか。
俺が抱き抱えた腕に力を入れると、シュヴァリエも強く握り返してくる。俺を頼っている感じが心地良い。
「身に、覚えが……ありません」
フロリアは再び同じ言葉を呟く。言い直したところで、この場がどうにかなるわけでもないだろう。
別に、追放したり処刑したりするわけじゃないんだから、さっさと認めて終わらせたら良いじゃないか。
「わ、私は……なにも、知り……ません。何も……わかりません」
また否定するだけだ。
何か変じゃないか?フロリアは反論もできなかったり、状況も読めなかったりするほど無能だったか?
不自然なほど、俯いているし、肩が小刻みに震えている。いつもの毅然とした態度は見る影もない。
「私、は……」
妙に長い間が空いた。
「私は、誰ですか?」
空気が変わったのはその瞬間だった。
思わず隣の女に視線を戻す。
先ほどまでの震えや怯えは跡形もなく、気味の悪いねっとりとした笑みだけが、そこに貼り付いていた。
結局、その場は有耶無耶になった。婚約こそ破棄にはなったのだが、俺のことも自分のことも、ここがどこだかもわからなくなったらしい。
婚約破棄されたショックで一時的に錯乱しているという話になった。まるで俺のせいみたいな感じになってしまったのが、納得いかない。この程度で取り乱す弱い自分が悪いに決まってる。
そもそも、どうせ呆けた演技かなんかだろう。腹いせに騒ぎを起こしてやるとか、そんな程度のものだ。
俺はそう決めつけていたが、不可解なことはもうひとつだけあった。
それはフロリアじゃなくて、新しい婚約者シュヴァリエのことだ。あれ以来人が変わったように、俺に執着してくる。
前は従順で、俺の言うことはなんでも聞き入れ、自分から干渉してくることは全くないと言って良いぐらい、極端な受け身の性格だった。だがそんな彼女からいきなりお茶会を申し込まれて、一体どういう心境の変化かと思ったものだ。
正直お茶会など苦痛でしかない。紅茶と甘ったるいだけの菓子など食べて何が面白いのか。会話だって面倒だ。そんなものなくても甘い雰囲気でベタベタしている方がお互いよっぽど楽しいだろうに。
だけど、その心境の変化に興味が出て俺は招待を受けることに決めた。
シュヴァリエは男爵家だ。フロリアは公爵家だったので、身分の差がかなりある。茶会の格こそ低いのだが、その雰囲気に奇妙なものを感じていた。なんと言うか変な既視感がある。
もちろん食器や家具に見覚えがあるというわけではない。だけど、なんというか配置だったり、手順だったり茶葉の系統みたいなものがどことなく元婚約者を思わせるのだ。
男爵家という立場なので、王太子である俺に合わせて、背伸びをして頑張っているのかと思ったが、なんか違う。
あまりに手慣れ過ぎている。
まるで何回も俺とお茶会を開いた経験があるような雰囲気があった。
もっと違和感を感じたのは、その言動だ。
今まで、楽にしろと俺がいうまで、ぎこちなく固い表情を浮かべていた女が、急にねっとりとした笑みで、私は殿下に真実の愛を見つけたのです、とかいうのだ。
正直寒気がした。そもそも俺が気に入っていただけで、シュヴァリエからあまり好かれているとは思ってもいなかった。それがいきなり元婚約者みたいな事を言い出すのだ。
気持ち悪くて見るのも嫌になってしまった。
そうして距離をとってしまえば、忘れるのも早いもので、しばらくは他の令嬢を侍らせたり、娼館通いをしたりして日常を楽しんでいたのだが、その中でも気に入った女ができた。
エリーゼ侯爵令嬢という女だ。
少し歳は上だが、その分他の若いだけの令嬢では持ち合わせていない包容力みたいなものがあり、すっかり俺はこの女にハマってしまった。
落ち着いていてスタイルも良く、なんというか大人の余裕みたいなものがある。
エリーゼの方も満更ではなさそうで、少し手のかかる弟のような目で俺を見ていた。
一緒にいることが多くなり、周囲からも噂をされるようになったのだが、ある時彼女は、階段から落とされて怪我をした。突き落としたのはまさかのシュヴァリエだというじゃないか。
俺は腹が立った。結婚まではするつもりがなかったとはいえ、俺の婚約者にしてやったのに、なんだそれは。
俺の女に手を出すなんて恥知らずも良いところだ。そもそも従順で扱いやすいところが気に入っていたのに、俺の意思に反して勝手な事するようではもうこいつは要らない。
「俺はお前との婚約を破棄する。新しい婚約者にはエリーゼを選ぶ」
二回目となる婚約破棄を宣言した。王家としての立場はまた悪くなるが、王家の地盤は元々盤石で、その程度で揺らぐような体制ではない。むしろ慰謝料が入る分シュヴァリエは俺に感謝するべきだ。
だがそう思った瞬間、
「あああぁぁぁぁああああ!!!」
という叫び声をあげて、シュヴァリエは倒れてしまった。
俺は肩をビクッと震わせたが、何が起きたのかわからずその場で固まってしまった。
「一体どうしたのでしょう……」
俺の隣でエリーゼが呟く。度胸があるのか、こんな時でも落ち着いている彼女を見て、少し安心感が湧く。とりあえず、側近たちが女の容体を確かめるために宮廷医のところに運び込むことになった。
またこの件に関しては有耶無耶になってしまうだろう。だけど、もういい、婚約の破棄はしっかりと宣言したんだ。俺はこの女と婚約する。
「いくぞ」
足早に彼女を連れてその場を去ろうとする。
「あ、殿下待ってください。嬉しかったですわ、私と婚約すると言っていただけて」
喜んでくれているのは素直に俺も嬉しかった。しばらくの間は可愛がってやろうと思っていた。
「私も、殿下を真実に愛していますから」
心臓が止まりそうになりながら振り向くと、そこにはもう大人の余裕も、落ち着きもなく、ただ独占と執着に塗れたねっとりとした笑顔を向ける女がそこに立っていた。
新しい婚約者を置き去りにしてその場から逃げ去った。
クソ、クソ、クソ、クソ。
何が真実の愛だ。人間の気持ちに不変なものなんてあるものか。誰だって枯れた草木より瑞々しい花の方がいいに決まってる。
女だってそうじゃないか。所詮求めているのは、この容姿と権力と身分だけだ。俺が平民の醜男の借金男だったら、これだけの女が寄ってくるものか。視界に入るだけで眉を顰めるに決まっている。そんな記号のようなものに左右されるだけの愛の何が真実だ。ふざけんのも大概にしろ。
息も絶え絶えに、先ほど倒れた元婚約者のシュヴァリエのところに向かう。
「おい!起きろ!」
「殿下!?ちょっと待ってください!」
諌めて来るのは側近のリカルドだ。俺の周囲の人間は全て女性で固めたかったのだが、どうしても同性が必要な時があり、渋々一人だけ男を連れていた。それを俺のお気に入りとでも勘違いしたのか不敬なぐらい軽い調子で接して来る。
「何かの病気かもしれませんし、殿下は下がっててください」
「うるさい」
そんなの気にしている暇はない。俺はこの女に聞かなければいけないことがあるんだ。
しばらくして、ゆっくりと目を開けたその女は、俺の方に首を傾けた。
「殿……下……」
その声を聞いて少し安堵した。俺のことは覚えているようだ。
「なんで私はここに……?」
「俺が婚約破棄を宣言した時、お前は急に倒れたんだ」
「婚約破棄……?フロリア様との婚約を破棄なさったのですか!?」
何を言っているんだこいつは。フロリアと別れたのなんてもう半年も前のことじゃないか。
「何を言っているんだ。婚約破棄をしたのはお前とだ」
「私と殿下が婚約……?どういうことでしょうか?」
話が噛み合わない。一体何が起きている?短い間だったが、婚約者として楽しくやっていたではないか。その間のことを覚えていないのか?
嫌な汗が背筋を伝う。
それじゃまるで……
「お前、あの女のことを階段から突き落としただろう!覚えていないじゃ済まされないぞ」
「あの女……?なんのことですか?」
「あいつだよあいつ!エリーゼ侯爵令嬢だ!」
「わ、わたしがエリーゼ様を!?そんなことしておりません!大変なことですよ!」
「目撃者も大勢いる。言い逃れなんてできないぞ」
「そ、そんな、何かの間違いです!私は誓ってそんなことしていません!」
必死な様子で否定する。嘘をついているように思えずまだ錯乱しているのか、と思ったが心がそれをどうしても否定する。
おそらく記憶を無くしているのだ。
前のフロリアの時と同じだ。記憶の欠損の仕方に差異こそあれ、そもそもこんなことが立て続けに起こるなんて普通じゃない。
一体どうなっているんだ。
「少し出かける。リカルド、準備しろ」
「また娼館ですか?殿下」
「ああ、しばらくここには戻りたくない。誰か来ても留守だと伝えておけ」
とにかく王宮には居たくなかった。気分を変えるには顔見知りもいないところが良い。娼館なら身分を隠すし変装もする。ましてや詮索などされるわけもない。ここ以外で顔を合わせることもないからちょうど良いだろう。
さすがに立場上頻繁に通うわけにもいかないから、月に一回程度の、完全にお忍びの、リカルドしか知らない極秘の遊びだ。
「お初にお目にかかります。ようこそいらっしゃいました」
ここは上流階級が通うような高級娼館だから、店や女の質はかなり良く、教育が行き届いている。普段のお気に入りを指名することも考えたのだが、なるべく自分の周りの環境全てを新しくしたかったため、初めて見る女を選んだ。
「数日ここに滞在する。無論その分金は払う」
「かしこまりました」
ふう、と一息つく。現実から切り離されたような空間に、普段は高揚するのだが、今は安堵の気持ちが強い。
「今日は、何か嫌なことがおありでしたか?」
にこり、と柔らかい笑みを浮かべる。普段は面倒に感じる会話もどこか心地が良い。
「別に……ただ、面倒な女に絡まれたくなかっただけだ」
「あなたをお慕いする方、たくさんいらっしゃるのでしょうね」
営業トークだろうが、悪い気はしない。こういうところが、娼館の女の良さだ。
出された飲み物を一口飲む。鮮烈な香りと甘みが少なめな辛口ワインだ。普段から好んで飲んでいる銘柄と同じものだ。値段も相応だと思うのだが、高級店だけあって、良いものを出している。もしかしたら身分について察しがついているのかもしれない。
「なあ、真実の愛なんてあると思うか?」
「真実の愛……でございますか?」
「ああ、仕事柄色んな男を見てきているだろう。そんなものがあると思うか?」
女はグラスを持つ手を止めた。艶やかな仕草で、ただ少しだけ首をかしげる。
「私も女ですから、あると言いたいところですが、少々難しいですわね」
「そうだろうな」
娼館は過酷なところだ。そんな甘い世界ではない。夢見がちな貴族の女どもは違う。人の闇や欲により深く触れる。価値観も変わるだろう。
「ほとんどの殿方のおっしゃる真実の愛は、紛い物かもしれません。ですが、私はどこかにはあると信じておりますわ」
意外だった。そんな世界にいる人間の言葉とは思えない。それだけ濃い人生経験を持つ女からそんな言葉ができたことに興味を覚えた。
「ほぅ?男なんて所詮、甘い蜜に吸い寄せられる虫みたいなものではないのか?」
「ふふ、あなた様も殿方だと言うのに随分と乾いたことをおっしゃいますわね。ですが、真実の愛は別に殿方の専売特許ではございませんですわよ」
「面白いことを言うな。お前にも好いた男がいたと言うことか」
「ええ、今もなお、でございます」
これには驚いた。男を接待する場で、他に好きな男がいるなどと娼婦が口にするなんてまずあり得る話ではない。怒る男の方が多いんじゃないだろうか。だけど俺はますますこの女に興味が出てきた。
「それはどんな男だ?」
「興味がおありなのですか?」
「ああ、聞かせてくれ」
口に手を当てくすくすと女は笑う。
「そうですわね…….一言で言うなら花の様な方、でしょうか」
「花?」
「ええ、先ほどあなたは、男を甘い蜜に寄せられる虫と表現なされましたけど、私にとってはむしろ逆ですのよ。花に寄せられる虫が本当に多くて大変なのです」
少し棘のある言い方に違和感を感じた。あまり娼婦っぽくない言い回しをする。仕事としての割り切りより私情が強いとでも言うのだろうか。
「その方のことならなんでも知っております。お茶会があまり好きではないことも、甘いものが苦手で、辛口のワインが好みなことも」
嫌な汗が背筋をつたった気がした。
「緊張すると汗が出やすい体質なことも、小さい頃母の不貞を目撃したせいで、女性不審になっていることも。その不信感を埋めるため多数の女性と関係を持っていることも」
グラスがガシャンと音を立てて割れた。手が震えて力が入らない。あり得ない、あり得るわけがない。このことを知ってる奴は一人しかいないはずだ。酒に酔ってついぽろっと口にしてしまったあの時、ただ一度だけだ。
「な…んで…知って…」
「だって私は殿下を真実に愛していますから」
そう言った女の顔には、ねっとりとした見覚えのある、まるで蛇のような気味の悪い笑みが浮かんでいた。
俺は何も持たずに這いずるようにして、娼館から逃げ出し、馬車に飛び乗る。ガタガタ震えながら王宮へとんぼ返りするしかない。
逃げられない。どこにも逃げる場所がない。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてーー
「ヴォェッ」
吐き気に耐えかねて頭だけ馬車から出して嘔吐する。据えた匂いが鼻につく。
なんなんだよ!俺が何したって言うんだ!
口を拭う。目の前がチカチカする。どこに行ってもあの女の幻影がいる気がしてしょうがない。
婚約破棄した奴らが狂っているのかと思ったが、もしかしたら狂っているのは俺の方なのか。
罪悪感なんて持った覚えがないが、心の深いところでは罪の意識にでも苛まれているのかもしれない。
それだったらどれだけ良いか。得体の知れないものに追い回されるより遥かにマシだ。だって、あれはもう、人間ではない何かだ。
馬車の隅で膝を抱えて震えているうちに眠ってしまっていたようで、気がついたら王宮に到着していた。
自室に戻ると、中には側近のリカルドがいた。
「あれ?殿下、お早いお帰りですね」
俺は何も言わずに扉を閉じる。
「いいか、もう金輪際俺に女を近づけるな」
「なんの冗談ですか?あの殿下が、もう女見たくないってどれだけ発散してきたんですか」
冗談めかして言うが、全く笑えない。さすがに変だと感じ取ったのか、表情を引き締めて問いを投げかけてきた。
「……何があったんですか」
「俺にもよくわからない。だけど、どこに行ってもあの女の幻影が付いてくる」
「あの女?」
「フロリア公爵令嬢だ」
「あの人まだ療養中ですよ。一切外に出たと言う話はありません。それに男の側近って僕だけじゃないですか。せめて一人二人の側仕えがいないと、回りませんって」
「わかっているが、絶対にダメだ。時間がかかってもいい。悪いが全ての支度はお前がやってくれ」
「もー、しょうがないですね」
「すまない」
「僕に謝るなんてそんな殿下初めてみましたよ。記念に残しておきたいですね」
軽口が軽薄な奴だと思っていたが、今はそれが何よりありがたかった。
「……今まで悪かったな。他人に頼るなんて考えたこともなかったんだ」
「……」
「まあ今更言われてもって思うかもしれないが。自分でも意外だった。こうなってみると、案外脆いもんだな」
「……」
「少し身の振り方を見直すつもりだ。王位継承権ももしかしたら放棄するかもしれない。今となっては王をやりたい理由もない」
「……」
「王の側近じゃなくてもついてきてくれるか?もちろん仕事が大変なら何人か新しく採用したって構わない。もちろん男でだけどな」
「……」
「リカルド?どうした?」
「……」
「!? おい!大丈夫か!?」
完全に無表情のまま、まるで石像みたいに固まっている。肩を揺さぶっても返事がない。視線もどこか遠くを見つめているだけで、一切動かない。
「おい!リカルド!」
突然リカルドの体がビクッと跳ねた。思わず後ずさり距離を取ってしまう。
リカルドは首だけ動かしてこっちをみた。
視線がぐるぐると宙を彷徨い、俺を捉えた瞬間眼球がビタッと止まる。そして、ゆっくりと、口角が上がっていき、気味の悪いあのねっとりとした笑顔が作られていく。
「ヒイッ!」
思わず喉から空気が漏れ出る。腰が抜けてその場にへたり込んだまま立てない。
「……もち、もち、ろ、んですよ、殿下」
まるで初めてその体を操縦するかのような、定まらないイントネーションで言う。
「殿、下、が、平民、になろう、と、顔が変わろうと、借金まみれに、なろうと、僕はついていきます」
ゆっくりと、歪な歩き方で俺の方に近づいて来る。
壁際まで追い詰められた俺の顔面を覗き込むように、不自然な体勢で顔を近づけてくる。
「だって、僕は殿下を」
「真実に愛していますから」
真実の愛って美しいという話でした。
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