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模型女子の異世界聖女ライフ ~推し活するつもりが、気づけば私が推されてたんですが!?  作者: Ciga-R


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第13話(中パート) 模型神さまの贈り物――趣味女子と光の王子の神装戦記

 


 闇が筋肉の線を“造り替え”、骨格の軋む音が戦場に響く。


「見せてやるよ……俺の本気をよォッ!!」


 影のうねりが一気に収束し――グレイヴの姿は黒き装甲へと変わった。


 まるで闇そのものが編まれたような“影のクロス”。


 背に伸びた残影の翼が、月光を呑み込むたび空間が軋む。


「この姿……“断罪乃影刃ジャッジメント・ファング極式ジ・エンド”。三分――たった三分しか保たねぇが」


 金属の軋むような声で、グレイヴが愉悦の笑みを浮かべる。


「俺が強ぇ奴をぶっ潰すには……十分すぎる時間だろぉ!!」


 闇が荒れ狂い、地面が影に飲み込まれていく。


 しかし――ルシエルは微動だにしない。


 金翼を広げ、静かに剣を構えるだけ。


「一分も必要ない」


「……っ!」


 その声音は氷より冷たく、しかし柚葉には誰よりも強く、優しく聞こえた。


 胸の奥がぎゅうっと締めつけられる。


(やばい……なに、この言い方……! かっこよすぎ……!)


 柚葉の頬が一瞬で熱を帯び、心臓が跳ねあがる。


 ルシエルは一切の迷いも焦りもない瞳で、ただ柚葉へ振り返る。


「ユズハ。君がいるかぎり……僕は負けない」


 その微笑は、光の加護そのもの。


 柚葉の胸に宿る紋章が、きゅんと跳ねるように強く光った。


「ル、ルシエル……!」


「少し、下がっていて。すぐ終わらせる」


 王子の微笑と、絶対の自信。


 柚葉は思わず息を呑む。


 恐怖よりも、胸を満たしたのは――圧倒的な安心と、ときめきだった。


「くはっ、なに照れてんだよお姫サマ。安心しろよ? 一分のあいだに、あんたの大事な王子サマは、すべて喰い尽くしてやるッからよぉ!!」


 黒き影翼が爆発するように展開する。


 グレイヴ、究極形態。

 ルシエル、揺るぎない王の光。


 運命の“最強と最狂”の衝突は――いよいよ始まる。


【一分間の超高速バトル】


 ――開始 00:00


 空気が張り詰め、世界そのものが沈黙した。


 次の瞬間――闇と光が同時に消えた。


 柚葉には一瞬、ルシエルもグレイヴもそこからいなくなったようにしか見えなかった。


 遅れて、空間が悲鳴を上げる。


 ドガァンッ!!!


 見えない衝撃が爆ぜ、壁に大穴が空く。


「っ!? え、えっ!? 今の誰が……!」


 理解すら追いつかない速度。


 ふたりの戦いは、音より速く、光より速い。


 00:06


「おらァ!! もっと楽しませろ!!」


 黒い残影が空を裂き、五つ、十つ、百に分身する。


 影の翼が刃と化し、嵐のようにルシエルへ襲いかかる。


 だが――


「……遅いと言ったはずだ」


 ルシエルは一歩。


 ほんの一歩踏み込むだけで、影がすべて弾け飛ぶ。


 光の翼が広がり、彼の周囲に“時間差の残光”が幾重にも重なる。


 その度に床が砕け、衝撃波が城を揺らした。


 00:18


「ははははッ!! いいじゃねぇか!! その速度、鳥肌が立つッ!!」


 グレイヴが狂喜で瞳を濡らす。


 影のクロスの紋様が蠢き、腕が巨大な爪の形へと変形する。


 その一撃は――山をも砕く暴威。


 けれど。


「――届かない」


 光が瞬き、ルシエルは爪の内側へ入り込む。


 一閃。


 鋭い光の軌跡が“爪の軌道そのもの”を切り裂いた。


 黒い破片が舞う。


 00:27


「クソッ……このッ……!」


 グレイヴが影の翼を地面へ叩きつける。


 それが巨大な影の柱となり、辺り一帯を呑み込む。


「逃げ場はねぇぞ!! どこに隠れようと影はお前を殺す!!!」


 数百にも及ぶ影刃がルシエルを囲む。


 柚葉が思わず叫ぶ。


「ルシエル!!」


 だがその声より早く――光の円環がルシエルの足元に展開された。


聖環術セイクリッド・リング・加速。――“ここからは、ボクの領域だ”」


 光が世界を塗りつぶす。


 00:36


 ルシエルが“消えた”。


 いや――速すぎて見えないだけ。


 光の残光だけが線となり、戦場に複雑な文様を描き上げていく。


「なっ……何だこの軌跡……!?」


 グレイヴでさえ視認できない。


 その瞬間、背後。


「……一手」


「っ!?」


 グレイヴの装甲に亀裂が走る。


 00:42


 グレイヴの表情が喜悦で歪んだ。


「最高だ……! 本当に……最高だよ王子サマ!! もっとだ……もっと全力を見せろ!!!」


 影のクロスが暴走し、翼が刃と爆風を生む。


 闇が野獣の咆哮のように吠えた。


 00:51


「これで終わりだッ!!断罪乃影刃ジャッジメント・ファング――滅界穿アビスホール!!」


 闇が一点へ収束し、空間ごと抉り取る一撃が放たれる。


 黒い世界が柚葉へ襲いかかろうとした瞬間――


 光が切り裂く。


「――ユズハには、触れさせない」


 剣が下から上へ、ひとつ、綺麗な光の道を描く。


 00:57


 時間が止まる。


 ルシエルの剣先は、風すら断つ静けさでグレイヴの胸元に正確に突きつけられていた。


 グレイヴの動きは、完全に封じられた。


「……これで、十分だ」


 静寂。


 その静けさが、逆に心臓を揺らす。


 柚葉は息すら忘れた。


(ルシエル……こんな……こんなに強いの……? なのに……なんで、あたしのためにここまで……)


 胸の奥が、きゅっと熱くなる。


 01:00 ――一分経過


 光が弾け、限界を超えたのか闇のクロスが霧散する。


 膝をつくグレイヴが、悔しさよりも歓喜に震えて笑った。


「……っは、ははは……! はっはははは!! 最高だ……王子サマよ……!!」


 その歓喜の叫びの中、ルシエルはただ柚葉へ振り返って微笑んだ。


「ユズハ。――終わったよ」


 その笑顔は、光よりも優しくて。


 柚葉の胸は、また強く跳ねた。



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