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モケジョの異世界聖女ライフ ~模型神の加護と星降りの巫女の力に目覚めた私~光の王子の距離感がバグっているんですが!  作者: Ciga-R


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第118話 一人じゃない、集いし剣が絶望を覆す聖女の逆転劇

 


 ミレフィーオが儚く微笑む。


 「……ありがとう……」


 その言葉に柚葉もまた、ほっと息をつき、ふと、辺りを見回した。


 そして――


「……え……?」


 彼女の瞳が、ある一点で止まる。


 そこにいたのは、血にまみれ、倒れ伏すアーシェス。


 そして、その腕の中に静かに横たわる、命の気配を感じさせない――リディアーヌの姿。


「……アーシェスさん……? リディアーヌさん……!?」


 柚葉の声が震える。


(なんで……なんで、リディアーヌさんが……!)


 星雫の聖女生誕の儀――そのとき、柚葉を導き、支えてくれた、あの優しく、強く、美しい聖女。


 聖女たちの中でも、象徴のような存在だった彼女が、今は、まるで眠るように、動かない。


「そんな……うそ……」


 柚葉は駆け寄ろうとするが、足がすくむ。


「そうだ……ルシエルは……?」


 彼女を支え、勇気づけてきたルシエル――その姿がどこにもないことに気づく。


「……ルシエルは……どこ……?」


 誰も、すぐには答えられなかった。


 沈黙の中、イルヴァが静かに顔を伏せ、そして、ドルガンが、重く、言葉を紡いだ。


「……黒の繭の中だ。敵方の夜葬の巫女と共に……閉じ込められた」


「……っ」


 柚葉の瞳から、色が消える。


「そんな……うそ……」


 彼女の膝が、崩れ落ちる。その手が、胸元をぎゅっと握りしめた。


「ルシエル……!」


 その名を呼ぶ声が、戦場の静寂に、かすかに響いた。


(どこにいるの……? どうして……こんなときに、そばにいないの……)


 胸の奥が、張り裂けそうだった。


 あの優しい声も、まっすぐな瞳も、今はどこにもない。


(……でも、感じる……)


 彼女の中で、確かに何かが脈打っていた。


 それは、ルシエルと過ごした時間の記憶。言葉にできない、けれど確かにある“絆”。


(あなたが、ここにいないなら……あたしが、あなたの願いを……)


 その想いが、柚葉の胸に静かに灯り始めていた。


「ルシエル……!」


 その声に、アーシェスがかすかに顔を上げた。


 その瞳はかすんでいたが、柚葉を見つけると、どこか懐かしさを宿したように、わずかに目を細めた。


「……星雫の……聖女殿か……」


 その声に、柚葉の胸がなおさら締めつけられる。


(……ルシエルのお兄さん……何度か会っただけなのに……どうして……こんなに、胸が痛いの……)


 彼女の中で、何かがつながる。


「……どうして、こんなことに……」


 柚葉は、リディアーヌの静かな顔を見つめながら、そっと手を胸元に重ねた。


(お願い……もう一度……)


 彼女の掌に、かすかに光が集まり始める。


 星のようにきらめく粒が舞い、蒼く輝く蝶の姿が、再びその周囲に現れかけた――


 だが。


「――そこまでだ、星の聖女」


 冷たい声が、空気を裂いた。


 虚邪の教祖・ルーグが、黒き下僕たちを引き連れて、戦場に姿を現す。


 その背後には、無数の虚邪の兵たち。闇の波のように、地を這い、空を覆い尽くしていく。


「お前の願いなど、もう届かぬ。ここは我が主の胎内――光など、もはや意味をなさぬ!」


 柚葉の手から、光がふっと消え、蒼星の蝶たちも、宙に消えていった。


「……!」


 柚葉は歯を食いしばり、倒れているアーシェス、リディアーヌ、まだ本調子ではないミレフィーオの前に身をかがめる。


(あたし……戦えない……でも……この人たちだけは……!)


 そのとき、虚邪の兵たちが一斉に襲いかかろうとした。


「させない!」


 アウロアが矢を放ち、ドルガンが盾を構えて前に立つ。


「聖女たちを守る! ここは通させん!」


 アンバリーフもまた、柚葉の前に立ち、小さな身体から光を放って威嚇する。


 だが、数が多すぎた。


 ガルディウスは、ヴァルガとの一騎打ちの最中。

 オーヴェルスも、カディスとの激戦に集中している。


 援軍は、来ない。


「……終わりだ」


 ルーグが、ゆっくりと歩み寄る。その手には、禍々しい黒の刃――“狂刃”が握られていた。


「主の目覚めに、最後の供物を……お前たち聖女の命で、扉は完全に開かれる……!」


 柚葉は、三人をかばいながら、必死に身を縮める。


(動けない……でも、あたしが止めなきゃ……!)


 だが、身体は震え、足は動かない。


 ルーグの狂刃が、振りかぶられる。


「さあ、星雫の聖女よ――その命、我が主に捧げよ!!」


 黒き刃が、柚葉めがけて振り下ろされる――!


 その瞬間。


「……なっ――!?」


 ルーグの腕が、肘から先ごと、鮮やかに宙を舞った。


 握っていた狂刃もろとも、空中でくるくると回転し、地に落ちる前に、黒いもやとなって消え去る。


「……誰だ……!」


 ルーグが振り返ると、そこに立っていたのは――


「遅参、面目次第もござらぬ。されど――間には合うたようでござるな、ユズハ殿」


 ヒジカタ。


 その姿は、まさに時を越えた新選組の剣士そのもの、浅葱色の羽織を翻し、額には「誠」の鉢金がきらりと光る。


 鋭い眼光が、柚葉の前に立ちはだかるルーグを真っ直ぐに射抜く。


 手にした刀には、血の気配ひとつなく、ただ静かに、鋭く光を返していた。


「ヒジカタさん……!」


 柚葉の瞳が、ぱっと見開かれる。


 ルーグは、切り飛ばされた腕の先を見下ろし、もやのように消え去った狂刃の残滓に、狂気の笑みを浮かべながらも、わずかに後ずさる。


「貴様……何者だ……!」


 ヒジカタは、刀を構え直し、静かに答える。


「拙者は――誠を貫く者、ヒジカタ・ソウシ。この命、星の御方を守るために在る」


 その声は、まるで雷鳴のように戦場に響いた。


「ふふ……やっぱり、間に合ったね……」


 リリアが、ふらふらとその隣に現れる。その顔は青ざめ、息も荒い。


「ごめんね……最大まで力、使っちゃった……私、もう……ちょっと、無理かも……」


「無理はなさるな。そなたの分までも、拙者が斬り伏せてくれようぞ」


 ヒジカタが短く言い放つと、その背後から、もう一人の影が現れる。


「……封印も、穢れも、全部斬ってきた。あとは任せるぞ、ヒジカタ」


 リュウゲツ。


 その刀身はひび割れ、肩で息をしながらも、なおも鋭い気配を放っていた。


 虚邪の下僕たちが、柚葉たちに群がろうとする――


 だが。


「……邪魔だ」


 ヒジカタの一閃。


「……消えろ」


 リュウゲツの斬撃。


 その瞬間、柚葉たちに迫っていた虚邪の兵たちは、まるで風に吹かれた塵のように、一瞬で霧散した。


「すご……」


 柚葉が、思わず息を呑む。


 だが、まだ終わりではなかった。


「にゃっほーい! 間に合ったにゃー!」


 軽やかな声とともに、ふわりと宙から舞い降りてきたのは――ニャルディア。


「遅れてごめんにゃ~! でも、やっと着いたにゃ!」


 その後ろから、しっかりとした足取りで現れたのは、ブレンナ。


 その瞳は鋭く、だがどこか安心したように柚葉を見つめていた。


「……無事でよかったぜェ。今度は、オレたちが守る番だァ!」


「ニャルディア! ブレンナ!」


 柚葉の顔が、ぱっと明るくなる。


「みんな……来てくれたんだ……!」


 涙がこぼれそうになるのをこらえながら、柚葉は立ち上がる。


 その背には、再び蒼星の蝶が舞い始めていた。




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