表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モケジョの異世界聖女ライフ ~模型神の加護と星降りの巫女の力に目覚めた私~光の王子の距離感がバグっているんですが!  作者: Ciga-R


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

114/141

第104話(後パート) 神の心臓が晒された時、英雄と狂信の最終決戦が始まる



 その瞬間――


「ここはなァ……てめぇの寝言を垂れ流す演説会場じゃねぇんだよォ!!」


 怒声が、地下空間を震わせた。それは、ただの怒りではない。命を弄び、理屈で正当化する者への、魂の底から湧き上がる“怒り”だった。


「てめぇのその腐った哲学、誰も聞きたかねぇって言ってんだ……!いいかげん、その減らず口を止めろォ!!」


 ガルディウスの咆哮が、まるで雷鳴のように響き渡る。


 その手に握られた魔剣《グリム=バルムンク》が、唸りを上げながら鬼気を放ち、空間の歪みすら切り裂くように、黒炎の軌跡を描いた。


 そのガルディウスの前に、静かに立ちはだかる影――それは、闇に堕ちたかつての王子、ヴァルガ=ヴァルハイト。


 その瞳に宿るのは忠誠ではない。


 あるのは、かつて自らを見捨て、蔑み、切り捨てた王国への深い憎悪と、その王国を滅ぼすための“頭脳”を守るという冷徹な判断。


「……こいつが倒れたら、王国を壊す手が鈍る。だから、ここは通さない。それだけだ」


 その声は、鉄のように重く、感情を削ぎ落とした理の響きを持っていた。


 ガルディウスは、カディスの前に立ちふさがるその姿を見据え、怒りに満ちた瞳を細める。


「てめぇ……そんなもんのために、あいつを庇うってのか……!」


 魔剣《グリム=バルムンク》が、怒気に呼応するように黒く脈動し、刃先から鬼気が噴き上がる。


「だったら――その薄汚ぇ理屈ごと、叩き斬ってやる!!」


 怒りと冷徹、激情と計算。


 交わることのない二つの意志が、いま、火花を散らしながら激突しようとしていた。


 しかし、そこに立つその姿は、もはや“過ぎ去りし日の忘れられた王子”ではなかった。


 かつてのひ弱さも、迷いも、微塵も残っていない。


 虚邪を取り込み、異形と化したその肉体は、禍々しい鎧に包まれ、軋むたびに黒煙を撒き散らしていた。


 その手に握られた剣は、まるで死そのものを凝縮したような闇を封じ込めており、抜かれた瞬間、空気が悲鳴を上げ、空間が軋んだ。


「兄上の……息子と、その仲間たちか。光をまとい、自分勝手な正義を語る者ども」


 その声には、もはや人の温度はなかった。


 冷たく、乾ききった響き。そこに宿るのは、ただ“壊す”という意志のみ。


「お前たちが守る世界は、儚なすぎる。だから、俺が壊す。王国を、記憶ごと――無に帰すために」


 その言葉は、呪詛ではなかった。


 ただの宣告。過去に捨てられた者が、未来ごとすべてを断ち切ろうとする、静かな歪んだ決意。


 そして――


 激突。光と闇が、ついに交差する。


 神の心臓を巡る、最後の審判が、今、始まった。



 ガルディウスの魔剣《グリム=バルムンク》。“神殺し”の異名を持つその刃が、深紅の残光を引きながら唸りを上げ、空間を裂くように振り下ろされる。


 その一撃は、神性すら断ち切る“否定”の力。常識も理も、すべてを粉砕する暴威の一閃。


 だが――


 ヴァルガは、その軌跡を正確に捉えた。彼の手にあるのは、虚邪の核を宿した黒剣。死そのものを凝縮したような、禍々しき魔剣。


 その刃が、音もなく振るわれ、《グリム=バルムンク》の一撃を受け止める。


 刃と刃が噛み合った瞬間、空間が軋み、重力が歪む。


 衝撃波が床を砕き、地下空間に亀裂が走る。


 聖機アストラ・コードの光が、脈打つように激しく明滅し、空間の結界が悲鳴を上げる。


「へへっ……いいじゃねぇか、叔父貴よ……!」


 ガルディウスの口元が、獣のように吊り上がる。


 その瞳に宿るのは、破壊ではない。ただ純粋な“戦い”への渇望。


「その目……その剣……! オレの血が、うずいて仕方ねぇんだよッ!!」


 再び、剣が交差する。


《グリム=バルムンク》が唸りを上げ、ヴァルガの黒剣が闇を引き裂く。


 一撃ごとに、空間が悲鳴を上げ、魔力の奔流が爆ぜ、光と闇の残滓が火花のように散る。


 それは、もはや戦闘ではなかった。


 魂と魂のぶつかり合い。信念と怨念、誇りと憎悪が交錯する、“存在”そのものを賭けた激突だった。


 そして――その戦いの中心。神の心臓となることを抗い続けるリディアーヌを収めた棺の中で、呪われた神の楔 《アバドン・スパイク》は、静かに脈動を続けていた。


 再び、剣が交差する。《グリム=バルムンク》が唸りを上げ、ヴァルガの黒剣が闇を引き裂く。


 一撃ごとに、空間が悲鳴を上げ、魔力の奔流が爆ぜ、光と闇の残滓が火花のように散る。


 だが――その応酬は、まだ“序章”にすぎなかった。


「見せてやるよ……これが、オレの“本気”だッ!!」


 ガルディウスが地を蹴る。


 その瞬間、彼の全身から深紅の魔力が噴き上がり、《グリム=バルムンク》が咆哮するように震えた。


「《神断・紅蓮葬しんだん・ぐれんそう》ッ!!」


 振り下ろされた剣が、空間を裂く。


 深紅の斬撃が幾重にも重なり、まるで神の血脈を断ち切るかのように、空間そのものを焼き尽くしていく。


 だが――


「遅い」


 ヴァルガの声が、闇の中から響いた。その姿は、すでにガルディウスの背後にあった。


「《虚哭・黒葬刃きょこく・こくそうじん》」


 黒剣が振るわれた瞬間、空間が沈黙し、音が消える。


 それは“死”そのものを具現化した一閃。あらゆる存在の終焉を告げる、虚無の斬撃。


 ガルディウスは、黒き一閃が迫るその瞬間――すでに読んでいた。


「……見えてんだよ、そんなもんッ!!」


 咄嗟に身を翻し、《グリム=バルムンク》を盾のように構える。


 刃と刃がぶつかり合い、世界が軋むような轟音が地下空間を揺るがす。


 だが、ガルディウスの口元は、獣のように吊り上がっていた。


「くはっはははッ!! やるじゃねぇか、叔父貴!! やっぱりてめぇも、ヴァルハイトの血を継いだ“戦う漢”ってこった!!」


 その声は、怒りではない。


 歓喜。


 戦いの中でしか見えない“本質”を見つけた者の、純粋な興奮だった。


「そんな力があるんだったらよォ――なんでそんな、しょうもねぇ虚邪なんかに堕ちちまったんだよ!!」


 ヴァルガの目が細くなる。


 その瞳に宿るのは、怒りでも悲しみでもない。ただ、深く沈んだ呪縛の色。


「……黙れ。お前に、俺のなにがわかる」


「わかんねぇよ! わかりたくもねぇ!! そんな、しょうもねぇ負け犬の生き様なんてなァ――オレにはマネできねぇし、する気もねぇよォ!!」


《グリム=バルムンク》が唸りを上げ、深紅の斬撃がヴァルガを襲う。


 だがヴァルガもまた、黒剣を振るい、闇の奔流で応じる。


「黙れッ!!」


 怒声と共に、虚無の斬撃が放たれる。だがガルディウスは、怯まない。


「自分のチカラだけで、欲しいもんを勝ち獲れ!! それが男ってもんだろがッ!!」


 その叫びは、剣よりも鋭く、ヴァルガの胸を貫いた。


「……っ!」


 一瞬、ヴァルガの動きが鈍る。だがその隙を突くことなく、ガルディウスは真正面から、再び剣を構えた。


「来いよ、叔父貴。てめぇが“人間”なら――まだ、出来ることがあるだろうがよ!!」


 二人の剣が、再び交差し、火花が散り、空間が軋む。


 だがその中心には、確かに“言葉”があった。


 ぶつかり合い、削り合い、それでも届いてほしいと願う、もはや技ではない。魂の叫び。存在の証明。


 そして――


 その戦いの中心。


 神の心臓となることを抗い続けるリディアーヌを収めた棺の中で、呪われた神のアバドン・スパイクは、なおも静かに脈動を続けていた。


 まるで、この死闘の果てを見届けるかのように――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ