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モケジョの異世界聖女ライフ ~模型神の加護と星降りの巫女の力に目覚めた私~光の王子の距離感がバグっているんですが!  作者: Ciga-R


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第101話 狂信が完成する夜、聖機起動を告げる裏契約者



 狂気は、笑いとなってあふれ出した。


 喉を裂くような高笑いが、円環の闇を震わせる。


 それは喜びではない。理性の崩壊が、音になったものだった。


「――あははははははッ!! ああ、実に素晴らしい……実に、実に愉快だッ!!」


 虚邪の教祖、《ルーグ・ヴェルミオン》。


 その顔は、もはや“人”のそれではなかった。歪んだ口元。見開かれた瞳。


 その全てが、壊れた信仰に支配されていた。


 両手を広げ、白金の光と英雄たちを一望するように仰ぎ見る。その姿は、まるで“神の啓示”を受けた預言者のようで――だが、そこにあるのはただの狂った信仰心。


「君たちは知っているかね? 今この瞬間も、《虚邪の穢れの集合体》が王都へと集まっていることを」


 その言葉に、空気が一段、冷えた。


 アーシェスの眉が、わずかに動き、ガルディウスの背に、嫌な予感が走る。


 そしてオーヴェルスの脳裏に、最悪の構図が浮かぶ。


「……どこへ、だ」


 静かに問うたのは、氷の王子だった。その声には、怒りも焦りもなかった。


 ただ、確信に近い“予感”があった。


 ルーグは、にたりと笑う。


 その笑みは、理性の仮面を剥がした“信徒の顔”。


「解らない? いや、解っているはずだ。君たちほどの者が――」


 指先が、天を、そして“地の奥”を示す。


「――《大神殿》の地下に眠る聖機、《アストラ・コード》。あれこそが、“神の器”だ。我らが主を迎える、最後の祭壇だよ」


 その声は、震えていた。


 歓喜に。陶酔に。そして、破滅への確信に。


「さあ、英雄たちよ。君たちの絶望を、どうかこの祭壇に捧げてくれ。それが、我らの“祈り”なのだから――!」


 その瞬間、空気が軋み、光と闇が、ざわめいた。


 ルーグの狂信が、ついに“現実”を侵し始めていた。


 聖機アストラル・コードの名が告げられた瞬間、オーヴェルスの杖が、僅かに音を立てた。それは、理性が限界を超えた時に漏れる、無意識の震えだった。


「……馬鹿な。あれは、神代の封印機構……聖女の系譜と王家の認証なくしては、起動すら不可能なはず……!」


 その声に、ミレフィーオが息を呑む。胸の奥に、冷たいものが流れ込む。


「……大神殿に……邪悪た者など、近づけるはずが、ない……!」


 それは、祈りを捧げてきた者として、とうてい信じることが出来ない冒涜の暴言であった。


「――ああ、普通ならね」


 ルーグは、楽しげに頷いた。


 その笑みは、まるで子供が秘密の扉を開けた時のような、無垢な歓喜に満ちていた。


「だが、我々は“普通”ではない。構造に辿り着いたのだよ。あの聖機の……核心に。そして――“聖女の系譜”と“王家の認証”を手にいれた」


 その言葉と共に、ルーグの視線が、セレナーデとヴァルガへと向けられる。


 その目は、陶酔していた。


 まるで、神の器を前にした信徒のように。そして、すでに“完成”を確信している者のように。


「すべては、整っている。あとは、君たちが絶望し、祈りを手放すだけだ。それが、最後の鍵となる――」


 その声は、甘く、深く、そして、何よりも――壊れていた。


「そして、それを導いたのが――」


 次の瞬間。


 何の気配もなく。


 影が、円環の中心近くに“立っていた”。


 誰も、気づかなかった。


 気配なく現れ、現れた瞬間に“逃げ道そのもの”を消す男。“影の観測者”と畏れられた、あのリュウゲツですら――


 その登場に、わずかに目を見開いた。


(……リュウゲツが……!?)


 アーシェスの思考が一瞬、空白になり、ガルディウスが、無意識に一歩、後ずさった。


 オーヴェルスの指先が、杖を強く握りしめる。


 それほどまでに――異常な登場だった。


「……久しぶりですね」


 涼やかな声が、空気を切り裂くように響く。


 そこにいたのは、灰色の外套をまとった痩身の男。理知的な眼鏡越しの視線は、恐怖も、畏れも、忠誠すらも映していない。


 ただ、静かに。

 ただ、当然のように。


 そこに“在る”ことが、すでに脅威だった。


 灰色の賢者――カディス・ヴェルド。


 その名を知る者は、誰もが理解していた。この男の登場が、戦局を根底から覆す“兆し”であることを。


 そして、何よりも――あのリュウゲツが、反応できなかったという“事実”が、この場にいる全員の背筋を、確かに凍らせていた。


「……っ!」


 アーシェスの瞳が、氷点下まで冷え切る。その視線は、もはや“人”ではなく、“対象”を見据える狩人のそれだった。


「カディス……貴様……!」


 王子の声には、怒りよりも先に、裏切られた者の、深い痛みがにじんでいた。


「私の配下だったはずだ。情報網、研究班、すべて――王家の中枢にいたはずの、お前が……」


「ええ。確かに」


 カディスは、肩をすくめる。


 その仕草は、まるで“報告書の一行”を読み上げるかのように、あまりにも事務的だった。


「王家の研究資金。実験設備。護衛。情報秘匿。全て十分、可能な限り使わせていただきました」


「……この、裏切り者が!!」


 ガルディウスが一歩踏み出す。


 魔剣《グリム=バルムンク》が、殺意を帯びて低く唸る。


 だが、カディスは視線すら向けない。まるで、その怒りすら“想定内”であるかのように。


「裏切り? いいえ。契約です。ご存じの通り私は、“裏契約者りけいしゃ”」


 淡々と、言い切る。その声音には、感情の起伏すらなかった。


「私は“知”を欲した。王家は“成果”を欲した。互いの利害が一致していた――それだけのことです」


 そして、ルーグの側へ、半歩。


 その動きは、まるで“答え合わせ”のように自然だった。


「その契約がただ終わっただけです。研究資金の分は……きちんと“働いた”でしょう?」


 その言葉に、アーシェスの拳が、白くなる。爪が掌に食い込むほどに、強く握りしめられていた。



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