表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モケジョの異世界聖女ライフ ~模型神の加護と星降りの巫女の力に目覚めた私~光の王子の距離感がバグっているんですが!  作者: Ciga-R


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/141

第95話 世界が肯定した光の座標へ、覚醒の聖女を追う剣と誓い



 ――大地が、鳴いた。


 それは地震でもなければ、魔力の震動でもない。


 もっと深く、もっと古く、世界そのものが“息を吸い直す”ような、静かで重い音だった。


 ズン――。


 音というにはあまりに鈍く、衝撃というにはあまりに穏やかで、それでも確かに、地の底から何かが突き上げてくる。


 それは、目に見えぬ“意志”の胎動。


 命の選択に応えるように、世界が、次なる鼓動を打ち始めた合図だった。


 空気が震える。


 大地が、ただの舞台ではなく、意志を持つ存在としてそこに在ることを、誰もが否応なく理解させられる。


 そして、その音を聞いた者たちは、知ることになる。


 この瞬間を境に、物語はもう、後戻りできない場所へと踏み出したのだと。


 虚邪の穢れを追い、岩山の裂け目を踏破していたアーシェスは、その瞬間、まるで何かに呼び止められたかのように、足を止めた。


「……来たな」


 赤褐色の大地の向こう。


 視界の端で、光が立ち上がる――否、“立ち上がる”という言葉では、到底足りなかった。


 それは、大地を割り、空を貫き、天へと噴き上がる白金の奔流。


 雲を突き破り、星の高さにまで届くそれは、まるで世界そのものが、一本の柱を打ち立てたかのようだった。


「……なんだと?」


 思わず漏れた声は、いつもの冷静さを欠いていた。


 それほどまでに、その光は異質だった。


 聖属性――だが、王国の聖堂に記されたどの奇跡とも一致しない。


 祈りでも、儀式でもない。ただ、ひとつの意志が放たれた結果として、世界が応えたという“感触”。


(……覚醒……)


 背筋を走ったのは、恐怖ではなかった。もっと深く、もっと根源的な冷たさ。


 それは、理解を超えたものに触れたとき、人が本能的に覚える“畏れ”だった。


 だが、その畏れの奥に、確かな確信があった。


(……あれは……イルヴァ。そして……ミレフィーオ)


 名を呼ばずとも、わかった。


 あの光は、あのふたりのものだ。


 命を賭して信じ、信じられた者が応えた――その果てに生まれた光。


(……やはり、おまえは……)


 胸の奥で、何かが軋む。


 それは氷ではなかった。ずっと奥に、誰にも見せたことのない焔が、静かに揺れていた。


 アーシェスは知る。あの光は、ただの力ではない。


 誰かが選び、誰かが信じ、そして――世界が、それに頷いたのだ。


 それは、祝福ではない。

 奇跡ですらない。


 それは、世界の“肯定”だった。そして、彼の心の奥底に眠っていた何かもまた、その光に呼応するように、静かに目を覚ましつつあった。


「……世界が、動いたな」


 低く、けれど確かな声が、唇から零れる。


 驚きではない。焦りでもない。ただ、事実を受け止めた者の静かな確信。


 アーシェスはすぐに魔導端末を起動し、指先で迷いなく術式を展開する。


 短距離魔導通信――最速で、最も信頼できる者たちへ、指示を飛ばすために。


 その瞳には、すでに次の局面を見据える光が宿っていた。


 一方、そこから少し離れた峡谷。


 虚邪の瘴気が濃く淀むその地で、ガルディウスは魔剣《グリム=バルムンク》を地面に突き立てたまま、動きを止めていた。


 剣が、低く唸っている。


 否――それは、畏れの震えだった。刃に宿る魔が、何かを本能的に拒んでいる。


「……黙れ」


 低く命じる。だが、剣の震えは止まらない。それほどまでに、あの光は異質だった。


 視線の先。


 雲を裂き、天を貫く白金の光柱が、空に向かって立ち昇っている。


 戦場で幾度も“奇跡”を見てきたこの男でさえ、この規模、この純度の光は――初めてだった。


(……虚邪の穢れが、退いてやがる……?)


 瘴気が、まるで潮が引くように、静かに薄れていく。


 討ち払われたのではない。触れることすら許されず、拒まれ、消えていく。


「この光……聖女の誕生か」


 ぽつりと、誰にともなく呟く。だが、その声音には、どこか懐かしさがにじんでいた。


「……あいつ、やっと来やがったな」


 それは驚きではなかった。


 むしろ、ようやく辿り着いたか――そんな確信に満ちた言葉だった。


 記憶が、脳裏をよぎる。


 あの時も、そうだった。


 “神の失敗作”と呼ばれた、あの絶望的な化物。


 誰もが死闘の果てに力尽き、膝をついたあの深淵の底で、ミレフィーオは、ただ一人、前に出た。


 自分の命を顧みず、「私が止める」と言い切ったあの声。血に濡れながらも、なお誰かを守ろうとした背中。


(……あの時も、無茶ばっかりしやがって……)


 だが、あの時。


 彼女の背中に、迷いはなかった。


 だからこそ、ガルディウスは迷わず最後に乾坤一擲の拳を振るえた。


 背中を預けるに足る戦友――それが、ミレフィーオだった。


(……今回も、どうせ自分のことなんざ二の次だったんだろうよ)


 思わず、口元に笑みが浮かぶ。


 それは皮肉でも、驚嘆でもない。戦友として、幼馴染として――心からの誇りだった。


「はっ……やっとお前に、世界が追いついたってわけか。……行くぞ」


 魔剣を引き抜く。


 刃が震えるのも構わず、光の方角を正確に測る。


 その背に、迷いはなかった。

 あの光のもとに、彼女がいる。


 ならば、行く理由は、それだけで十分だった。


 方位。

 地脈の流れ。

 虚邪の反応――


 それらすべてが、まるで示し合わせたかのように、ひとつの地点を指し示していた。


 偶然ではない。必然でも足りない。それは、世界が選び取った“焦点”だった。


 そこに、すべてが集い、すべてが始まる。そして、終わりさえも――





ガルディウス、ヒジカタ、リリア達が出会う短編となります。お時間のあるときにでも、こちらも読んでいただけたら幸いです。

焔冠の王子は拳で神の失敗作を殺す、異端の侍と地雷女子コーデのだる系天才魔導士、聖女候補と挑む試練の迷宮

https://ncode.syosetu.com/n5469lo/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ