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第6章『共闘の火種』

釘宮工務店と塗装戦隊との戦いが終わった翌朝。

まだ地面には爆破の煤が残り、ペンキの香りと焼けた木材の匂いが空気に漂っていた。


そんな中、釘宮 元は塗装戦隊の前に立ち、静かに口を開いた。


釘宮 元「……まず最初に言っておく。

お前らを“奴隷”みたいに扱う気は、俺にはねぇ。」


言葉のひとつひとつが、地に足をつけていた。

真正面から見つめられ、塗装戦隊の職人たちは顔を上げる。


釘宮 元「確かに、勝負には勝たせてもらった。

だからルールに従って、区画はもらう。けどよ……この現場、俺は“統一”を目指してる。

そのためには、お前らの力が必要だ。戦力として、力を貸してくれねぇか。」


その言葉に、刷毛 塗男が前へ出る。

表情を歪め、グッと唇を噛みしめた。


刷毛 塗男「……負けた直後にそんなことを言われても、正直……悔しい。

でも、お前らが本気でこの現場を統一したいって言うんなら、俺たちも、職人として応えるべきかもしれねぇ。」


塗装戦隊の職人たちが顔を見合わせ、小さく頷き合う。


刷毛 塗男「だが一つ、確認しておきたいことがある。

あんたら、現場の全体がどうなってるか、知らねぇだろ?」


釘宮 大工「……ああ。俺たちはまだ、この“1階の入口”しか知らねぇ。

アジトにしてた場所も、ただの立体駐車場だった。

中の状況も、他の会社がどこにいるかもわからねぇんだ。」


その答えに、刷毛塗男は深く頷いた。そして、図面のコピーを手に立ち上がる。


刷毛 塗男「よし、教えてやるよ。これが現場の1階全体の区画図だ。

まず、X1〜X4・Y1〜Y4が、かつて俺たち塗装戦隊が押さえていた場所だった。

けど、もうそれは、お前らのもんだ。」


塗男は少し寂しげな笑みを浮かべたが、誤魔化すように図面の先を指した。


刷毛 塗男「でな、X4〜X8・Y4〜Y8までの区画を占拠してるのが――株式会社 小手屋左官店だ。

代表は小手屋こてや まなぶ

俺ら塗装戦隊と小手屋左官店は、協力しながら“ある勢力”に対抗してた。」


棟上 鑿「ある勢力……?」


刷毛 塗藤「……“足場技研”だ。」


塗装戦隊の職人たちは、その名を呟いた瞬間、表情が重くなった。


刷毛 塗男「あいつらは、残りの1階全域の覇者。

つまり実質今の1階のボスだ。

そして、トップに立ってるのが、職長の足鳶あしとび 組也くみや。」


その名に、釘宮元の表情が険しくなる。


刷毛 塗男「奴は冷酷だ。区画を奪った会社を、完全に“支配下”に置く。

負ければ最後、実態は完全に奴隷そのもの。

作業員は人間扱いされず、時には――自分の命を絶つ者も出た。」


掛矢「ふざけた話だな……!」


刷毛塗藤が続けて口を開く。


刷毛 塗藤「だから俺たちは、小手屋左官店と協力して、なんとか“拮抗状態”を保ってたんだ。

だけど……今回、俺たちが負けたことで、その均衡が崩れる。

今頃、小手屋左官店がどうなってるか……心配だ。」


空気が重く沈む中で、釘宮 元が口を開く。


釘宮 元「なら、俺たちも小手屋左官店に協力する。

そして――足場技研の職長、足鳶 組也を倒す。

1階を俺たちで取り戻すんだ。」


その決意の言葉に、塗装戦隊の職人たちは目を見開き、次第に表情が変わっていく。

不安から、信頼へ。


しかし、元と鑿の傷はまだ癒えていない。


釘宮 大工「親父、鑿さん……二人は今、無理はできねぇよ。

だからさ、俺と、掛矢と――塗男さんの三人で、一度小手屋左官店の様子を見てくるよ。」


釘宮 元「……!」


釘宮 大工「小手屋が無事なら、塗装戦隊が負けたことも話して、協力の話をしてくる。

もし無事じゃなくても、必ず一度帰ってくる。体制を整えて、戦う準備をする。

だから、ちょっと任せてくれないか。」


しばらく沈黙が続いたが――


釘宮 元「……ああ。行ってこい、大工。

お前に任せる。――これはもう、俺の現場じゃねぇ。

“お前の現場”だ。」


棟上 鑿「気をつけて行けよ、大工。掛矢、塗男、頼んだぜ。」


塗男も力強く頷き、掛矢が肩を回してニヤリと笑う。


金槌 掛矢「へっ、俺たちで十分だろ?」


そして――


釘宮 大工、金槌 掛矢、刷毛 塗男の三人は、新たな同盟の旗を背負い、再び現場の奥へと進んでいった。


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