第31話 初めての…
「救命啊!(助けて!) 来人哪!(誰かー!)」
僕は助けを呼びながら山林を駆けた。仕掛けられた草木に足を取られて転び、転んだ先は怪我をしない様にクッションになっていて、ここは後から合成で地面になるのだ。
僕は、初登場シーンの撮影でガチガチに緊張していたけど、撮影前に憧れの沈甜さんが変な踊りを踊って見せてくれて、僕の緊張を解こうとしてくれたのが嬉しかった。
ハリウッド映画にも出た事がある彼女は、33歳でまだ若手の部類だけど大女優と言っても良い。多くの中国人女優の中でも、彼女は間違いなく3本指に入る絶世の美女だが、中国国内での人気はイマイチだ。
ドラマは男性よりも女性の方が多く観ており、彼女の様に美し過ぎると嫉妬と反感を買うのだ。それでも男性からの人気によって、人気女優ベスト30位にはギリギリ入っている。
「こんなに性格が良いのに、皆んな見る目が無いよ」
扈マネージャーから渡されて初めて観た中国ドラマだからなのか、僕は彼女の演技と美しさに憧れて贔屓目だ。
彼女のデビューは歌手であり、信じられないほど歌が上手い。他の歌手達100人で繋ぐ歌を聴いた事があるけど、明らかに頭1つ抜けていた。
転んだ僕に倭寇が追い付いて、舌舐めずりしながら僕に襲いかかり、足を掴まれて広げ様とした。
「 住手!(止めて!)快点住手!(直ぐ止めて!)、我求求你!(お願い!)」
僕の足の間に身体を入れて犯そうとしている倭寇は、突然背中に匕首を受けて倒れた。匕首は日本では短刀の事だけど、中国の匕首は暗器なので、ナイフ状の手裏剣と言った感じだ。
「是誰?(誰だ?)」
それに答えず、高翔さんが演じる男主人公・雷飛が、問答無用で倭寇を斬り倒した。
彼と共にしていた沈甜さんが演じる女主人公・雪玲玉が、僕を優しく抱き起こしてくれた。
「謝謝你(有難う)…」
撮影は順調に進んでいる。スタッフの人達も僕に優しい。日本人は中国人に嫌われているので、冷たい態度を取られるんじゃないかと心配していたけど、彼らは自分達が仲間と認めた人間は全力で守る民族性だ。
僕は仲間として受け入れられたのが嬉しくて、ついつい涙もろくなると笑って和ませてくれた。
「 我們一起去玩吧(一緒に遊びに行こう)」
「是(はい)」
何を言われたのか理解出来なかったけど、高翔さんから何か言われたので、「はい」と答えた。
撮影が終わって帰ろうとすると、高翔さんに呼び止められて彼の車に乗った。扈マネージャーが一緒に乗り込もうとしたので、高翔さんは何か話をして2人だけになった。
スマホの翻訳アプリには、一緒に食事に行った後、送ってくれる事になったと表示されていた。何で2人で食事なのかと尋ねると、僕が彼の誘いにOKを出したと言うので、あの時話し掛けられて何か分からないけど「是(はい)」と答えた件かと理解した。
ドライブがてら到着して、案内されたお店は個室だった。基本的に芸能人は、日本でも中国でも個室があるお店を選ぶ。運ばれて来た料理は、「火鍋」だった。
「わぁ!中国ドラマでよく見る火鍋だ。1度食べてみたかったんだよね」
正確には火鍋 涮羊肉と呼ばれる内モンゴル発祥の北京料理で、火鍋で良く知られる麻辣火鍋の様な唐辛子や山椒をベースとした辛いスープでは無く、辛く無い白スープである。
ちなみに火鍋 涮羊肉は京都に伝わって、「しゃぶしゃぶ」の起源だとも言われている。
スープは骨スープだが豚骨では無く、山羊や羊の骨を使っている。肉は羊肉だけでなく牛肉、鶏肉もあり、白菜、ホウレン草、一口サイズの餃子にうどんを入れて食べる。
それにタレは醤油、黄酒、酢、ラー油、ゴマ、クルミ、香菜、すりおろした醤豆腐(発酵させた豆腐)を水で伸ばした物が用意され、それを自分好みに混ぜてタレを作るのだ。
「 好吃吗?(美味しいですか?)」
「 好吃!(美味しいです!)」
僕が美味しそうに食べるので、高翔さんも満足そうに笑った。食事に誘った女の子が、口に合わなさそうに食べるか、美味しそうに食べるかは気になる所だろう。
鍋物を食べて身体が火照って汗をかいたので、涼みに行こうとジェスチャーを交えて誘われたので頷いてついて行った。
再び車に乗り込んで、窓を開けると風が涼しくて気持ち良かった。しばらく車を走らせ、小高い丘に来て停車した。車を降りて手を繋いで歩くと、上海の街並みが一望に出来る場所で、ネオンの灯りが綺麗だった。
「我喜歡你(好きだ)」
「?」
僕は高翔さんに肩を抱き寄せられると、口付けをされた。この場所でキスシーンの練習かな?と思い、彼の背に手を回して受け入れた。
軽いキスを10回以上された後、僕はうっとりした目で彼と目を合わせた。再び抱き寄せられると舌を入れられたので、僕も舌を絡ませた。体感的に10分くらいそうしていたけど、実際はもっと短い時間だったかも知れない。
口付けをしていると、彼の手が胸に伸びて触られた。春美の様に大きくない僕の胸なんて触って楽しいのかと思いながら、好きに触らせた。服を捲り上げて直接触ろうとされたので、流石にそれはと思って嫌がる素振りをしたけど、キスされて強引に触られた。
「あんっ!」
敏感な突起部分を弄られて、思わず声を上げてしまった。彼は意地悪くそこを責め続けたので、僕は腰が砕けて座った。
すると彼は僕を押し倒す格好になり、今度はスカートの中に手を入れて来たので、「もう終わり、もう終わりよ!」と言って抵抗した。
「我愛你(愛してる)」
さすがに今度は、何を言われたのか理解した。
「真的吗?(本当に?)」
思わず聞き返した。彼はそれを口付けで答えた。彼の指が下着の中の性器に触れると、グチョグチョに濡れているのが恥ずかしかった。
何度も口付けをされ、いつの間にかに服を脱がされていて、胸を吸われながら性器に指を入れられると気持ち良くてイってしまった。
彼は多分、自分も気持ち良くして欲しいと言ったのか、そそり勃ったモノを取り出して口に添えられた。僕は躊躇う事なく、口に含んで奉仕してあげた。
口淫するのは彼で5人目だ。まだ14歳なのに、いくら芸能人とはいえ一般人から見たら十分僕もビッチの類いなのかな?と思った。
下着を足首まで下ろされて、足の指から性器まで時間をかけて舐められた。中国人は足フェチが多く、特に足の指を念入りに舐められた。
「そんな所、汚いよ…」
足の匂いも気になって恥ずかしかったけど、こんなイケメンが僕に夢中で足に頬ずりしたり、匂いを嗅いだりして恍惚の表情を見せていた。
ひとしきり堪能された後、そそり勃つソレを僕の秘部に当てて、腰に力を入れて挿入した。
「痛っ!」
挿入った…、挿入れられた…。
僕は誰にも許さず、16歳まで守るはずの処女をアッサリと奪われた。初めてがこんな外でなんて、真夜中とは言え誰かに見られでもしたら、せめてホテルにとか頭によぎったけど、痛くて何も考えられなくなった。
彼はキツそうにしていたけど、何度も出し入れを繰り返して深く、奥へ挿入って来た。
「うぅぅ…」
噂には聞いていたけど、本当に痛い。身体が引き裂かれそうな痛みだ。だけど、彼は僕の敏感な部分を指で弄ると、その痛みは少し和らいで来た。
僕が痛そうにしていると、身体を重ねてゆっくりと動いてくれて、口付けをしながら腰を動かしていた。やがて我慢出来なくなったのかその動きは早くなり、僕も何とも言えない気持ち良さが込み上げて来た。
痛気持ちいいと言う訳の分からない快感で、彼に身を委ねていると、お腹の中に熱いものを感じた。その瞬間に、膣内に出されたと悟った。
「不、 不要射進我的陰道裡(だ、ダメだよ膣内に出しちゃ)!」
行為が終わって抜かれると、芝生が血で染まっていた。彼はウェットティッシュで自分のモノを拭いて直し、僕にもティッシュを渡した。
「痛いっ…」
異物がまだ挿入っている感じがして、更には痛くてまともに歩けなかった。
高翔さんが僕を支えてくれて、車に乗って泊まっているホテルまで送ってくれた。車に乗っている間、僕達は気まずくて無言だった。僕はHしちゃった事で、頭の中が真っ白になっていた。
(どうしよう。誰にも言えないし、きっと僕は遊ばれたんだ。雰囲気的に2人ともムラムラしてたし、こんな子供の僕にも欲情してしまって、彼はきっと後悔しているに違いない)
僕はそう思い、今夜の出来事を彼に触れる事が出来なかった。大切にして来た処女だったのに、付き合ってもいない人に捧げてしまった。将来、僕は彼氏や結婚した時に、今夜の事を後悔するに違いない。
それでも彼の様な優しいイケメンだった事が、唯一の救いだったかも知れない。そう思う事にした。
すでに深夜1時を回り、扈マネージャーは心配して、遅く帰って来た事を怒られた。僕は迷ったけど、彼女には今夜の事を話して相談してみた。
「貴女はどう思っているの?」
「僕?僕は…弄ばれたんなら嫌だなと思ってる。少しでも本気なら、良かったと思えるよ」
「そう…。我喜歡你てね、好きだと告白されたのよ。日本人の男と違って、中国人の男は簡単には口にしないわ。多分…本気ね。念の為に明日、私が問いただしてあげるわ」
「本気?本当に本気で僕の事が好きなの?」
「ええ、だって貴女は、彼の告白に対して口付けを受け入れて、その後の行為まで受け入れたのよね?彼は貴女とは、もう付き合っていると認識しているわよ?」
「ぼ、僕達…もう付き合っているの?」
そうなんだ。そう思うと、喜びで顔が綻んで来た。性欲を満たす為に、弄ばれたのかと思って心配していたので安堵した。
「えへへ、僕に彼氏が(出来た)。それもあんなイケメンが…。えへへ…」
終始ニヤニヤしていた。扈マネージャーは、僕が幸せそうな姿を見て、「明日も早いんだから早く寝なさい」と言って部屋を出て行った。