表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女の子になった僕  作者: 奈津輝としか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/31

第25話 戻った記憶と山根Pの死

 迎えの運転手は(フー)マネージャーから、こっ(ぴど)く叱られて、(しお)れた茄子(ナス)みたいになっていた。


「何だか可哀想ね。(しお)れた茄子(ナス)みたいじゃん」


「プッ、言い得て妙よね」


 僕が言うと、春美(はるみ)が笑った。人の容姿を笑い物にするなんて最低だと自分でも思いながら、他に形容し(がた)い姿だった。


瑞稀(みずき)って、時々毒舌だよね」


「悪気が無いから憎めないんだけどね?」


 春美(はるみ)がフォローしてくれたけど、僕は失礼な事を言ってしまって申し訳なさそうな顔をした。言葉が通じないので、運転手さんは僕達を見てニコニコしていた。それがまた罪悪感を感じて、心が痛んだ。

 迎えに来た車は、ロールスロイス・リムジンで8人乗りだ。僕達は、それぞれにマネージャーが付いているから6人いるけど、座席の間隔も広くてゆったりと座れた。

 中は高級感あるシートで、内装は…イメージするキャバクラみたいだ。僕のマネージャー以外は男性で、後部座席の真ん中が僕で、その右側に(フー)マネージャー、左側に佐伯マネージャー(春美(はるみ)のマネージャー)、その対面が春美(はるみ)で僕の対面に笹山マネージャー(美春(みはる)の3人目のマネージャーで現彼氏)で、(フー)マネージャーの対面に美春(みはる)が座っている。

 だからキャバクラと言うよりも、ホストクラブにいるみたいでドキドキする。こんなに近くに男性がいるのなんて、どのくらい振りだろうか?


(どのくらい振りって、僕…男の人…)


 脳裏に男性のシルエットが浮かんだ。僕はその男性に身体を触られ、キスをされて身体中を舐められているシーンが浮かんだ。僕は嫌がっている素振りは見せず、口淫さえしていた。


「あっ、うっ!な、何コレ…」


「どうした!?大丈夫、瑞稀(みずき)ちゃん!」


 隣りに座る佐伯マネージャーが僕を心配して肩を抱き、身体を抱きかかえる様な感じになった。


「キャア!止めて!触らないで!嫌アァァ」


 その後の事は覚えていない。気を失った僕は、病院のベッドで目を覚ました。


「はぁ、はぁ、はぁ…僕、僕は…」


 全て思い出した。山根P相手に枕営業をしていた全てを。挿入こそしなかったものの、それ以外の事はほぼ全て許した。

 彼に身体を好きにされている間は、全て撮影されていた。山根Pの元には、僕の無修正動画が残っている。世間に出てしまったら、僕は破滅する。


(フー)さん!(フー)さん!」


Mizuki(ミズキ)、良かった。大丈夫?どうしたの?」


(フー)さん…僕、思い出しちゃった。山根Pとの事…。何であんな事、しちゃったんだろう?あんなの万が一にも出たら、僕…生きていられないよ…死にたい…」


 (フー)マネージャーは優しく僕の肩を抱いて、耳元で尋ねた。


「まだ何かあるのね?私が力になるわ。全て話してごらんなさい。絶対に悪い様にはしないわ」


 (フー)さんの目に、闇が(とも)るのを僕は見逃していた。



 目覚めた僕を、美春(みはる)達が心配そうに駆け寄って来たので、僕は記憶が戻った事を話した。


菜月(なつき)ちゃんに合わせる顔が無いよ…」


 号泣する僕に、春美(はるみ)が声を掛けた。


「お兄ちゃんはね、瑞稀(みずき)と別れた事をずっと後悔しているの。瑞稀(みずき)が忘れられないって、毎日泣いているわ。…お兄ちゃんとヨリを戻せないかな?」


 僕は、()せ返る様にして泣いていたので、それに答える事は出来なかった。ヨリが戻せるなら戻したい。許してもらえるなら許して欲しい。

 僕は、山根P(あんなやつ)の事を好きでも何でも無く、平常心を保つ為に好きだと思い込んだだけなのだ。僕が好きなのは、僕が愛しているのは、菜月(なつき)ちゃんだけだ。


 僕が倒れなければ到着した今日、直ぐにでもリハの打ち合わせがあったのだけど、今日はゆっくりしても良いと言われた。

 代わりに美春(みはる)春美(はるみ)は、マネージャーを連れて打ち合わせに向かった。


是的(シーディ)(ええ)、請盡快安排チンジンクァィアンパイ(至急手配して)。然後我們(ランホウウォメン)會讓它看起來フゥイランターカンチーライ像是一場意外シィァンシーイーチャンイーワィ(それから事故に見せ掛けるのよ)」


 (フー)マネージャーが何処かに電話していたけど、中国語で話していたので理解出来なかった。

 後日、(フー)マネージャーから僕の無修正動画が入ったUSBメモリとSDカード、さらにBDディスクを数十枚渡された。


「これで全てよ。コレが世に出る事は無いから安心して。悪夢だったと思って全て忘れるのよ?」


「有難う御座います。有難う御座います…」


 僕は、無修正動画のメディアを抱き締めながら泣いてお礼を言った。その数日後、山根Pが事故で亡くなった事をネットニュースで知った。

 死因は、飲酒運転で酔って防波堤を乗り越え、海に落水して溺死したとの事だった。僕は思わず振り返って(フー)マネージャーの顔を見ると、微笑んで答えたのでゾッとした。


(まさか…(フー)マネージャーが、事故に見せ掛けて殺したの?)


 僕は(フー)マネージャーに、薄ら恐怖を感じる様になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ