第19話 病んでる僕
年明けからもスケジュールが詰まって忙しくし、共演者達から連絡先をこっそり渡されたり食事の誘いを受けたけど、やんわりとお断りした。
そう言えば、春美に彼氏が出来たのだ。相手は3つ上の俳優さんなので高1だ。今は2月の下旬なので、もうすぐ僕達は中学2年生になる。思い起こせば、濃密な1年を過ごしたものだ。
SweetStarsが発足して直ぐにオリコンチャート1位になったが、美春達が事件に巻き込まれて半年近く謹慎処分を受けた。
僕はソロでグループを守って行こうとしたけど、人気は急落した。グループの存続を維持する為に、僕は覚悟を決めて業界を牛耳る三大巨頭の1人である山根Pに枕営業をした。それがバレて彼氏とも別れてしまったけど、美春達の謹慎が解けて再びSweetStarsに人気が戻った。
年末の紅白にも出場し、僕個人的には女優として「最優秀新人賞」「最優秀主演女優賞」「最優秀助演女優賞」と、史上初の三冠を達成した。僕の人気が息を吹き返したのは、山根Pのお陰なのは間違いない。
次の1年はどんな1年になるかと思いを馳せながらも、来月の上海公演に向けて打ち合わせと練習を行っている。
「頑張ってるね」
「はい、有難う御座います」
久しぶりに会った山根Pに微笑んで挨拶をした。彼が手掛ける番組に、僕達SweetStarsがゲスト出演するので、偶然出会ったのだ。
「今のが山根Pよね、瑞稀。嘘でしょう?あんなオッサンとヤったの?」
「ちょっと待ってよ、Hはしてないんだからね。でも…しても良かったかな…」
「はぁ?何言っちゃってるの、あんた!?」
「あー見えて優しいんだよ。僕、プロポーズされちゃったんだ。実は、ちょっと好き…って言うか、かなり好きかな…LOVE寄りで。誰にも言わないでよね?」
美春と春美は呆気に取られた。どう見ても自分の父親世代だ。瑞稀がファザコンなんて聞いた事が無い。しかも相手は、枕をしていた相手だ。そんな相手に愛情なんて湧くのだろうか?心配になった彼女達は、瑞稀のマネージャーに相談した。
「…マズいわね」
扈マネージャーは考え込む仕草をして、美春達の話を聞くと険しい表情になった。
「やっぱり、洗脳とかされてるんですかね?」
「洗脳?まぁ、近い様で少し違うわね」
「瑞稀は大丈夫なんですか?」
春美は心配そうに聞いた。彼女が最近まで彼氏を作ろうとしなかったのは、実は瑞稀の事が忘れられなかったからだ。
自分は女性になったのに、同じ女性になった瑞稀の事が好きだなんて、自分はおかしいのだろうかと思い悩んだ。瑞稀を忘れる為に彼氏を作った事は、誰にも言えない秘密だ。
「ストックホルム症候群って知ってる?」
「ストック…、何ですか?」
「私、知ってるわ。刑事ドラマで見た事がある。監禁されて人質にされた被害者が、極度のストレスから逃れる為に、今の置かれた環境は自分から望んで愛する人といる、と思う事によって精神安定を図って、加害者に対して愛情を持つ様になるのよね?」
「良く知ってるわね、流石ね。恐らくMizukiの精神状態も同じ状況になったはずよ。枕営業が彼氏の翔馬くんにバレて、別れたのよね?挿入はさせてないと聞いたけど、枕でさせていた事は彼氏と大差無いわよね。別れた原因は自分にあると、自分を責めた。そして少しずつ心が壊れて行ったはずよ。彼氏と別れても通い続け、週5日も一緒にいれば、傍目から見ても付き合っているのかと思うわよね?Mizukiは、こんなオジさん相手に自分の身体を好き勝手にさせている。好きでも無ければこんな真似は出来ないと、自分に言い聞かせ続けたのよ。一種の自己催眠術ね。自分の心が粉々に砕け散るのを防ぐ為に、山根Pの事を好きだと思い込む事で自分を守っているのよ」
「そんなの、悲し過ぎる…」
「瑞稀、瑞稀は私達の為に…」
美春と春美は、嗚咽してむせ返りながら号泣した。扈マネージャーも、一緒になって泣いた。
「治療出来ないの?」
「直ぐには無理ね。長い時間をかけて、心理療法のカウンセリングとトラウマ治療が必要になるわ。ストックホルム症候群は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)になりやすいのよ」
「いっその事、本当に山根Pと付き合ったら治ったりするのかな?」
「絶対に有り得ないわ!Mizukiがもっと深く傷付くだけ。冗談でも言わないで!彼とは、2度と合わせてはいけないわ」
「分かったわ。2度と合わせない様に努力する」
扈マネージャーは、社長に報告すると言って席を立った。
美春達がスタジオに戻ると、袖(端っこの方)で楽しそうに山根Pと会話をしていた。
春美はカッとなって怒りが抑え切れずに、山根Pにビンタを喰らわした。
「瑞稀を、私の瑞稀をこれ以上、傷付けさせないわ!」
キッと山根Pを睨み付けた。
「おっほぉ。酷いな、暴力は止めなよ。君は…Mizukiちゃんの事が好きなんだね?」
「なっ…!」
春美は言い当てられて、耳まで顔を真っ赤にすると、両手で顔を隠して「嫌だ、恥ずかしい」と言い、走って逃げた。
「瑞稀、もう行くよ」
美春が間に入って瑞稀を連れ出そうとすると、瑞稀に振り解かれた。
「ごめんなさい、うちの春美が、許して下さい」
瑞稀は、山根Pの頬に赤く染まった手形をハンカチで押さえて、心配そうに言った。
「大丈夫だよ、Mizukiちゃんが心配してくれるから、痛みが飛んで行ったよ」
山根Pに抱き締められて、嬉しそうにニコニコ笑っている瑞稀を見て、本当にこれが思い込みなのかと思い、茫然とした。どう見ても、愛する男に抱き締められて喜んでいる彼女の姿にしか見えない。
「瑞稀、違うのよ。それは愛なんかじゃない!」
美春が泣きながら叫んだので、他のスタッフ達が何事かと注目したので、山根Pは愛想笑いをしながら立ち去った。
「何なの?邪魔しないでよ!せっかくやっと会えたのに、行っちゃったじゃない。僕、彼の事が好きだって言ったよね?あれは邪魔しないでねって言う意味だよ」
瑞稀が怒って、山根Pの後を追いかけ様としたので「行かないで、お願い」と泣いて抱き付くと、瑞稀は追い掛けるのを諦めた。
「美春、僕、美春の事も好きなのに、恋路の邪魔なんかされたら嫌いになっちゃうよ?」
「違うの、瑞稀は病気なの!」
「失礼だなぁ。僕のどこが病気なのさ!?」
仕事が終わると社長室に呼び出され、またか?と思ってイライラした。社長室に行くと、社長秘書の小百合さんと扈マネージャー、それから美春と春美も同席した。
「えっと、何でしょうか?」
僕は、自分がストックホルム症候群を発症している恐れがあると言われて、心療内科に通わされる事となった。正直、不本意だ。僕は至って正常だ。
僕は山根Pを愛してる。この気持ちに偽りは無い。僕が18歳だったなら、直ぐにでもプロポーズを受けるくらい好きだ。
それなのに皆んなで寄ってたかって、その感情は違うんだ、お前は精神病なんだと言って責め立てて来るのだ。そんな訳ないでしょう?本当にイライラする。
ストックホルム症候群の厄介な所は、本人の自覚が無い事だ。この症状を発症した者は、自分を人質にして監禁した銀行強盗に親近感を持ち、裁判で擁護する発言をした記録が残っている。
「大変よ!瑞稀、瑞稀が何処にもいないのよ」
「まさかと思うけど、山根Pの所へ?」
美春達は扈マネージャーに連絡し、山根Pのマンションへと向かった。
ピンポーン!
「はい」
「えへへ、来ちゃった」
「待って、直ぐ開けるから」
部屋に招き入れられると抱き締められた。
「Mizukiちゃん、会いたかった。どうしてここに?」
「僕もずっと会いたかったの。大好きです」
山根Pはその言葉を聞いて、口付けをしながら胸を揉みしだいた。それから、お姫様抱っこをしてベッドに下ろし、夢中で胸にしゃぶりついた。
「待って、僕まだシャワーを浴びて無いから」
「良いよ。このままMizukiちゃんを味わいたいんだ」
「もう、僕はご飯じゃないよ!」
夢中で瑞稀の身体を貪り続け、口淫させて素股で射精した。
「…まだまだ大丈夫でしょう?今日は…最後までしよう」
「最後まで…って、良いの?」
僕が頷くと大喜びをした。
「Mizuki、愛してる。一生大切にするよ。俺の大切な宝物だ」
瑞稀の上に身体を重ねて、舌を絡め合った。




