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ロイドとの出会い、リアーナの嫉妬

週末、まだ私達は幼いので付き人をつけて貰い、リアーナと街へ向かった。


リアーナとカフェで紅茶とケーキを頼んで、穏やかな時間を過ごしていた。


「おい、無能の聖女だぞ」


そんな小さな声が、カフェの客から聞こえた。


リアーナが俯き、顔を隠す。


私はそんなリアーナの手を握り、話しかけた。


「リアーナ、私はどんなリアーナでも大好きよ。顔を上げて」


私はリアーナの陰口を言った客を軽く睨んだ。


「私の妹の悪口を言うということは我がフィオール家を敵に回すをいうことですわ。それが分かってらして?」


リアーナの陰口を言った客は、怯えた様子ですぐにカフェを出て行った。



すると、帽子を目深く被った少年と正装の男性が私達に近づいてくる。



正装の男性は私達に深く礼をした後、周りに聞こえない様にこう述べた。


「フィオール家長女のティアナ様、次女のリアーナ様ですね。少し離れた場所に馬車が停めてあります。その馬車にいらして下さいますよう」


怪しい誘いに怪訝な顔を向けると、男性は王家の紋章が入ったブローチをそっと私に見せた。


王家の紋章を持つ者の誘いを断ることなど出来るはずがない。


私とリアーナは、指定された馬車に向かった。


馬車には、先程男性と一緒にいた少年が座っていた。


少年が被っていた帽子を外し、正装の男性に渡す。


「格好良い・・・」


リアーナは少年に見惚れているようだった。


私はリアーナの目線の先の少年の顔に目を向けた。


「ロイド様!?」


私はついそう口走ってしまった。


少年は、私の言葉を聞いて微笑んだ。


「ティアナ嬢とは初めて会ったはずだけど、どうして私のことを知っているんだ?」


「あ、いえ・・・」


「私の見た目を誰かから聞いたのか?」


もう、ここでは嘘をつくしかないだろう。


「お父様が教えて下さって・・・」


「そう。まぁ今はそういうことにしとこうか・・・それよりもさっきのティアナ嬢はとても格好良かった」


「有難う御座います・・・」


「しかし貴族たるもの、聞き流すことも必要だろう?」


ロイド様が優しくそう述べながら、私をさとした。




微笑みながら。




「お姉様!?」


ティアナが驚いた顔で私を見つめている。


「どうしたの?リアーナ」


「だってお姉様、泣いていらっしゃるから・・・」


「え・・・?」


自分の頬に涙が伝わるのを感じる。


「ティアナ嬢?」


ロイド様も心配そうな顔で私を見つめる。


「も、申し訳御座いません・・・」


ロイド様に微笑まれたのはいつぶりだろう?


ずっと、その顔を向け続けて欲しかっただけ。


妹のものになってしまったその笑顔に、どれほど憧れを抱いたことか。


まだ少年といえど、大人びているロイド様に私は前回のロイド様を重ねてしまった。


「違うんです・・・これは・・・」


ロイド様が真剣な顔つきに変わる。


「リアーナ嬢、すまないが席を外してもらえないか。外に私の従者がいる。先程、カフェで話しかけた男だ。事情を話して何処かで休んでいて欲しい」


リアーナは少し複雑な顔をした後、殿下に礼をして馬車を後にした。


ロイド様が私の目に溜まった涙をそっとハンカチで拭う。


「ティアナ嬢、君の秘密は分からない。しかし、君が私を見て泣いたことは確かだ。どうか、理由を教えて欲しい」


「それは・・・」


私の秘密など言えるわけがなかった。


「では、無理には聞くのはやめよう。誰しも秘密はあるものだから」


王族であるロイド様ならば、命令することも可能でいらっしゃるのに、そうなさらないのはロイド様の優しさだろう。


「涙が止まったら、妹君のところに戻ってやってくれ。それまではここにいればいい」


そう仰ったロイド様は、私の涙が止まるまで静かに隣に居て下さった。


そんなロイド様の不器用な優しさが昔から大好きだった。


涙が止まった私はロイド様に深く礼をして馬車を去ろうとしたが、ロイド様に呼び止められた。


「ティアナ嬢、また会いに行ってもいいか?」


大好きなロイド様からの誘い、前回の人生ならば絶対に断らないだろう。


しかし、貴方は妹と幸せになる人。そして、決して私を愛してはくれない人。



「フィオール家『一同』で歓迎いたしますわ」



精一杯の線引きに、ロイド様は気づいた様だった。



「ティアナ嬢、君が何を抱えているのかは分からないが、私は君に興味が沸いた。また、『君に』会いに行くよ」



私は、ロイド様を振り返らずに馬車を後にした。


「お姉様!」


馬車からしばらく離れたところで、リアーナは休んでいた。


「もう大丈夫ですの?」


「ええ、心配をかけて申し訳ないわ」


「殿下は・・・ロイド殿下とは、何を話したんですか・・・?」


リアーナが俯きながら、そう小さな声で問うた。


「大したことじゃないの。慰めて下さっただけ。・・・さぁ、もう帰りましょう?」


私は、我が家の馬車に向かって歩き出した。


リアーナは俯いたまま、何かを呟いた。




「ロイド殿下は、『聖女』の私よりお姉様がいいの・・・?お姉様、泣いて気を引くのはずるいですわ・・・」




「リアーナ?なにか言った?」


「いいえ、なんでもないですわ」


リアーナは、私の手を引いて馬車に走り出した。


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