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合同捜査に参加しちゃいました。とそれぞれの飲み会

警備兵→警邏隊に変更しています。

少し背後注意


  午後一の会議はたいてい睡魔との戦いだったが事件の内容が重かった為、ウトウトする事はなかった。

 警邏隊のタッカーと近衛隊のカッセル隊長が進行をしながらお互いの役割分担を決めていく。


近衛隊のチームにはウォルターもいた。

イヴは、目礼と軽く手をあげると微笑んでくれたが隣にイーサンがいたのですぐに表情を戻した。


あまりにもあからさまな対応だったのでイーサンも苦笑いしながら


「あの近衛は前にも会いましたね。仲がいいのですか?」


と話しかけられたので


「そうですね、二人で飲みに行くぐらいは仲がよいですよ」


と質問の内容にあまり興味がなかったのでそっけなく答えた。


イヴの回答が原因なのかイーサンは両手で頭を抱えだした。


「副隊長、大丈夫ですか?頭痛ですか?」


イヴは真面目に心配したが


「耳が出ないように意識してんだよ。イヴ、お前あんまイーサンを刺激しないでくれよ」


と近くにいたタッカーに揶揄られた。

イヴは可哀想な子を見る視線で


「副隊長、なんか、ガンバ」


とエールを送った。

イーサンはイヴを睨んだが、残念ながら眼鏡越しだったので威力は半分以下だった。


席の後ろから

「イヴ、イーサン副隊長と随分仲が良くなったのね」

とジーンに言われていたがイヴは聞こえないふりをした。


事件内容は、ここ最近何者かによる誘拐が頻繁に起こっているということだった。

一般人のみなら警邏隊単体で捜査するのだが、ついに貴族階級のご令嬢が誘拐未遂の被害にあったため、互いの上層部が話し合い合同捜査を行うという流れとなった。


令嬢周辺の聞き込みを近衛隊が、現場周辺を警邏隊がそれぞれ聞き込みを行う。


会議が終了したので解散となった。イーサンはタッカーとその場で打ち合わせに入ったのでイヴは先に警邏棟に戻ることにした。廊下をトボトボと歩いていると突然腕を掴まれ人気のない所に連れ出された。


イヴは抵抗もせずに腕を掴まれたまま大人しく連れていかれる。


「どうしたの?」


イヴは立ち止まった相手を見ると


「イヴちゃん、僕の話覚えてないの?」


少し不貞腐れた表情のウォルターがイヴを少し上から見つめていた。

イヴは壁に凭れウォルターの体に隠されるように覆われている。


ちょっと距離が近いな~。と思いながらもウォルターに負けずに下から見つめていた。


「えっと、どの話かな?」


あの夜の話は内容が濃くてどこの部分を言っているのか判断できなかった。


「アイツの過去の話だよ」


イヴは、あ~そっちね。と思いながら


「あの話を聞いた翌日寝込んじゃったわよ。」


さすがにウォルターに獣化風邪になったとは言いたくなかったので表現を変えた。

決して、子ども風邪とからかわれたくないとかじゃない。


その言葉に驚いたウォルターは


「えっ?そうなの体調はもう大丈夫?」


イヴを責める状態から労わる様に全身をみる。

その優しさに少し照れながら誤魔化すように咳ばらいを一つすると


「もう体調は戻ったから大丈夫だよ。」


イヴの言葉に安心したウォルターはホッと息をついた後


「今日は、こっちだから(王宮寄り)ヒト化してるんだね。やっぱりイヴちゃんはこっちの方が素敵だよ。」

とうっとりしながら頭を撫でる。

そして、もちろん獣人化のイヴちゃんも綺麗なんだけどね。と付け加える。


イヴはウォルターの胸をグイっと押し出すと


「はいはい、その気持ちはありがた~く受け取っときますよ」


と言いながらウォルターと壁の間から抜け出した。


「せっかくの合同捜査なんだからお互い頑張ろうね!」


と振り向きながらイヴはウォルターに伝えると人気のない廊下から抜け出した。


「あっ、隊長と副隊長」


打ち合わせが終わった二人が微妙な表情でイヴがその廊下から出てくるのを見ていた。

イヴは仕事をさぼっていると思われたと勘違いし


「すみません。すぐに隊長室に戻りますから」


と言いながら走って隊長室へ走っていった。

その後、イヴが出てきた同じ場所から()()()()()()()()()()()()を留めなおしながら出てくると


「失礼します。」

と二人にお辞儀をしながら警邏棟とは逆の近衛棟にウォルターは戻っていった。


イヴの匂いを胸元に残しながら


ウォルターの後ろ姿をジッとみているイーサンを見たタッカーは


あの子(ウォルター)は分かってないんじゃない?多分、人族だぞ?」


ウォルターの態度はタッカーとイーサンにイヴとさっきまで密接していましたよと言う意味にとらえてしまう。


「別に、私はイヴさんとあの近衛がどうであろうが気になりません」


と言いながら先に歩き出したイーサンだった。

その後ろ姿を見てタッカーは溜息を付きながら


「おいおい...。」


と呆れながらある一部を見つめていた。そして


(おまえ、しっぽ出てるからな)


とイーサンの背中に向けて声をかけた。

イーサンは振り向かずに両手でおしりを隠した。




イヴは隊長室に戻ると自分の席につき書類を作成し始めた。

事件の聞き込みは明日からだから今日は早めに切り上げて帰ろう。

とイヴは考えながら書類をさばいていく。


イヴは、書いていた手を止めて


「そういえば、ウォルターは一体何が言いたかったのかな?」


機嫌が悪いのはやっぱり上官命令のイーサンとのパートナーを解消していないことが原因なのかな?


「でも、ウォルターが心配する内容では無いと思うんだけど...。」


同期の中でも仲がいい方だとは思うが、だんだんグレッグよりの過保護派になっているような気がする。気を付けよう。


自分で納得したイヴはうんうん頷きながら書類作業を再び再開した。

しばらくすると、タッカーとイーサンが戻ってきた。


タッカーに明日の朝一番に警邏隊のチームで打ち合わせがあるからよろしくと言われた。


イヴは了解しましたと伝えると今日の仕事を終えた。

部屋を出るときにイーサンが何か言いたそうな表情をしたが声をかけられなかったのでそのまま帰宅することにした。


ドアを閉めた後イーサンがタッカーに「意気地なし」と言われていたがイヴは気づかなかった。



 イヴは定時に職場を出たがそのまま家に戻る気になれずに可愛い子(うさぎちゃん)に会いに行こうと前回のバルに足を運んだ。

昼の騒がしい雰囲気が消え、大人たちの喧噪に包まれている。

疲れを取るには素敵な場所だとイヴは思った。


 誰もいない小さめの席に着くと、別の子が注文を取りに来た。

一応病み上がりなのでアルコール度数が低い飲み物を注文した。

しばらくすると


「いらっしゃい」


イヴのお目当ての子が飲み物を持ってきてくれた。


「やあ。元気にしてた?」


イヴは自分の事は棚に上げて可愛い子に優しく声をかける。

その子は微笑みながら


「貴方が遊びに来てくれないからちょっと寂しくなったぐらいかな?」


「じゃあ今からその寂しかった気持ちを埋めさせて?」

イヴはそういうと近くにいたお店の子に可愛い子が飲む分も注文する。

お酒がくると


「お仕事は大丈夫?」

「うん。さっき注文を受けた子(お友達)がこの後のシフトを変わってくれるって」

「そっか、じゃあ早速乾杯しよっか?」

「うん」


イヴがグラスを上げようとした時


「そういえば、貴方は何ちゃんかな?」

「私はパティーよ。貴方は」

「私は、イヴ。それじゃあ素敵な再会に乾杯」

「乾杯」


二つのグラスがティンと音を鳴らした。


イヴは密着する為にわざと小さなテーブルを選んでいた。

そして、女性を口説く場合は好まれるようにシンプルなシャツにラインが綺麗に出るスラックスを履いている。自慢の艶やかな漆黒のしっぽも今日は恋に落ちる為のアイテムになる。


身長も女性よりは高く、遠目から見ると美青年にしかみえない。

そんな相手を隣に侍らすのは女性としては幸せに感じることだろう。


軽い恋ならばそれだけで十分だとイヴは考えていた。


イヴは改めてパティーを見つめる。相手には情熱的な視線だと思われているがイヴは容姿を確認していた。白くて柔らかそうな肌に、苺を食べ好きたの?と聞きたくなるほどの紅い瞳、化粧はそれほどまで濃くもなく、必要以上の香り(香水)もつけていない。獣人相手に余計な匂いは不要だということを理解している。前回はそっとかわいく丸いしっぽを手の甲に押し付けてくれた。


 今日は、このまま食べれそうかな?


イヴはそっとパティーの頬を撫でると、彼女も甘えるように擦りつけてくる。

その行動に満足げに微笑むイヴの瞳は「狩る側の目(表獣人)」になっていた。


お酒が二杯目になる頃には特にこれと言った会話もなくただ二人でお互いを触れるだけだった。パティーが二杯目を飲み終えると、イヴはそっと手をとって


「この後どうする?」


と耳元で囁いた。

パティーはくすぐったかったのか肩を少しすくめると


「イヴはどうしたい?」


と聞いてきたのでニコリと笑ってそのまま手を繋ぎバルを出た。

お会計は、パティーのお友達がしてくれたので少し多めにチップを渡すと「ありがと〜」と言いながら二人を見送ってくれた。

外に出るとイヴはパティーの腰に手を回し、そのままイヴのお気に入りの場所(ホテル)に連れていった。


 ※ ※ ※


「あれ?遠くに見えるのってイヴさんじゃないかな?」


イーサンは隣でほろ酔いのタッカーに声を掛ける。


「ん?ああ~。ありゃイヴだな。ん?隣にいる子はこの前俺たちが邪魔したうさぎちゃんじゃないの?」


タッカーは気にもせずに目を細めて確認する。

イーサンは呆然と立ち止まる。

タッカーはイーサンの背中をバシンと叩くと


「イヴも手を出すのが早いな~。昨日まで寝込んでたのにな」


タッカーはガハハと笑いながらイヴ達が先ほどまでいたバルに入ろうとするが、イーサンがその場から動こうとしない。


「おい、イーサン、まさかあの二人を追いかけるんじゃないよな?」

「……」

「駄目だからな。イヴもプライベートな時間だし。有事でもないんだから上官命令なんて出せないぞ」


イーサンは何かを我慢しているのだろうか、両手を握りしめていた。そんなイーサンを見たほろ酔い気分のタッカーが青ざめながらイーサンに声をかける


「とっ、とりあえず話を聞くから、飲みなおそう。今お前はイヴに対して何もできる立場じゃ無いのは分かっているよな?」


タッカーの言葉に納得したのかイーサンはそのままバルに入っていく。

タッカーは溜息を付きながらイーサンの後についていった。


二人でカウンターに座ると、エールとおつまみを注文した。

タッカーがちらりと横をみると、狼の耳を下げながら遠くを見ている幼馴染いる。


どうしたもんだかな…。


エールとおつまみがきたのでとりあえず乾杯をすると


「で?いつからイヴに惚れてんの?」


タッカーは呆れたように聞いてきた。

イーサンはエールをグビグビ飲むと

「そんな感情ではないはず」

と言い放つ。


タッカーは内心「何言ってんだコイツ?」と思ったが


「イヴと顔合わせしたのは確か3・4日前ぐらいだろ?おまけにその内数日は獣化風邪になってて職場に来ていないし。お前、惚れるタイミングなんてないんじゃない?」


タッカーの指摘にイーサンは何も答えずに、ポリポリと豆類をかじっている。


「まあ話せないならいいが、あまり職場に持ち出すなよ」


タッカーは諦めてエールを再び飲み始めた。

すると、隣で豆をかじる音が止まる。


「俺とパートナーを組むのがやっぱり嫌になって出勤拒否しているのかと思った」


ぽつりと呟くように話し始めたイーサンをタッカーは何も言わずに聞いている。


「だから、自宅に言って本人の意思を確認しに行ったんだ」


おいおい、部下の住所勝手に調べて行くなよ…。

タッカーはツッコみたかったが取り敢えず最後まで話を聞くことにする。


「すると、部屋の中から男が出てきた。」


「ああ、イヴのお兄さんだろ?結構有名だもんな。」


イーサンはタッカーを見ると「そうなのか?」と聞いてきたが、「まあ、皆色々訳アリだよ」とだけ答えた。


「そして、その男はイヴさんに合わせるのを拒否したんだ。だからつい…」


「だからつい?」タッカーも思わず復唱した。


「号令のようにイヴさんを呼び出してしまった…。」


タッカーは「あ~、上官からされると無意識に飛び出してまで前に出てしまうやつね」

と思いながらエールを飲んでいると


「えっ?ちょっと待てよ。イヴって獣化風邪じゃなかったか?」


イーサンは、エールのジョッキを下ろして顔を隠しながら


「ああ、綺麗な黒豹の姿で俺の前に現れたよ…。」


勘弁してくれよ…。タッカーの感想はその一言だった。

その思いを飲み込むためにエールを飲んだ。

「嫁入り前の女性になんて事をさせるんだよ。そりゃ兄が激怒しただろ?」


タッカーは呆れながらイーサンに尋ねる。


「いいや、その時は完全にヒト化していたからイヴさんの兄上には『獣人だったら責任を取ってもらうところでしたよ』で済まされえたよ」


「で、その姿に見惚れて今に至るか…。はぁ~。どうすんだよ、相手はイヴだぞ」


「俺もどうしていいのか分からん。いや、まだ何も始まっていないしこのまま終わると思う」


「獣人化しておいてよくそんな事が言えるよ」


目元が赤いままエールを飲むイーサン。小さく溜息をつくと


「次に最愛を作ってまたその関係が壊れるなんて事が起きたら、多分俺は本当に駄目になると思う」


そう言いながらイーサンはタッカーを見ると


「だから、この気持ちは無かったことにしたいんだ。」


「もう嫌なんだよ。あんな思いをするのは…。」


イーサンはカウンターに肘をつき顔を隠すとしばらく固まってしまった。

タッカーは優しく肩を叩く。


「まあ、イヴを付けたのは俺だしフォローはするから。あんまり気を詰めるなよ」


そう言うとイーサンは小さく頷いた。

パティー 可愛いウエイトレス ウサギの獣人


最後までお読みいただきありがとうございました。

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