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昇る華

作者: 有未

さびしさから根が生えたように いま此処から動けない

何処までも行けるような気がしていたのに

あの思いはまぼろしだったのか

斜めに降っている雨粒が 網戸の網目に飛び込んでは消えて行く

まるでネクローシスのように


火葬場の煙のように 紫煙が昇って消えて行く

誰かを思って泣くことが こんなにもさびしいことだったなんて

此処から私はまだ動けない

何処までも行けるような気がしていたのに

大切とも気が付いていなかった大切なものを

不意に失って何処にも行けない


声が聞こえる気がしてしまう

まだ内耳の奥に残響する 海鳥のような声がする

此処ではない居場所へと

誰かに(いざな)われているように


暗い海の底を覗き込むようにして

夜空に光る星を探している


(はね)など はじめから無かった

ただひたすらにもがいていただけだった

それでも確かに幸福だった

何処までも行けるような気がしていたから

本当は何処にも行けなかったとしても


雨が降り続ける

細胞が生まれ変わり続ける

暗い夜の底から 私の海へと生命の粒が降る

涙が落ちて行く


何処にも行けない

それでも何処かへ

明日は来ない

それでも明日へ

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