魔族デビルモン①
「アティシア様、何処に向かわれるのですか」
「特に目的地は無いわ。息抜きに王都を散策するだけよ」
王宮は息が詰まるから、息抜きをしたくなったので、王都を散策しようと思った。
「聖女アティシア、死ね」
散策中に魔族の襲撃を受けた。
おそらく魅惑の種事件の黒幕の魔族だろう。
「アティシア様、危ない」
アティシアは死を覚悟したが、マンプクが私と魔族の間に割り込んだ。
そして魔族の爪がマンプクの腹を切り裂いて、鮮血が飛び散った。
「マンプク子爵令嬢・・・・」
「この馬鹿女、よくも邪魔をしやがったな」
「おい、怪我人が居るぞ」
「酷い怪我だな」
「かなり出血している」
「こりゃ、致命傷だな」
「ちぃ、野次馬が集まって来やがったぜ。仕方ねえ、引き上げるか」
異変に気付いた住民が集まって来たので、魔族は翼を拡げて、飛去っていった。
「マンプク子爵令嬢、大丈夫ですか」
「心配させて、申し訳ありません。私は大丈夫です。それよりもアティシア様こそ大丈夫ですか。怪我はありませんか。痛い所はありますか」
しかしマンプクは平然としていて、とても致命傷の怪我人とは思えないし、本当に元気そうだった。
どう見ても致命傷の筈だが、傷が瞬時に回復していた。
「・・・・」
これが身体強化症候群という体質の効果なのか。
あり得ない現象にアティシアは呆然とするしかなかった。
「今の魔族だよな」
「必死になって飛び去ったよな」
「あの血塗れの令嬢が撃退したのか」
その現場を目撃した住民が噂を広めて、マンプクは『魔族を撃退した不死身令嬢』という二つ名を付けられてしまった。
しかも王都中に噂が流れて、全ての住民がマンプクに恐れを抱いたようだ。
「女性近衛騎士の精鋭をアティシアの護衛に付けなさい」
「近衛騎士団所属のガードリンです。王妃様よりアティシア様の護衛を拝命しました」
「同じくガードナーです。ガードリンと交代しながら、常時アティシア様を護衛致します」
王妃の命令により、女性近衛騎士のガードリンとガードナーがアティシアの護衛に付くようになった。
マンプクを含めて護衛が三人になってしまった。
余計に息が詰まるようになってしまった。
独りになれる貴重な自由時間が激減してしまった。
私の自由は何処に行った。
私の自由を返せ。
魔族のバカ~、スケベ、チカン、ヘンタイ、ストーカー。
アティシアは心の中でデビルモンを罵倒した。
畜生、聖女アティシアを殺害する絶好の機会だったのによ。
邪魔者のせいで聖女アティシアの襲撃に失敗してしまったぜ。
その為に護衛が二人も増えやがった。
おかげで殺害が難しくなったぜ。
暗殺者でも雇って、殺害させるか。
いや駄目だ。
王妃ナヤミナと聖女アティシアは俺自身で殺害しないと、怒りが収まらねえ。
犯罪者でも雇って、聖女アティシアと護衛を引き離させるか。
デビルモンは嬉々として、色々な策謀を企てた。
「断る」
「嫌だ」
「拒否する」
「一昨日来やがれ」
「『魔族を撃退した不死身令嬢』を敵に出来るか」
犯罪者を雇おうとしたが、全員から断られてしまった。
どうやらマンプクは魔族よりも恐れられているみたいだ。
「・・・・そんな馬鹿な。人族が魔族よりも恐れられているなんて、あり得ない、決してあり得ない、絶対にあり得ない」
デビルモンの企ては早くも頓挫してしまった。
魔族の誇りがズタズタに引き裂かれて、デビルモンは物凄く落ち込んだ。