46.ちやほやされたい延長戦
現れたのは黒い甲冑に身を包んだ騎士のようなモンスターだった。
黒鉛の騎士グラーファ 古の時代の騎士。その騎士は今も戦場跡の草原を彷徨う、君主の為、眼前の敵を滅ぼす為。
HP2800/MP800
「なんか名前付いてるし……HPありえないくらい高いんだけど……。」
勝て……るのか?
「名持ち(ネームド)……だったっけ?最後に随分なのが出てきたわね。」
へーそう呼ばれてるのね……カッコいいかも。
「ありえないです……ありえないです!バ、バグかなんかじゃないんですか!」
委員長は早く落ち着いてくれ。
「……多分だけどミィの装備してるラッキーアームレット……だっけ?それで上がってるLuck値の影響かもしれないね。」
……マジ?
「あー……私のせい……なのかな?もしそうならごめんね。」
「本来ならレアドロップとか狙えるから悪いことじゃないんだけど……ただ状況がね。」
3人じゃ厳しいもんね。
「なんとかして勝てないかな。6時間のデスペナは痛いし。」
全ステータス20%ダウンのペナルティは生産もしづらくなるし正直避けたいところ。
「意外とヤル気なのね。てっきり諦めてるもんかと思ったわ。」
アリナの目が意外そうに見開かれる。
「私だけなら諦めてたんだけど……ほら今ならアリナも居るじゃん?それならなんとかなるかなぁ……なんて。」
しまったちょっと恥ずかしいセリフだぞ。
「ふーん。まぁ期待されてるなら頑張ろうかな。」
ニヤニヤしながらこっちを見てる……ぐぬぬ。
「ミィさん……一応私も居ますよ。」
多少落ち着いたのか委員長も自己主張をしてくる。
「そうだねレインも居るし……期待してるよ。」
やる気を出してもらう為に委員長が嬉しがりそうな言葉をかける。我ながら性格が悪い。
「ま、任せてください!ミィさんの期待に応えて見せますよ!」
効果抜群だ。さっきまでの動揺が嘘かのようにやる気に満ちている。
ギギギギギギギギ
こっちのやりとりを待ってくれていたかのようにグラーファが動き始める。
「私が牽制しますから援護をお願いします。それと申し訳ないんですけどポーションをいただいてもいいでしょうか?」
「さっきの戦闘で結構使っちゃったもんね。全然大丈夫だよ。」
委員長に追加で20本ほどポーション類を渡す。
「私も一応貰ってもいい?」
アリナは合流したばっかりだったから渡してなかったので当然渡す。
「私も近づかないとだよね……レンジで言えばレインより短いわけだし。」
先程のピンチが頭によぎるので正直近づきたくないけど私が戦わないわけにはいけない。
「大丈夫。ミィの援護はするから安心して突っ込んで。」
頼もしいなアリナ。
「来ます!」
委員長が叫ぶと同時にものすごい勢いでこちらに突っ込んできた。
ガギィッ
委員長が応戦しグラーファの持つ大剣と委員長の大剣がぶつかり合い衝撃が周囲に走る。
「うぉりゃあ!」
鍔迫り合いをしているグラーファに向かい横合いから殴りつける。当然【重化】のスキルは使用している。
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なんの言語なのかはわからないがうめき声のようなものを上げグラーファがのけぞる。
HP2798/2800
「いや2しか減らないのっ⁉︎」
流石に少しショックだ。
「はぁっ!」
のけぞった隙をつき委員長がグラーファを弾き飛ばす。
バシュッ
体制を崩したグラーファ目掛け矢が飛んでいく。
アリナの攻撃だ。
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首の甲冑の隙間に矢がクリーンヒットしたグラーファは先程より大きい呻き声を上げる。
私よりダメージ大きいんだろうなぁ。
「ナイスです!」
グラーファに委員長が追撃を入れようと前に出る。
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グラーファが短く唸ると黒い壁が委員長の眼前に現れた。
「うわぁっ!」
咄嗟に仰け反り生えてきた壁を躱す委員長。
「なにあれ?」
急に現れた壁に怯む私。
ブンッ
体勢を立て直し無言で剣を壁に叩きつける委員長。
「……硬いですね。」
傷一つ付かない壁に対しそう漏らす。
「っ!ミィ躱して!」
アリナが突如叫んだ。
黒い壁の影からグラーファが現れ剣を横薙ぎに振ってきた。
咄嗟に籠手で防ぎ剣の進行方向に飛ぶ。
「うぐっ!」
岩にぶつかり背中に衝撃が走る。
「ミィ!……このっ!」
アリナがグラーファ目掛け矢を放つ。
■■
グラーファが唸ると元々あった壁が溶け新しい壁が現れ矢を防いだ。
「チィッ!」
舌打ちをしたアリナは移動して射線が通る所から再び矢を放つ。
「はぁっ!」
委員長も剣を振りかぶり斬りかかる。
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グラーファが唸り新しい壁が現れ矢を防ぎ委員長の剣はグラーファの剣で防がれた。
「うぉぉぉぉぉぉ!」
背中への衝撃でまだ少し苦しいが全力で突っ込み拳を振り下ろす。
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全体重と速度を乗せた拳を受けたグラーファの兜が吹き飛ぶ。
「うぇっ……。」
顕になったグラーファの顔は青く光る目と黒いモヤに包まれた人とはかけ離れたものだった。
「こわっ!つか人じゃなかったの?」
君主の為とか騎士とか表示されてたからてっきり人間の騎士かと思ってたけど違うのか。
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グラーファが腕を振るい私を吹き飛ばす。
「っ!」
アリナが射線を変えて矢を放つと同時に駆け出す。
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再び黒い壁が矢を防ぐ。
「レインさん!弾きなさい!」
アリナが委員長に向かって叫ぶ。
「は、はひっ!」
委員長が全力で押しグラーファを弾く。
「ミィ!レインさん!追撃!」
アリナの指示が飛んできたので突っ込む。
「わ、わかりました!」
委員長は逆袈裟方向へ剣を振り上げる
「はぁっ!」
レインもダガーを取り出しグラーファへ振り下ろす。
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委員長の剣を同じ剣で受け止めたが片手では勢いを殺しきれなかったのか弾かれ体勢を崩すグラーファ。
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私の振り下ろした拳は黒い壁に防がれ最後に残ったアリナのダガーは肩の甲冑の隙間に深々と刺さった。
「やっぱり!」
ダガーを抜きグラーファを蹴り飛ばし距離を取るアリナ。
「何が?」
硬い壁を殴った衝撃で手が痺れている私はアリナに聞き返した。
「あいつのあの壁よ。同時に2つは出せないみたいだし常に3方向から攻撃してれば勝てるんじゃないかしら?」
焦ってて気づかなかったけど確かに一々古い壁が溶けていたことを考えるとそうなのかもしれない。
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話しが終わると同時にグラーファがアリナに目掛けて飛び掛かっていった。
多分この中で一番厄介なのは彼女と判断したのだろう。
「アリナっ!」
グラーファの後を追いかけるように動く。しかし間に合う気はしない。
「【スマートアロー】」
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スキルを使用し少しでも威力の高い攻撃で迎撃しようとするも壁を生成しそれを足場に軌道を変え回避するグラーファ。
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次の瞬間グラーファの背中に剣が刺さった。
「戦闘中に背中向けるとか舐めてるんですか?」
剣を投げた委員長は冷たく言い放った。
「こわっ……。」
やっぱり戦闘狂だよこの人。
「あ、ありがとう。」
アリナも少し面食らったようにお礼を言っている。やっぱり少し怖いよね。
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起き上がったグラーファが背中の剣を引き抜きそのまま左手に握った。
「っ!私の剣!返してください!」
委員長が叫びながらグラーファに向かっていく。アリナは助かったかもだけど馬鹿なの?
「レイン!武器も無しに突っ込んじゃダメだって!」
そのままにできないと私も後を追うように突っ込む。
「……助かったけど問題が増えてる気がする。」
何かを呟いたアリナが再び距離を取り弓で左腕の関節を狙う。
「【重化】」
私も左手に握られた剣の腹を殴った。
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矢を躱す為に体を捻った隙を狙い殴った為剣が手を離れ離れたところに刺さった。
「ありがとうございます!」
委員長がすぐに回収をする。
「ミィ!そのまま続けて!」
アリナの指示で次の攻撃に移る。
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黒い壁に阻まれるがその裏で委員長が斬りつける。
「パターン入りました!これなら行けます!」
斬りかかってる委員長が嬉しそうに声を上げる。最初の慌ててる雰囲気はどこに行ったのか。
「……このまま終わるといいんだけど。」
矢を射りながら呟くアリナ。
「だよね、簡単すぎる気がする。」
そもそも名持ち(ネームド)と呼ばれるモンスターをこんなに簡単に倒せるように設定してるとは思えない。
「ひとまずもうすぐで半分だからそこで変わるかもしれないし警戒はしとこう。」
まぁ変わるとしたらそこだよね。
そうして作業と化した3方向からの攻撃を続けているとグラーファのHPが半分になった。
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グラーファが叫び声を上げると黒い竜巻のようなものが起こり私と委員長は吹き飛ばされた。
「うわっ!」
「ひょえぇ!」
委員長が少し情けない声を上げる。
「痛……くはないけど何が起きたの?」
ダメージは無いのですぐに起き上がり確認するとグラーファの様子が変わっていた。
両肩の甲冑の隙間から黒い炎のようなものが上がっており青い目は赤く変わっていた。
「……少しカッコいいですね。」
委員長がそんなことを呟く。
「いや……そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。」
明らかな第二ラウンドの開始に私は少し疲れてしまった。
更新遅れてすいません。
飽きたわけじゃないので懲りずに見てもらえると助かります。




