31.ちやほやされたい猛練習
「なんだか漢字の書き取りみたい。」
昼休みに寝たふりをする事の方が珍しくなった今日この頃。私はスクショした大全を見ながらノートに書き写していた。
「とりあえず何も見なくても綺麗に書けるようにして手元に集中できるようにすればいけると思うんだけどなぁ。」
ぶつぶつ独り言を言いながら一心不乱に手を動かしてる私は側からみればヤバいやつかもしれない……まぁ私の事見てる奴なんて居ないだろうけど。
――――――
「七海さん何してるんだろう?」
一心不乱にノートに何かを書いている。
「声掛けたいけど……迷惑だよね。」
せめて何をやってるかわかれば話のきっかけになるのになぁ。
「はぁ……友達になりたいのに声がかけられない。」
――――――
「……?何か視線を感じる気がする。」
まぁ気のせいだろう。私はこの教室では空気なのだから。
そんな事を考えながらも手が動くので攻撃力強化の錬金紋は結構慣れてきた気がする。
帰宅したら試してみようかな。
「あー早く帰りたい。」
午後の退屈な授業を想像すると切にそう思う。
――ログインしました。
帰宅した私はすぐさまログインし自室へと篭った。
「ひとまず攻撃力強化は完璧にしたいよね。」
あの後授業中もノートの片隅に書いてたので綺麗に書ける自信はある。
「深さを均一に……操作に集中……。」
深さを均一にというのが本当に難しい。手に持って道具を動かしてる訳ではないので感覚が掴めない指先の微妙な動きで制御が乱れるので細かい作業の難易度が高くなる。
「手のひらの動きも拾っちゃうんだよね。手首の動きで移動を制御して……と。」
練習用に延ばした錬金鋼の隙間がどんどん無くなるが成功はいまだに無い。
――3日後
「これで15枚目……心が折れるわ。」
1000以上は書いたと思う。成功したらどういう反応が起こるのかもわからないけど多分成功してない。
「ミィ、居る?」
ノックと共にアリナの声が聞こえてきた。
「アリナ?うん、入っていいよ。」
そう言うとアリナが入ってくる。
「ずっと籠ってたけど何かしてるの?」
少し心配そうな顔をしてる気がする。何も説明せずに籠ってたからかな?
「いや錬金術の本を借りてきてそこに書いてあったのを練習してたんだけど上手くいかなくてね。」
隠す事でもないので正直に伝える。
「どんな内容なの?」
興味がありそうだったので本を開いて教える。
「なるほど……ちょっとやってもらっていい?」
「いいよ。ほんと難しいから多分また失敗すると思うけど。」
再度魔力炉に手を当て錬金紋も刻む。
「……あっ!」
また指先の動きを拾ってしまい深さが変わる。
「……とまぁこんな感じで難しいんだよね。」
何度か見せたけどどれも失敗だった……恥ずかしい。
「うーんなんか無駄な力が入ってる気がするから……ちょっといいかしら?」
そう言うと正面に座っていたアリナは私の手の上に手を重ねてくる。
「力が入って指が跳ねてるから私が上から押さえてあげる。」
なるほど……外から見ると分かることもあるのか、ここはお言葉に甘えておこう。
「ありがとう。行き詰まってたし助かるよ。」
再び魔力を込め錬金紋を刻む。
(うわぁまつ毛長いなぁ。)
アリナの顔が近くてドキドキする……集中しないと。
「……なんか上手くいってる気がする。」
作業を始めてみると先程と違い無駄な力が入ってない気がする。
「…………できた?」
大きなミスをした感覚はないが彫り終わった錬金紋からは何も感じなかった。
「とりあえず魔力を流して。」
入門書に書いてあったように錬金紋に沿って魔力を流し込む。
錬金紋が光り始め数秒すると光が錬金紋に吸い込まれていき錬金紋は赤く染まっていた。
攻撃の錬金紋I 錬金術師の技術の一つ。身につけ魔力を流し事によって効果を発揮する。
「できてる!」
他の錬金紋は全く反応してなかったので初めての成功だった。
「ありがとうアリナ!」
私はアリナの手を握りお礼を言う。
「おぅふ!き、気にしないで!成功して良かったじゃない!」
なんかものすごい声を上げたけど急に手を握ったから驚いたのかな?
「あっ、ごめん。急に手を握ったりしたら驚くよね?」
「いやっ!そんな事ないよ!確かにびっくりしたけど嫌じゃないからね!」
取り乱すアリナは珍しい気がする。
「嫌じゃないならよかった。でもほんとありがとうアリナ。」
再度お礼を言う。
ピロン
[新しいスキルを獲得しました。]
システムの通知?スキル獲得で来るのは初めてな気がする。
【錬金紋I】一歩を踏み出した者に芽生える技術。初級錬金紋を刻む際魔力操作に補正がかかる。
魔力操作補正?またよくわからないステータスが出てきた。
とりあえず取得してみる。
スキルPt13→10
「アリナ、ちょっと新しいスキル手に入れたから一人で試してみていい?」
手伝ってもらってすぐに一人でと言うのは申し訳ないけどアリナに伝える。
「う、うん。大丈夫だよ。スキル試したいのもそうだし感覚掴めたら補助は必要ないもんね。」
不愉快な感じを全く出さないアリナはやっぱり大人だと思う。私なら絶対不機嫌になるし。
「ほんとごめん!手伝ってもらったお礼は今度するから許して。」
正直借りばっかりで返すものが多くなりすぎてる気もするけど。
「お礼……考えとくわね。」
なんか一瞬すごい鋭い目になった気がするけど気のせいだろう。
気を取り直し魔力炉に手を当て再び攻撃力強化の錬金紋を刻む。
先程の成功で感覚が掴めたのもあるがスキルによる補正がかなり強く感じられ難なく刻むことができた。
「補正ってえぐいなぁ……。」
明らかに感じられるそれの恩恵はとてつもないものだった。
「これならアクセサリーも販売できるかもしれない。」
スムーズな配信の為に始めた練習が思わぬ成果を挙げたのは嬉しい誤算だ。
「売るのも良いけどあんまり無理はしちゃダメよ。いくら簡易錬成があってもミィの作るアイテムは手間や素材の消費が多いんだから。」
アリナが声をかけてくる。独り言が聞こえてたようだ。
「大丈夫。売るにしても様子見してからだから。私も生産だけに時間取られたくないし。」
手を広げすぎてもろくな事にならないだろうし正直言ってみただけみたいなところはある。
「それなら良いけど。……まぁなんにせよおめでとう。錬金術ってほんと凄いわね。」
褒められると承認欲求が満たされるのを感じる。もっと褒めてくれ。
「アリナのお陰だよ。あれがなかったら感覚が掴めなかったし。」
スキルの取得条件も多分一回は自力で成功させる事だろうからそこは本当に感謝している。
「お役に立てたようで何より。でも私はただ見て思ったことを伝えただけだからミィの実力だよ。」
そんな会話を続けているといい時間になっていた。そろそろ夕飯を作らないといけない時間だ。
「ごめんアリナ。私そろそろ落ちるね。」
「あーもうそんな時間か。じゃあまた今度ね。」
――ログアウトしました。
「はぁ〜やっとできたよ〜。アリナには感謝してもしきれないよほんと。」
Podから出て体を伸ばす。
「さて明後日のコラボの準備はできたし……絶対成功させるぞ!」
次回コラボ配信編です。
更新は金曜日を予定してます。
感想がちょくちょくいただけて嬉しい限りです。
読むと気力が湧くのでよろしければお願いします。




