27.ちやほやされたい敵情視察
庭仕事と開店準備で金曜日を過ごし迎えた土曜日。
落ち着けない私は朝からログインをして庭いじりをしていた。
「思った通り根っこごと採取して植えればちゃんとリポップする薬草になるんだね。」
昨日森で採取した薬草類の根を植えた畑は緑の絨毯と化していた。
「12時間毎に生えるとはいえわざわざ森まで行かなくて良くなったのは大きいなぁ。」
収穫も自動でやってくれたりしないのかな。店番とかもあるから人を雇えばワンチャンあるかな?
今度NPCを雇えないかアリナに聞いてみよう。
「にしても下級薬草と吸魔草を60ずつ植えたけどまだまだ余裕あるよね。中級薬草とかって作れるのな?」
余裕ができたら新しい薬草作りをしてみても面白いかも。
「そういえばさくらさんのお店の場所データ貰ったけどまだ見てないや。」
最初ほどではないけど正直乗り気ではないので今の今まで確認していなかったが流石に見ないわけにはいかないので以前メッセージで貰ったマップデータを確認する。
「うげっバザー内じゃん。」
さくらの送ってきたデータによると彼女の店はバザーの中にある大きめの建物だった。
「お金あるんだなぁ。」
正直あんなに人の多いところで営業しても回せる気がしないのでただただ感心する。
「さて、確認も終わったしある程度商品を錬成したらさくらさんのところに向かいますか。」
庭いじりもそこそこに商品追加に向かう。
何かしてないと緊張でどうにかなってしまいそうだし。
途中本気で逃げ出そうかと考えたがなんとか踏みとどまり気付けば時刻は14時40分を回っていた。
「そろそろ行かないと……。」
ここからバザーまでは10分弱。ギリギリに着きたくないので覚悟を決めて家を出る。
「ここがあの配信者のハウスね……。」
マントが無かったので他のプレイヤーからの視線を感じたが何事もなく着いた。
「さぁ覚悟を決めろ……というかただの打ち合わせなんだから頑張れ私……。」
ピロン
メッセージが届く音がした。
[そろそろ打ち合わせだよね。私は行けないけど頑張ってね!]
アリナからのメッセージだった。
「全く……お節介なんだから。ただの打ち合わせだよ?」
気がつくと緊張は解れていた。
ニヤける頬を引き締めて私は店の中へ入る。
扉を開くとそこには別世界が広がっていた。
ピンクを基調としたグラデーションのかかった壁。
ジュエリーショップに置いてありそうなガラスケースに綺麗に並べられたアクセサリー。
ピンクの円柱型の棚に並べられた可愛い靴。
可愛い空間とはこういうところを言うのだろうと直感的に感じる店だった。
「すごい……え?こんなお店持ってる人のチャンネルで私宣伝するの?」
いやそうじゃない。私たちの《Secret Garden》だって見た目は地味かもしれないけど置いてあるものは一級品のはずなんだ。こんなんで怯むんじゃない。
一旦落ち着いて店内を見てみると意外と男性客が多かった。明らかに女性向けなお店って感じなのに不思議だ。
理由を探るため男性が集まってるアクセサリーケースの前に移動し商品を確認する。
精霊印の指輪 精霊の加護が刻まれた銀の指輪。風の精霊は紋章を持つものに力を与える。持つものの心根に関係なく。
魔法防御力+15 【AGI】+3
「すごいわ……いやマジで。」
このゲームはアクセサリーの装備数上限が30とかなり多い。指輪だけで最大20個は装備可能だったりもする。
まぁ物理干渉のせいで歩くのも辛くなる可能性があるので基本は指に付けるものなのだが。
そういう訳でアクセサリーの質は大正義という風潮がある。まぁ当然か。
ただ良いものには相応の値段がついているというのが世の性なので……。
「うげぇ30万もする。」
これほどの性能となるとそりゃこれくらいするよねという値段だった。
サービス開始1ヶ月未満の装備の質でこれほどの値段となると1年後とかは一体どうなっている事やら。
「まぁ今は希少性とかプレイヤーのブランドで値段が跳ね上がってる状況だろうから時間が経てば健全になるんだろうけど。」
なんにせよ手は出ないので当初の目的のさくらを探す。
「こう混んでるとどこにいるのかわからないよ……えーっとカウンターの方に居るのかな?」
人混みを掻き分けてカウンターへ向かうと元気に笑ってるピンクのツインテールの子が見えた。
「あっ……あの……さくらさん。すいませんミィです。えっと……う、打ち合わせに来ました。」
やっぱり初対面の人と話すのはつらいです。
「あはは。そんなに緊張しなくていいよ♪まぁさくら可愛いから緊張しちゃうのもわかるけどね♪」
断じて違う私がコミュ障だから緊張してるだけだ。
……それにベクトルは違うけど綺麗な女性なら今はほぼ毎日見てるからその程度で緊張するわけがない。
「とりあえず奥で話そっか♪……じゃあみんな〜さくら一旦離れるけどお買い物楽しんでってね〜♪」
「ばいばーいさくらちゃーん。」
「姫ー今日も一杯買ってくからねー。」
「姫の隣にいる子ミィちゃんじゃないか?」
「そういえばコラボがなんだってちょっと前に言ってたような気が……。」
私まで注目されてる。早く逃げなきゃ。
「さ、さくらさんっ!はっ早く奥行きましょっ!」
彼女の背中を押すように奥に向かう。
「いやーん♪ミィちゃんたらだいた〜ん♪」
うるさい。いいから早く奥へ行ってくれ。
こうして私の打ち合わせは始まるのだった。
次回の萌え声配信者との打ち合わせは明日更新します。
さくら編はまだ続きますがこれが終わりましたら一旦現状をまとめた物を描きたいと思ってます。
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