25.ちやほやされたい試行錯誤その2
翌日私は学校で薬について調べていた。
「飲み薬ばっかりだから次は丸薬とかがいいよね。」
普段なら寝たふりをしてる昼休みに1人でスマホをいじる。
「粉末の生薬を水とか蜂蜜や小麦粉とかで練り込む……ここで小麦粉とか使ったら薬効が薄れるとかないのかな?」
というよりこのまま作ったらそれは薬師でも作れるものになる。
どうにか錬金術ならではの製作ができないものか。
「正直錬金術で作れる唯一のものなんて今のところ錬金鋼だけだしそこまで拘らなくても良いのかなぁ。」
効果量が高いアドバンテージはあるが唯一性は錬金鋼にしかない。目玉商品と言うからには錬金鋼と同じようなものが欲しい。
「魔力炉を使えば何か変わったりするのかな?」
そんな事を考えていると予鈴が鳴った。考えすぎても仕方ないし続きは帰ってからにしよう。
――ログインしました。
「まずはツノウオを捌かないと。」
テーブルの上に昨日雑貨屋で買ったまな板と包丁を置く。
「キモを取り出すだけだからエラとかは取らずにお腹だけ切ればいいかな。」
見た目こそツノが生えているがそれ以外はただの大きい魚なので問題なく捌く。
「キモってこれ……だよね?」
お腹の中にレバーのような赤い弾力のあるものがあった。多分これがキモだろう。
ツノウオのキモ ツノウオの栄養が詰まったキモ。栄養が豊富だが味が酷いため古来より薬の材料に使われている。
「正解だね。まずは錬金セットのいつもの手順で錬金してみようかな。」
錬金セットを取り出し浄化水とキモを半分に切ったものを鍋に入れて魔導コンロにかける。
「キモを潰すように混ぜて……魔力は毎秒5ずつ込めて……と。」
いつものように1分で鍋が光る。
鍋の中を見てみると赤黒いドロリとした液体で満たされていた。
「うわぁ……えっぐ…………ってくっさ!」
唐突な刺激臭に思わずのけぞる。
栄養薬 滋養効果のある水。疲労回復効果があるが酷い味と匂いなので飲む際には注意が必要。
疲労回復というと動き回る前衛職とかは使えるのかな?私はカウンター主体の戦いだからそんなに疲れを感じないから使うことはそんなには無いだろうけど。…………まぁこんな酷い匂いのものなんて飲みたくないか。
「うーん。これじゃ商品にはならないかな?流石に飲めるレベル超えてそうだし。」
匂いが部屋に充満してきたので早く捨てたい。
「とりあえず瓶詰めしてインベントリにしまって……匂い消さないとアリナに怒られるよねこれ。」
窓を開けとけば大丈夫かな?
「水に溶かすのはダメってことは……やっぱり乾燥させないといけないのかな?」
水分を抜くのに使えるスキルとかないのかな?
錬金術のスキルツリーから確認してみると【分離I】と言うスキルが解放されていた。
【分離I】錬金術の技術の一つ。対象の素材から水分を分離させる。レベルが上がると他のものも分離が可能になる。
レベルアップで増えていたらしく新しいスキルが習得可能になっていた。
「都合がいいってのはこのことね。」
スキルPtを1使用して取得。
早速ツノウオのキモを対象にスキルを使用する。
するとキモの大きさが半分ほどになりカラカラに乾燥した状態になった。
「すっご。一気に水分が抜けた。」
持ち上げてみると水分が抜けた影響かほぼ重さを感じないレベルになっていた。
「薬草も乾燥させてこれと混ぜればさらに強い薬になったりするのかな?」
下級薬草と吸魔草を取り出し【分離I】をかける。
「これらも粉にできるのね。それじゃすり鉢で全部混ぜてみようかな。」
雑貨屋で買った作業道具その2で全てを混ぜ合わせてみる。
「うーん。アイテム情報が更新されない。混ぜるだけだと単品アイテムと変わらないってことなのかな?」
比率を変えて何度か試してみたが何度やっても結果は変わらなかった。
【STR】が低いので連続作業は中々に辛いものがある。
「疲れた……そうだ!魔力炉に入れて。温度は上げずに魔力操作で砕いて攪拌って多分できるよね。」
試してみると思った通り温度を上げなければ細かい作業ができるアイテムとして使えるようだ。
手作業ではなく魔力を媒体とした作業道具を出すといった感じで力など要らないので結果的には【STR】が低い私にピッタリだった。
そんな作業のあと出来上がったアイテムを見てみると
力の粉末 ツノウオの滋養効果が魔力により変質した粉。HPとMPを代償に物理攻撃力と魔法攻撃を上げる。
「これは成功なんじゃない?」
今まで結合しなかった素材たちだったが魔力により結合し別のアイテムへと変わったようだった。
「とりあえずお試しで一舐めしてみよっと。」
指でつまみごく少量を口に入れる。
「え?」
瞬間膝から崩れ落ちた。
ステータスを確認すると確かに物理攻撃力と魔法攻撃力が倍になっていたがHPとMPのどちらも9割ほど減っていた。
「こ、これは流石に危険すぎるというか……戦闘中じゃ絶対使えないよ。」
「どうしたものかなぁ……。」
ポーションを飲みながら考える。
各攻撃力が倍になるのは確かに凄まじい効果だが膝をつくほどのHPを持っていかれるのは流石に問題外だ。
「多少効果量が落ちてもいいから何かいい方法はないのかなぁ。」
考えを巡らせる。
「まず効果を下げてもいいからデメリットを下げるには……薄めれば大丈夫かな?」
丸薬の作り方を調べたときに小麦粉と書いてあったのを思い出しひとっ走り雑貨屋へ小麦粉を買いに向かう。
買い物を終え魔力炉に力の粉末の小麦粉を入れ攪拌する。赤かった粉末がピンクの粉末へと変わっていく。
力の粉末 ツノウオの滋養効果が魔力により変質した粉。HPとMPを代償に物理攻撃力と魔法攻撃を上げる。
表示に変化は無い。試しに一口舐めてみる。
「っ!」
膝から崩れるほどでは無いが力が抜ける感覚がする。
ステータスを確認すると4割ほどHPとMPが減っており各攻撃力は5割上昇していた。
「思った通り。あとはデメリットを少しでも減らさないと。」
これについてはシンプルな考えでいいと思うので再度錬金キットを取り出す。
「力の粉末を初級ポーションとマナ促進剤でペースト状にすれば多分デメリットは減らせるはず。」
割とシンプルな思考だが今までもそれで成功しているのだからいけるはずだ。
魔導コンロを起動させ鍋の中の素材を沸騰させない温度でかき混ぜる。
「うへぇ……さっきほどではないけど熱するとちょっと臭いなぁ。」
我慢できる匂いではあるが少し血生臭い感じの匂いがする。
1分が経過し鍋が光る。そのタイミングでMPを100程込める。
光が収まると熱で変質したのかピンクから鮮やかな赤に変わったペーストが鍋の中に入っていた。
指で掬い一舐めしてみると先ほど感じた脱力感は全く感じなかった。
「っ!」
ステータスを確認してみるとHPとMPの減少は無く各攻撃力が5割上がっていた……成功だ!
「成功ね!えっと……あとは飲みやすいように丸めて……【分離I】で水分を抜いて……っと。」
力の丸薬 魔力により生み出された丸薬。2分間物理攻撃力と魔法攻撃力を50%上昇させる。使用インターバル:効果終了時から30秒。
「できたー!」
これはもう文句無しの成功でいいでしょ!もう嬉しすぎて小躍りしちゃうレベルだ!
ステップを踏んで小躍りしていると扉の前にいたアリナと目があった。
「イツカラミテマシタ?」
「えーっと。ものすごい匂いがした時からかな。」
ほぼ全部じゃん。
というか雑貨屋に走ったりもしたのにアリナに気付かなかったの?どれだけ周り見えてなかったのよ私。
「最後の小躍り以外はカッコ良かったから大丈夫よミィ!」
アリナのフォローが入るが最後の小躍りを観られたのが問題なのよ我が友よ。
「あーもう最悪。アリナも見てたなら声かけてよね。」
声もかけずに見ているなんて何が楽しいのやら。
「見られるなんて配信やってる時と同じでしょそんなに不貞腐れないの。」
まぁそうなんだけど。やっぱり心構えとかあるじゃん?
「いやまぁそうなんですけど……折角新しいアイテム作れたのにこれじゃ締まらないじゃん!」
私の叫びが《Secret Garden》に響いた。
次の更新は日曜日の予定です。
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