23.ちやほやされたい店作り
――翌朝
「……眠い。」
昨日はログアウトした後、テンションが上がり過ぎてどんなお店を作るかを考えていたら寝るのが遅くなってしまった。そのせいで非常に眠い。
「……休みたいけどお母さん絶対許してくれないよね。」
基本優しい母ではあるがサボりとかそういった類のものは絶対に許してくれない。
仮病とかも絶対にバレるので使えない。
「しょうがない……起きよ。」
愚図る体に鞭を打ちなんとか起きる。
「おはよー。」
「おはよう一華。朝ごはんできてるから支度して食べちゃいなさい。後お母さん今日帰れないと思うから夕飯は自分で作ってね。」
帰って来れないことはたまにあるから問題無いけど母はいつも申し訳なさそうに伝えてくる。
「気にしないでー。お仕事がんばってね。」
私としては多少ルーズに過ごせるのでむしろ喜ばしいくらいだ。
「帰って来ないからってあんまり夜更かししちゃダメよ。明日も学校なんだから。」
「わかってるって。そこら辺はしっかりやるよー。」
これもいつものやり取りだ。
「じゃお母さんもう行くから戸締りよろしくね。」
「いってらっしゃーい。」
朝ごはんを食べながら見送る。私もぼちぼち準備して出ないと走る羽目になってしまう。
――――――
「昨日の掲示板の売り上げがあるから棚とかはNPCから買うとして商品の量産がまずは必要だよね。数時間でリポップするから薬草関連は畑に植えて。錬金鋼も作りたいから鉄鉱石も買ってこないとだよね。」
いつもなら寝たフリをしてる昼休みだが今日は独り言をぶつぶつ言いながらノートにお店の考案を書いている。
「そんでもってアリナの商品も並べるからレイアウトどうしようかなー。」
後は商品のラインナップだ。アリナは1着1着手作りだからそんなに数は並べられないはず。
私も今作れるのは初級ポーションと初級マナポーションにマナ促進剤。浄化水も置く予定だが錬金鋼と比べると全てのインパクトが少し弱い気がする。
「薬関係でもなにか目玉が欲しいところだよね。」
私が配信をしてない間に毒を治す解毒薬と麻痺を治す気付け薬が薬師によって開発されたという話を聞いたので何かそれに匹敵するアイテムを錬成したい。
「作るならバフ系のアイテムだよね。」
アリナとお店の打ち合わせをしたら少し素材を集めに森に行ってみようと思う。
「なんかやる事多いけど楽しいな。」
相変わらずリアルに友達は居ないけど《FWO》は確実に私の生活に彩りを与えてくれていた。
――――――
「ただいま〜。」
誰もいないのはわかってるけどつい言ってしまう。
「さーてと着替えてさっさとログインしよっと。」
手を洗い制服を脱ぎ捨て部屋着に着替えた私はPodに座る。
――ログインしました。
「さて……まずはアリナにメッセージを……。」
ここで私は気付く。私は学生だからいいけど流石に16時は普通の会社員なら働いている時間じゃないかと。
「……19時くらいに集まるようにメッセージ送っとこ。」
大人の社会はよくわからないけど19時くらいなら大丈夫でしょ。なんかアリナいつでもいる気がするし。
「それだと時間空くから今のうちに商品の在庫作っておこうかな。」
森の探索は時間のある時にやりたいから約束がある今日はやめておこう。
さて……今までなら街の外れの定位置で錬金をしていたが今日からの私には家がある!……まぁ正確にはまだアリナの家なんだけど。
というわけで意気揚々と家へ向かう。
中央から少し外れた場所に建てられた木造の家はいつ見ても可愛かった。
「あーほんといい家だー。……アリナには感謝しないとね。」
私は昨日言い過ぎたことをまだ少し引きずっていた。
「まぁ気にしないでって言い合った以上気にしないのが正解なんだけど……正直私色々ともらいすぎなんだよね。」
この装備もだし、お礼のつもりで渡した毛皮も丸め込まれて装備を新しく貰うことになってしまったし。この家だっていずれ半分払うとはいえ今の私じゃ手に入らなかったものだ。
「私も何かしてあげたいなぁ。でも今は何も思いつかないし……とりあえず作ろ。」
家に入り昨日話しをしていたテーブルに錬金キットを広げる。
ポーション類は手慣れたものでそれなりの速度で錬成することができた。
「とりあえずマナポーション以外は200は作りたいなぁ。」
マナポーションだけは一度に作れる本数が限られているので100本を目標にしよう。
「問題は錬金鋼。量産に時間がかかる上に今のところ私しか作れないから価値がどれほどのものかわからない。」
ぶっちゃけ言い値だとおもってる。
「作り過ぎてもって感じのアイテムなんだよね。」
とりあえず25個くらい作っておけばいいかな?
「それならボーナスPtを【MND】に振ってMPの最大値上げないとなぁ。」
ボーナスPtを10【MND】に振る。
ボーナスPt 30→20
【MND】46→56
これで補給なしで1つは加工前の錬金鋼が作れるかな。
そんなことを色々やりつつ錬成しているとドアが開いた。
「ごめん待った?」
アリナが来たようだ。時間を確認してみると18時42分集中してたせいか気付いたら3時間弱経っていたらしい。
「全然。商品作ってたらあっという間だったよ。なんならもう少し遅くても良かったくらい。」
「ひどいなぁ。私はミィを待たせてるんじゃないかって急いで来たのに。」
「冗談冗談。早速で悪いけどお店の計画を話しましょう。」
私は学校で考えていた計画を話す。
「目玉商品を増やすというのはいいと思うわ。ミィの作る薬は他のより効果が高い分どうしても値段も高くなるからいっその事高級志向な店でいいと思う。」
市場の価格を破壊しないためにも安く売る訳にはいかないからそこは仕方ないと思う。
「ただそうした場合目玉商品を増やすとなると錬金鋼と同レベルの物が欲しいわね。看板商品になるようなそんな強い商品が。」
生半可な効果でハイブランドを名乗るとインパクトが弱いので値段をも吹き飛ばすほどの効果が欲しいとの事だ。
「だから正直ミィの負担が大きいのよね。家具類は依頼するだけだから私がどうにでもできるけど錬金術だけはそうはいかない。プレッシャーかもしれないけど大成功するかどうかはミィにかかってるのよ。」
そんなことを言われ普段の私なら胃が痛くなってるかもしれないけど今の私はお店作りという楽しさが勝った。
「任せて!そんくらい余裕だから。」
いつもの無根拠な自信だがいけるという確信めいたものがあった。
「うん。じゃあそれはミィに任せるわ。それじゃ私は家具の発注と服作りと……あとはシュシュとかのアクセサリーでも作ろうかしら。」
正直大人のアリナは頼りになった。申し訳ないけどこのまま頼らせてもらおう。
「じゃあアリナお互い頑張ろう!」
「じゃあ方向性は決まったから最後に一番大事なものを決めましょうか。」
「一番大事なもの?」
なんだろう?
「店の名前よ。」
……完全に忘れてた。
「お店の中のことしか考えてなくて名前のこと全然考えてなかった。」
なんなら一番最初に考えなきゃいけないものじゃないのか私!
「私が決めていいなら提案したい名前があるんだけど良いかな?」
アリナがちょっと申し訳なさそうに言ってくる。
「私なんか考えてすらないんだから全然いいよ。」
なんなら私はネーミングセンスが無いからありがたい話だ。
「えっとね。《Secret garden》って名前がいいんだけど。」
《Secret garden》……秘密の花園?なんだろうなんか少し官能的な気がする。
「理由もちゃんとあるんだけど、ここって中央から少し離れてるじゃない?それで少し神秘的な場所だと思ってもらえたらなっていうのと、私女性向けの服しか作れないからメイン層は女の子になると思うから華やかな感じにっていうのも込めて《Secret garden》って名前にしたいの。」
私の薬は誰でも買いに来るというツッコミは無粋だろうしそれを抜きにしてもいい名前だと思う。
「いい名前ね!私もそれがいい!」
名前がつくとより一層愛着が湧くというものだ。
「ありがとう!本当は《Lilly garden》も良いかなぁって思ったんだけどそれは直接的すぎるかなって。」
直接的?なんの話だろう。まぁ百合を名乗るなんてちょっと名前負けしてる感じがするから個人的にも《Secret garden》の方がいい。
なんにせよ名前も方向性も決まった!
あとはコラボの連絡が来るまでやれることをやるだけだ!
「これからよろしくね!」
テーブルを指でなぞり私は《Secret garden》に語りかけた。
少し遅れました。すいません。
明日は1日更新を休みますので申し訳ありませんがご了承ください。
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