21.ちやほやされたいお誘いです
今日はゆっくりしよう!
月曜というやる気の出ない1日を乗り越えた私は今日は配信をせずにポーション作りをしながら配信を漁ろうと決めた。
「そうと決まれば早速ログインだ。」
――ログインしました。
「えーっと……誰の放送見ようかな?」
新着動画を漁るのも良いけど今日の私の気分は登録者の多いチャンネルでの安定した配信だ。
「うーん。誰のにしようかな……。」
配信中の一覧を登録者順で並び替え確認する。
「あっ!この人かわいい。」
ふと目についたのは人懐っこそうな顔をしてるピンクのツインテールの可愛らしい女の子のサムネが映っているさくらちゃんねるというやつだった。
ちなみに登録者は80万人で私の8倍。
内容はアクセサリー作りながらの雑談配信。生産職なら錬金術発展のため尚更見なきゃだよね。
という事で配信を開く。
「今日はー鉄を使ってブレスレット作ろうと思うよー。」
開いてすぐ聞こえてきたのはものすんごい萌え声だった。いやまぁ見た目に合ってるけどさ。
装備は白のゴスロリ。好きな人はすごく好きそうだなぁ。
〈姫様がんばれー〉
〈さくら姫なら良いのできるよ!〉
〈姫さま今日も可愛らしい〉
流れるコメントも見た目通りの物だった。
「私も萌え声で配信したらこんなふうに優しくちやほやされるかな?」
想像してみる。
〈無理すんな〉
〈なんか悪いもん食った?〉
〈キッツ〉
うん。うちのチャンネルの奴らのコメントが容易に想像できるからこの話は無しだ。ほんと民度の低い連中だ。
そんな事を考えていると配信の方では腕輪に細工をしていた。
「ここは……こうした方が綺麗ですよね♪こっちの模様は……蝶の羽のような感じにして。」
刻まれる模様はとても精巧で少し見ただけでその腕がわかった。
「うわ、すご……DEXだけの問題じゃないよねこれ。」
【DEX】なら私もそこそこあるけどあそこまで細かいのはできる気がしない。
「我ながらいい出来♪やっぱりさくらってば天才ね♪」
笑顔が眩しい。声も可愛いし人気が出るのも頷ける。……あ。
見入っていた私は火力を間違えて錬金ゴミを作り出していた。
ゴミでも錬金鋼作るのに必要だし仕方ないと割り切ろう。
「じゃあ最後に魔力を流すよ〜♪」
仕上げの工程があるらしい。ひとまず手を止めて配信を見る。
彼女がブレスレットに手をかざすと淡い光に包まれ彫られた模様に沿って強い光が流れていく。
「綺麗……。」
見惚れる私。
その光景は幻想的で彼女の見た目も相まってとても神秘的に見えた。
「はいかんせ〜い♪」
彼女がそう言うと光がブレスレットの中へと収まっていった。
〈いつ見ても美しい〉
〈さすがさくら姫〉
〈作品にも美しさが滲み出てる〉
コメントが流れる。……よいしょばっかりで羨ましいなんて思ってないんだからね!
「でもほんと民度いいなー。私も今から路線変更……いや無理だ。多分煽られてキレる。」
面と向かっては無理だけど顔が見えてなければある程度なんでも言える自分を恨む。
「あれ?ブレスレットの効果とか見せてくれないんだ。」
私は作ったものを全て見せてるけど普通は見せないものなのかな?リスナーにも開示しすぎって言われたし普通はそうなのかもしれない。
「じゃあ今日作ったこれはさくらの店に置いておくから早い者勝ちね♪」
あーそういう事かぁ。効果を知りたければ店に来てついでに買い物していってね的な感じなのね。
「じゃあブレスレットも作ったしここからいつもの雑談ね♪」
作業して雑談。これが彼女のルーティンなのか……今度参考にしてみようかな。いつも作りながら喋ってるだけだし。
「さくら最近気になる事があるんだよね♪えーっとあの錬金術師の……ミィちゃんだっけ?」
…………聞き間違いだろうか。なんか急に名前を呼ばれた気がする。
「あの子が作った錬金鋼だっけ?さくらアレでアクセサリー作りたいなぁって思ってぇ。」
なんだろう……嫌な予感がする。
「だからさくらミィちゃんとコラボしたいんだよね♪さくらがアクセサリー作ってあげるから代わりに錬金鋼使わせて欲しいなって♪」
勘弁してください……人気配信者とコラボなんて危なすぎる。
対応ミスったら絶対炎上するじゃないですか!
〈ミィって誰?〉
〈今色々話題になってる錬金術師でしょ〉
〈あーあの泣き顔が切り抜かれまくってる子ね〉
〈生意気だけど結構可愛いよね〉
え?泣き顔切り抜かれてるの?初耳なんだけど?
「ちょっと〜さくらの配信で他の子かわいいって言っちゃダメだぞ〜♪」
そうだコメントのアホども私にヘイトを向けるんじゃない。
〈もちろんさくら姫が一番可愛いよ!〉
〈あんな胸もないお子ちゃまなんて姫の足元にも及ばないですよ〉
〈さくら姫に敵うものなし!〉
おいさらっと私をdisるな。
「うんうんそうだよね♪それで話戻すんだけど、さくらミィちゃんとコラボしたいからみんなに手伝って欲しいんだよね♪」
手伝うって何やらせる気なんだ。
「みんなにはミィちゃんを探してさくらとコラボしてあげて欲しいなってお願いして欲しいんだよね♪」
マズい。こんなの拒否権無いようなものだ。
〈わかった!〉
〈あんだけ顔出してるんだからすぐ見つかるでしょ〉
〈服装も特徴的だからな〉
いや勘弁してくれ。なんでこいつらも乗り気なんだ。
被害を最小限にする為に私はすぐさま彼女の配信の概要を開きDMで連絡を試みる。
「迷惑ですって送るか?いや……そんな事しても彼女の性格だと絶対やめないでしょ。」
やっぱり選択肢は無い。私は渋々メッセージを送った。
「あ!みんな〜やっぱりミィちゃん探してお願いするってのは無しね♪今ミィちゃんからメッセージでコラボしましょうって来たから♪」
さくら信者に囲まれるくらいなら自分から行ったほうが幾分マシだ。そう判断した私は[配信見ました。コラボしましょう。]なんてメッセージを送った。
「って事は今ミィちゃんさくらの配信見てくれてるんだよね♪詳細は後で連絡するからよろしくね♪」
そう言って彼女は画面に向かって手を振った。
先程まで可愛く見えていた彼女が今は悪魔のように見える。
「あーどうしよう。アリナに相談しようかな。」
相談してどうにでもなるものでもないけど今は愚痴を言いたい気分だった。
「じゃあミィちゃんともコラボできることになったし次の話にいこうか♪さくら最近ね…………」
流石にこれ以上見る気にはなれずに私は配信を閉じた。
「とりあえずアリナに愚痴を聞いてもらおっかな。」
私は悪いとは思いつつアリナにメッセージを送った。
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