17.ちやほやされたい初戦闘
「にしても戦闘か……」
グリーンウルフを思い出して身震いする。
「大丈夫?私もついて行こうか?」
襲われてるのを実際見ているアリナは心配してくれてるのだろう。
「大丈夫。せっかくの初戦闘だからね!一人で行けるところまでやってみたいの。」
恐怖心を克服する為には一人でやらないと意味がないと思う。
「だからアリナも私が戦ってるのをみんなと配信で見ててよ。」
「そう?それならいいけど。無理だと思ったら逃げなさいね。」
やっぱりアリナは優しいなぁ。
「大丈夫。あの時は無かった武器があるんだし、アリナから貰ったこの服のおかげで防御力も上がってる。それにそんな奥まで行こうとも思ってないから心配しないで。」
これは本音だ。
「それならいいけど。それじゃ戻ってきたらバザーに行きましょ。」
「それフラグだからやめて!」
完全に死亡フラグじゃん!勘弁してよ!
そんなやりとりをしつつポーション類を補充し始まりの森へ足を運ぶ。
「じゃあ配信始めよう。……えっと配信モードを雑談から戦闘に変えて……戦闘アクティブ時のカメラ設定を背後にして、それ以外の状態では前方……。これでいいかな?」
設定をプリセットに保存して配信開始を押す。
【探索】始まりの森をお散歩します【時々戦闘】
「よしそれじゃさっき話した通り戦闘配信やっていきます。初見の人はこんミィ。楽しんでいってください。」
〈配信の挨拶も堂に入ったなぁ〉
〈初配信グダってだもんなぁ〉
〈途中で泣いてたしな〉
「泣いてないですし?なに変なこと言ってるんですか?」
歴史改変もほどほどにして欲しい。
〈スクショあるぞ〉
〈なんならアーカイブあるよね〉
〈チュミッターに出回ってるから流石にそれは無理がある〉
「……すいませんでした。」
やっぱり無理だった。
「ま、まぁまずは採取をしながら奥に進む感じでいいかな?」
簡易マップを確認しながら採取をする。
〈ただの石にしか見えんけどあれが素材なんか〉
〈全部の素材が見えるとかやっぱり錬金術師の探査って高性能だよな〉
〈それなのに増えない人口……なんでやろなぁ〉
「私はサブを拳闘士にしちゃってるからハードモードだけど剣士とかにすれば良いんじゃない?それにサブ錬金術師はいるんでしょ?」
〈サブは少し性能が落ちるから生産職は基本メインやで〉
〈ノリで取るやつもいるけど大体メインだよな〉
〈ミィちゃんの配信見てると十全に性能使えない錬金術とかゴミっぽいしなぁ〉
「へー。そんなもんなんだ。」
吸魔草を摘みながら空返事をする。
ガサッ
背後の茂みから物音がした。
さて……リベンジだ。
茂みからグリーンウルフが1体飛び出してきた。
気付いていたので今回は押し倒される事もなくかわす。
グリーンウルフを真正面に見据えるとカメラが背後に回った。これが戦闘状態なのかな?
「やっぱりちょっと怖い……。」
〈初戦闘はビビるよな〉
〈リアルすぎるんだよなこれ〉
¥100〈がんばれ〉アリナ
〈1体ならいけるいける〉
〈死なない程度に頑張れよー〉
アリナのコメントが目に入る。
「アリナ……お金は大事に使ってよ。」
つい軽口を叩いてしまうが……まぁ嬉しい。
「ガウッ‼︎」
そんな事を考えていると大型犬ほどの大きさのグリーンウルフが突っ込んできた。
「危なっ!」
咄嗟に横に飛びかわす。我ながらいい反応速度だ。
〈やるやん〉
〈もしかして運動できるタイプ?〉
〈今飛んだ時パンツ見えなかった?〉
〈見えたローライズのフリルたくさんのパンツ〉
間髪入れずに飛びかかってきたグリーンウルフをかわす。
「すごい……体が軽い!」
このゲームでしっかりと体を動かしたのは最初のキャラメイクの時だけだ。その時は能力値を決める為に現実と変わらない身体能力で動いていたが今は違う。
ステータス決定後の私の体は現実では考えられないほど軽く頭の中で思い描いている動きを狂いなく再現できた。
〈なぁミィちゃんすごくね?〉
〈あれ現実で相当動けてるって事だよな〉
〈あ、ヘソちらしてる〉
「ただ問題発生……。どうやって攻撃しよう。」
現実で喧嘩なんかした事ない私は当然人を殴った経験など無いのでどう攻撃すればいいのかわからなかった。
〈あの子攻撃の仕方分かってない感じ?〉
〈あー人とか殴った事ないのか〉
〈そりゃ女の子が殴り合いの喧嘩とかせんやろ〉
〈男もそんなにしねーよ〉
かわしてばかりだと先にスタミナが切れるのでグリーンウルフが突っ込んでくるルートに拳を置いてみた。
「キャインッ!」
鼻に拳が当たったグリーンウルフが鳴く。
「そんなにダメージ入ってないっぽい?」
手応えが全然ない。
〈置いてるだけじゃ壁にぶつかってるようなもんだからな〉
〈たしかにミィ嬢は壁だな〉
〈拳を振り抜かないとあかんよ〉
チラッと見えたコメントにそんな事が書いてあった。壁呼ばわりしたやつは後で殺す。
「振り抜く……よし!」
籠手に魔力を流し込み回復しつつあるグリーンウルフと向き合う。
「ガァッ!」
今までで1番のスピードで飛びかかってくるグリーンウルフ。
「っ!」
グリーンウルフの頭と同じ高さまで腰を落とし、地面を蹴る。
牙を剥く瞬間に体を捻り大きく開いた口に拳を突っ込み……振り抜く。
「ガッ⁉︎」
グリーンウルフは吹き飛び体をピクリともさせなかった。
グリーンウルフを倒した。
経験値を50手に入れた。
レベルアップ1→2
【STR】 2→2
【VIT】15→17
【INT】20→24
【MND】20→22
【DEX】30→34 種族補正+15
【AGI】20→22
ボーナスPT0→5
スキルPt 1→4
お?レベルが上がった……ん?
「STRが1も上がってないんだけど?」
〈たぶん錬金術師の職業補正じゃない?〉
¥2,000〈初討伐記念〉KIRIN
〈INTが4上がってるから多分それでしょ〉
〈格闘系のジョブでSTR上がらないとかマ?〉
「嘘でしょ?え?じゃあなにこの先私は攻撃力が上がらないって事?」
〈攻撃力は武器で上がるぞ!ただ補正がないだけだ!〉
〈それ上がらないって言うんすよ〉
〈というか初期のSTR低すぎないか?常人ラインで10だろ?〉
〈最初の身体測定で決まるから現実のミィちゃんがクソ雑魚ってことやろ〉
「ボーナスはMNDに使いたいのに……どうしよう。」
いや、もう逆に武器に全てを委ねてMP最大値を上げる為にMND全振りで良いんじゃないだろうか?
〈まぁ戦闘メインでやる必要もないし?〉
〈あの動きができるのに戦闘しないのは勿体ないでしょ〉
〈マジでなんで拳闘士なんだ〉
「まぁ悩んでも仕方ないか……とりあえずドロップの確認しよ。」
獣の皮[良]
獣の牙[不可]
「ありゃ。牙が不可だ。」
口の中に拳を突っ込んで振り抜いたから砕けたのかな。
「牙が欲しいとなると頭じゃなくて体狙わないといけないのかなぁ。」
〈さらりと怖いこと言ってる〉
〈狼さんかわいそう〉
「襲われたんだから仕方ないでしょ!私は悪くない!」
正当防衛なのだよ。
そんな話をしていると背後から物音がした。
「っと。また狼さんかな?」
コメントの狼さん呼びが移った……。
「えっと……1匹……2匹……3匹?」
ぞろぞろと現れるグリーンウルフ。
「3匹はマズくない?」
カメラが再び背後に回った。
さっきは1対1だったからカウンターが使えたけど今回はそうはいかない。
拳を置くようなカウンターを狙ってる間に別のに飛びかかられるとかいうオチが見えてる。
「どうしようかな。」
飛びかかってくるグリーンウルフを体を捻りながら籠手でいなす。STRが無いから直接的に弾くということはできない筈だ。できたとしてもこの状況で試す度胸はない。
〈複数相手はキツそうだなぁ〉
〈根本的な攻撃力が足りてないから頭数を速攻減らすってのができないもんな〉
〈今もいなしてるだけだし攻めに転じられない〉
〈……あれマズくね?〉
「このままじゃ埒があかないなぁ。」
正直いなすだけで良いならスタミナが続く限りはできると思う。でも相手が3匹いる以上先にスタミナが尽きるのは私だ。
「どうにかしないと……っえ?」
グリーンウルフに気を取られ周りを見ていなかった私は大木を背中に背負う形に追い込まれてしまった。
「やばっ!」
3匹が同時に飛びかかって来たので私は前に逃げた……いや逃げさせられた。
そのうちの1匹が木を利用して三角跳びのような事をしてきた。
「あだっ!」
回避できなかった私は後ろから押し倒されるような形になってしまった。
〈あちゃー〉
〈なんかエロくない?〉
〈俺にそんな趣味はない……けど気持ちはわかる〉
〈ミィちゃん大丈夫なんかあれ〉
グリーンウルフが背後から噛み付いてくる。
「ちょっと!どいてっ……ってば!」
痛覚設定は切っているので軽い衝撃しか来ないが恐怖で心拍数が上がっているのを感じる。
HP 420/420
HP 390/420
HP 358/420
どんどん減っていくHPがさらに恐怖を煽る。
「やだ……どいて……どいてよっ!」
グリーンウルフを殴るが体勢が体勢なので碌に力も入らず退かせる気配がない。
〈また半べそかいてる〉
〈でも大型犬サイズの狼に組み伏せられるって相当怖いよな〉
〈興奮してきた〉
〈さっきからやべーやついるな?〉
他の2匹は様子を伺っているようだけど多分私が抵抗を辞めたら飛びかかってくるだろう。
「ぐすっ……こんの……重化っ!」
一か八か重化をかけて殴る。
「キャンッ!」
グリーンウルフの悲鳴と共に背中が軽くなるのを感じる。
「やった!」
すぐさま前方へと駆け出して体勢を立て直す。
〈おぉっ抜けたか!〉
〈やっぱりスキル強いな〉
〈消費MPと持続時間が知りたい。職業スキルとどう差別されてるのか気になる〉
「こいつら……もうゆるさん!」
殴り飛ばしたグリーンウルフに追撃をする。
頭に血が上っているのだろう殴りかかることに抵抗はなかった。
「ギャンッ!」
殴る瞬間に重化を使う。断末魔を上げたグリーンウルフが消えていく。
「残り2匹……。」
振り返りそう呟く。グリーンウルフがすこし後退りしたきがする。
〈こわっ〉
〈完全にキマってますねこれは〉
そこからは早かった。戦意が下がったグリーンウルフに先程までの攻撃頻度はなく一方的に殴り倒す事ができた。
〈蛮族や〉
〈修羅がおる〉
〈狼さんかわいそう〉
「誰が蛮族だ!」
戦闘を終えコメントを見る余裕ができたが相変わらず失礼なやつらだ。
「そういえばスキルについて詳細が欲しいってコメントがあったけど効果時間は2秒消費MPは2って感じだったわ。」
〈普通のスキルって30消費の1分継続だよな効率悪くね?〉
〈発動タイミングはシビアだけどMP消費を抑えられるって点では利点じゃないか?〉
〈自動回復込みならタダみたいなもんだろ〉
〈重化はいいけど硬化は使いづらそう〉
〈パリィみたいに使えばいけるいける〉
「賛否両論なのね。まぁ今はこれしかないから騒いでも仕方ないけど。」
初級ポーションを飲みながらステータス欄を見てみる。
「やっぱりSTRは上がってない……。ツラいなぁ。」
〈しゃーない切り替えてけ〉
〈諦めろってことやろ〉
〈スキルでも取ればいいんじゃない?〉
「そういえば拳闘士のスキルなにも取ってなかったから取ろうかな。」
拳闘士のスキルツリーを開く。
【練気】身体強化の術。魔力を気に変換し能力を上昇させる。
消費MP30 持続1m 【STR】【VIT】【AGI】15%アップ
【正拳突き】拳闘士の基本技の一つ。正しい姿勢から放たれるほど威力が高まる。
消費MP10 【STR】の値を参照してダメージ計算をする。
「STR低いのがかなり痛いなぁこれ。」
割合アップは相性が悪い。
「それでも練気以外の選択肢ないよねこれ。正拳突きとかカスダメしか出ないでしょ。」
〈実質1択やなこれ〉
〈しゃーなし〉
〈動き回るスタイルと正拳突きの相性の悪さよ〉
「そうだよね。君らと同意見なのは癪だけどそうなるよね。」
【練気】を取得する。
スキルPt 7→5
「他に取れるのは……今は無いか。じゃあ残りは貯めとこうかな。次はボーナスPtだけど……当面はMNDに全振りでいいかな」
ボーナスPt 10→0
【MND】24→34
「こんなところかな?このままいったら魔法拳士とかって呼ばれちゃうのかな〜。」
カッコいい二つ名とか憧れるよね。
〈魔法使えないやん〉
〈泣き虫錬金術師とか呼ばれてるのは見たことある〉
〈メスガキとか書かれてるのも見たな〉
「不名誉すぎるっ!なんならメスガキとか二つ名でもなんでもないよね?」
本人が嫌がってる渾名はイジメと変わらないんだぞっ!
「まぁいいや……いや良くないけど。とりあえず探索を続けるわ。」
明日も更新します。
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