10.ちやほやされたい初商売
「バザーに出品してみよう!」
思い立ったが吉日!早速バザーの位置をマップで調べる。
「街の中央のすぐ近くなのね。NPCの商店も近くにあるみたいだしそこにも寄って相場見てみようかな。」
――街の雑貨屋
なんとも捻りのない名前だ。
「いらっしゃい。何か入り用かい?」
なんか豪快そうなおばさんに声をかけられた。名前を確認してみる……黄色。なら話せる。
「ごめんなさい特に決めてないので見させてください。」
「そうかい?ならゆっくり見ていってちょうだい。」
「ありがとうございます。」
店内を見渡してみると木の棚に蝶品が陳列されており、値段の紙が商品の列ごとに貼ってあるというシンプルなものだった。
「あった浄化水!この量だと……500mℓくらい?」
値段を確認してみると500Gと書かれていた。
そういえば私は今いくら持ってるのだろう?使ってないから少しくらいは持ってるはずだけど確認してなかったのでステータスを開いてみる。
所持金 3000G
多いのか少ないのか分からないけど多少は持ってたみたい。
「すいません。この浄化水を入れてる瓶ってありますか?」
「変なもの欲しがるんだね。そんなんでよければ1個10Gで売るよ。」
「ありがとうございます。あっあとそこのポーションを入れてる瓶もあります?」
「それなら1個5Gでいいよ。」
ポーションの瓶もここで手に入るみたいだ。グッバイ袋花くん……。
「えっとそれじゃ浄化水の瓶が20個で……ポーションの瓶を50個くださ……。」
個数の確認をしてるとふと目に付いた商品があった。
探索用マント 野草摘みが好んで使うマント。防御能力は無いが、フードを被っている間他の者に少し気付かれにくくなる。 売値2500G
何これ欲しい。顔バレしてる私からしてみたら効果なくても顔隠せるだけでありがたいのに、追加効果付きとかめっちゃ良いじゃん!
「おばちゃん!これもください!」
「はいよ。合計2950Gだね。」
所持金がほぼ消えたが元々使ってなかったので問題無い。
マントを装備して店を出る。デザインは白で腰くらいの長さ。首のところを赤のリボンで止めており個人的にはすごく可愛い。
「これで2500Gなら安いんじゃないかしら?分からないけど。」
やっぱり女の子だし服を買うのは楽しい。フードを被り私はウキウキ気分でバザーへと向かっていった。
――スターティア交易広場
「ここがバザーなのね。」
見渡してみると屋台だったり敷物広げてフリマみたいなことやってたりと中々活気があるようだった。
「コメントだと自動で取引してくれるところがあるって書いてあったけどどこだろ?」
探しながら少し歩いてみると大きな掲示板みたいなものが視界に入ってきた。
「……これかしら?」
掲示されてる紙に触れると半透明の画面が現れた。
出品者 †クロノス†
獣の皮[不可] 450G
獣の牙[可] 300G
なるほど!こういう感じなのね。
確かにこれなら交渉の余地は無いけど顔を合わせずに済むわ。
「どこで受け付けてもらえるのかな?」
周りを見てみると掲示板の横にカウンターを発見した。
受付のお姉さんは……NPCだ。にしても綺麗なお姉さんだ。女の私でもドキドキしちゃうくらい顔が整ってる。
「あのーすいません。出品したいんですけど受付ってここで大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫ですよ。ご利用は初めてでしょうか?」
「初めてです。注意点とかありますか?」
「説明させていただきます。まずこちらの掲示板ですが基本的に利用に制限はありません。
掲載期間に関しては初掲載より336時間となっております。
金額設定にも制限はありません。出品するアイテムを設定した際、平均価格が表示されるのでそちらを参考にして下さい。
そして最後の注意点ですがこちらの掲示板で購入したアイテムは流通の健全化の為、購入より96時間以内の販売は出来ないようになっております。」
なるほど。最後の奴は俗に言う転売対策ってやつなのかな?
「ありがとうございます。問題無いので受付してもらっても良いですか?」
そう言うと受付のお姉さんが紙を渡してきた。
「こちらに必要な情報を記入して提出をお願いします。」
なんかすごい優しい笑顔で渡してくるもんだから惚れそうになったよ……。私にそんな趣味無いはずなんだけどなぁ。
まともに話したのがさっきのおばちゃんとこのお姉さんだからおかしくなっちゃってるのかもしれない。
「えっと……PNとアイテムと価格、最後に本人登録の為に指をタッチすればいいのね。」
とりあえず浄化水と入力してみる。
浄化水 500mℓ 平均出品価格 480G
「流通少ないって言ってただけあって店売りより気持ち安い程度なのね。」
ぶっちゃけ方法さえ分かればいくらでも作れるアイテムだし、今回はポーション類を流通させる目的があるから……。
出品者 ミィ
浄化水[1ℓ] 750G 在庫10
初級ポーション[+25%] 180G 在庫3
マナ促進剤[+100] 300G 在庫3
マナポーションは自分で持っていたいからこんなものかな?
「お姉さん。書けたんでよろしくお願いします。」
受付のお姉さんに紙を渡す。
「ありがとうございます。それでは出品アイテムをお預かりします。」
「はい!よろしくお願いします。」
インベントリからアイテムを取り出してお姉さんに渡す。
「確かにお預かりいたしました。購入された際にはメッセージをお送りいたしますので、都合の良いタイミングで受け取りをお願いします。」
受け取りは来ないといけないのか。……ちょっとめんどう。
ひとまずの目的は果たせたから後は売れるのを待ってようかな。
というわけでログアウト。今日は自分のご飯作らないとだけど……適当でいいか。
その時私は気付いて無かった。
受付をしてた私の事を見つめる怪しいプレイヤーに。
「ミィちゃんみーつけた……。」