1.どうぞよろしくお願いします
扉を手でゆっくりと開ける。
俺たちはタクシーから降りた。
「ここか.....」
目の前にはちょっとボロいアパートが建っている。
「ここ.....ですか?」
俺の後輩であり助手の凛が少し不安そうな顔をしている。
「ちょっと待ってて」
プルルル
確認のため電話をかける。
「は〜いもしもし、ついた?」
電話越しにふわふわした声が聞こえた。
「ああ、一応指定された場所に来が.....奈津、このボロアパートで合ってるか」
「そうそう、多分そのアパートだと思うよ」
「ちょっと貸してください」
凛が携帯を取った。
「奈津さん、どういうことですか5億の予算は.....予算はどうしたんですか本部から支給されたんでしょ」
「大半は......研究に回した.....」
「.......マジですか?」
「....マジです」
「はぁ、まぁいいです野宿よりマシだと思いましょう、アフリカの時はほんと殺意湧きましたから」
「風呂も来週には部屋にできるみたいだから来週には風呂トイレが部屋付きのアパートになるから....」
「あ.....許したわけじゃないので次会った時は先輩にも私にもたっぷり奢ってもらいます」
「支部長の権威と威厳は......」
「ないです」
「はい....」
「どうぞ」
話し終え凛が携帯を返した。
「奈津、仕事はどうなっている?」
「ん〜今んところはないね、しばらくはそこに慣れてもらってちょっと経ったら軽いやつ頼むよ」
「わかった、ちなみに.......あれは付けてくれたか?」
「ああ、付けてあるよ最新のものも大体揃えてある」
「そりゃよかっった、それじゃ」
「は〜い、さいならー」
「あなたたちが、入居者の方達ですか?」
電話を切ったちょうどに高齢の女性が話しかけてきた。
「ええ、そうですよ」
「そうでしたか、私ここの大家の百合華と言います」
「犬塚 豪です」
「そちらは娘さんですか?」
「む....娘......」
「まぁ、そんな感じだと思ってもらえれば」
「はい、これ7号室の鍵ね」
大家はアパートの鍵を渡した。
「じゃあ私はもう戻るね、何かあれば聞きに来て頂戴」
大家はアパートの一階の隅の部屋に入っていった。
俺たちは階段を上がって7号室に入った。
「おお、まぁまぁ広いな」
「さてと、あれを付けてくれたらしいからな」
俺は奥の押し入れの一つを開けた。
「ヒュー......たくさんあるね」
押し入れの中には拳銃から狙撃銃までいろんな種類の暗殺用武器が詰められている。
麻酔、ゴム弾、実弾、全部揃ってるね〜
一応護身用も兼ねてるけど相手が死ぬなこれ。
「とりあえず他の荷物は明日届くらしいから今日はもうすることないけど何かしたいことあるか?凛」
「ん〜特にないですね、先輩がなんかするんなら一緒にやりますよ」
「じゃぁ」
俺はケースからチェス盤をだす。
「チェスですか? いいですよ、今日こそは勝って見せます」
それから約8時間後・・・
__________
結果
豪 5勝0敗
凛 0勝5敗
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「........負けた.......完敗」
「もう暗くなってきたし、そろそろ銭湯行くか?」
「そうですねもう行きましょうか、銭湯とか何年ぶりでしょうか......あと一週間の辛抱です」
一週間は部屋に風呂がないため銭湯に行く必要がある。
銭湯に移動中・・・
「はあああ、生き返るぅ」
しばらく派遣ばっかでろくに休めてなかったから最高に気持ちがいい、生き返る。
ただいつかはあのアパートから出るけどな。
いやぁしかしこれは部屋に風呂ついても通えるくらいいい銭湯だ。
あと20分くらいで出るか。
20分後
「んぐんぐ...........ぷふぁー、何歳になっても風呂後の牛乳は飲んでしまうなー、特に健康法とかでは無いんだけど美味いんだなこれが」
ドライヤーをかけて男湯を出る。
「あ、結構長風呂でしたね」
先に凛が風呂から上がり待っていた。
「ああ、最近あんま入れてなかったからね」
帰り道、街灯に照らされた道をゆっくり歩いて帰った。
「明日は奈津さんに会っときますか? 腕も鈍ってるかもしれないので」
「そうだね、することないし仕事来るまでは鍛えとかないとな」
家に帰ると布団を敷きすぐに眠りについた。
本当なんでまともな家に住めないんだ.........