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世界を破滅させるのに魔王が必要ないなんて言わせないんだからね!

作者: こしあん

「ちくしょうめえええーーーーッ!!!」


魔王様と呼ばれる男が叩きつけた羽ペンが机に当たって跳ね返り、頭部から角の生えた男の頭に突き刺さる。

角の男は困ったような表情をしながら羽ペンを引っこ抜き、ゆっくりとした手つきで羽ペンを机に戻す。

頭から「ぴゅー」と音を立てるかのように血が噴き出るが、ひと撫ですれば傷跡一つ残さず羽ペンが刺さる前の状態に戻る。


「魔王様、どうか落ち着いてください」

「これが落ちつけるかボケがああーーーッ!!!」


どうしてこうなったのか、それは本日の会議の冒頭からはなそう。



「みな、よく集まってくれた。本日の世界情勢の事を話してくれ」

「ハッ」


魔王城の会議室に幹部たちが集合し、椅子に座っている魔王に対して敬礼をする。


「世界情勢ですが大きく動きました。まず、突然湧き出てきた無名の冒険者が魔物を大量討伐……しかも人類たちの言う高ランクのモンスターばかりで、けた外れの資金を獲得しました」

「それにより該当国家に流通している貨幣が枯渇。造幣局が全力で貨幣を鋳造するも、冒険者のハント・ペースの方が早く追いついていません」

「さらに、それによって鉱物資源も枯渇し造幣局員や経済担当の官僚たちが過労死するとともに国家自体が財政破綻、醜いまでの激しい内戦状態となり、周辺各国が介入し草刈り場となっております」


ふむ、と魔王はアゴヒゲをひと撫でし、顎を少し持ち上げる仕草をして優秀なる部下たちに続きを促した。


「それを理不尽であると感じたらしいその冒険者と一行が、周辺諸国の介入を鎧袖一触で打ち払い、破綻国家の貴族たちもついでに大量に殺害し、冒険者はその国の王位に就いたようです」

「その影響で介入した国家も、元の破綻国家も貴族や官僚の絶対数が不足し、国家運営がかなり困難な状況にあるようです」

「また、該当冒険者は以前荒稼ぎした資金をつかい、見慣れぬ新製品や農法を次々に開発、力にものを言わせて無理やり流通させているため、各地の流通業が過労死しつつあります」

「まてまてまて、展開早すぎやしないか? 普通そんなスイスイいかないじゃろ?」


思わず、といった形で魔王が報告の進行を止めてしまう。

確かに常識的に考えればそうだし、無名の冒険者が王位に就くなんて正気の沙汰じゃない。

政治というのは微妙な力関係を綱渡りしながら綱引きしてギリギリの均衡を保つ繊細な儀式である。

力こそパワーみたいな理論で一つの城を得ることは確かにできるだろうが、国家運営レベルまで行くと無理が過ぎる、ただの馬鹿にはできない業の深い世界が政治なのだ。


何故ならば、力こそパワーの源である本人が死んでしまえば全て無に帰すことになるからだ……国家とは持続可能な群集団でなければならないからだ。


魔王と呼ばれる男も確かに魔族の中でも図抜けた力を持つ存在であり、魔族自体が力こそパワーという脳筋理論で成り立っている存在である。

しかし魔王が図抜けた存在であるからこそ政治というものが持つ繊細な性格を理解し、持続可能な集団として存続させるために苦労してきたのだ。

彼ら魔族の目的は人類種国家の殲滅と人類種の支配であり、どれだけ図抜けた力を持とうとも力だけで一つの種族を完全に支配しきるのは難しいと、力を持つ存在だからこそ理解したのだ。


「人類国家にスパイとして入り込んでいるものからの報告によりますと、展開を早くしなければ飽きられてしまうという発言があったそうです」

「ワシ、世界を破滅させるためにじっくり計画を煮込んでゆっくり実力を整え300年雌伏してきたんじゃが?」

「それがダメみたいです」


がっくりと肩を落とした魔王を横目に、報告は淡々と続く。


「その新製品は既存の製品を超える性能を持つため人気がありますが、既存製品を開発していた製造者やそれらを取り扱っている商家が軒並み破綻しています」

「また冒険者のこだわりか、農家にとある穀物を作らせているようですが、従来品である小麦に比べて大変手間がかかり、調理時の臭いが嗅ぎなれないためかとても臭く、味もなんとも言えず不評であり、農家の不満もかなり増大しておるようです」

「以上から各国かなり治安情勢が悪く、治安以前に人材不足で統治の体裁が成り立っていない状況です」


魔王と呼ばれている男は、普段からとても威厳のある魔族であるが、この時ばかりは唖然とした間抜けな表情をさらしてしまっている。


「先ほど報告に出ました、コメと呼ばれる穀物を調理したものがこちらの釜に入っています……出来立てです」

「調理法は、最初は加熱し通常通り煮る形になりますが、水分が減って以降は蒸す形で行われています」


そうやって釜が魔王の目の前まで運び込まれ、釜の蓋に部下の一人が手をかける。


「これが、正しく調理された直後のコメの臭いです……」

「クッサ、吐きたてのゲロの臭いじゃないか!」


流石の魔王といえども、このモワッとした蒸気と共に吹き上がる炊き立てのコメの臭いには顔をしかめて、表情だけで人を笑わせる芸人のようになっている。


「引いた小麦をこねて焼いたもののほうが臭いだけでも腹が減る威力があるじゃろ、いかなワシとて神に感謝するレベルだというのにコメときたら……!」

「味も微妙です、よく噛めば甘みが出てくるとのことですが」

「この臭いによる印象で噛む勇気すらでんわ!」


魔王の言うとおりであり、やはり小麦をこねて焼成したパンと呼ばれる食物の優秀性が際立っている。

だいたい、小麦は畑に適当に種をまくだけであとは自然の天気に任せておけば勝手に生育する優秀な穀物である。

その上焼けばあのおいしそうな臭いをだすわけだから、切り替える理由など一つもないと言える。

パンにバター、それとグラス一杯のワインがあればそれで十分だと神に毎日感謝している魔王からすれば、こんなもの食べ物じゃあない。


とはいえ若き頃から苦労に苦労を重ねた魔王は、食べ物を無駄にすることは無い。

作ってくれた人々に感謝をし、無事に育ってくれた作物に感謝をし、無事に育ててくれた自然に対する感謝を決して忘れない。


「実際味は無個性と言った感じじゃな?」

「どうもコメを噛み締めながらオカズを同時に口に放り込むことにより、口内調理という形で味わう穀物のようで」

「……基本的な食文化が違い過ぎる! そのボケはいったい何者だというのだ!」

「チキュウジンとかいっているそうです。異世界からの転生者なんだとか」

「まだ宇宙の深淵から来たその名を口に出すのも悍ましい名状しがたい来訪者の方が常識的じゃよ!」


魔王は怒りのあまり震える手でゆっくりとメガネを外す……長年のデスクワークによってたまった眼精疲労からか、最近の魔王は老眼になりつつあった。


「皆下がってくれ報告はもうよい。委細はいつも通り上級幹部連と相談して今後を決めるからな……軍師と将軍と宰相に書記、そしてそこでコメの臭いでガチゲロ吐いてたそこのアンポンタン、お前もだ」


机に肘をつき、両の掌で顔を覆っている魔王がそう声を発すると、不安そうな顔をしつつも魔王城の官僚たちや政治家たちが会議室を粛々と退室していく。

残された上級幹部たちも同様に不安げな表情をしていて、ガチゲロを吐いたアンポンタンは床掃除を必死にしている。

そして、ゆっくりと扉が閉じられた。


魔王はゆっくりと顔から両手を離し、うつむいたまま大きく鼻から息を吐き出して、そしてスッと顔を上げる。


「早急すぎる! それに性急すぎるんじゃ! 人類文化を何だと思っているのだあのバカは! 世界が壊れちゃってるじゃねえか、それはワシの仕事なんだっつーの!」


いきなりブチ切れて喚き散らし、勢いのまま立ち上がってうろうろし始める魔王。

しかしそれは魔王城にいる者たちならばわからないでもない感情である。

世界を滅ぼすために様々な工夫をし、力を蓄え、それでもどれほど苦戦するのだろうと皆で笑いあいながらも必死に過ごしてきた日々、それがすべて否定されたようなものなのだ。


「既得権を何だと思ってるんじゃ、あのバカから見ればアホ臭いのかもしれんが貴族や商人たちだって足らぬものを必死にこいて工夫しやっとこさ形になり、それでもなおもっとよくできると日々改善し続けてきた結果があのバカが来る前の世界なんだぞ!」

「し、しかし魔王様。該当冒険者によればこの世界は遅れていると」

「遅れてる! 遅れてるとはどこと比べてのことだバーカ! こっちの世界じゃこれがデファクトスタンダードなんじゃ、他の世界の事なんざ知ったことか! 関係ない世界のやり方もちこんで押し付けて、こっちの世界を壊していい理由なんてないわ!」

「何故だか人類圏の女性には好評のようです」

「女囲いたいだけなら山賊でもやってろってんだ! 世界を破壊せんでも好き勝手出来ておっぱい揉み放題だっつーの!」


そして魔王は、まだ猜疑心旺盛すぎる独裁者のほうが政治家としてマシだと叫び、そして冒頭へと戻るわけだ。


そうやって一通り荒れ狂った魔王は、ゆっくりと椅子に座る。


「だいたいだ、実際に金銀などの希少金属を混ぜ込んでいる貨幣を個人が天文学的な物量貯めこんじまったら、世界から希少金属が消え去るなんてバカでもわかる常識じゃろ……消え去ってしまったら金本位制が成り立たなくなるじゃろがい、あのバカは経済を何だと思ってるんじゃ」


哀し気な顔をしている魔王はだいぶん落ち着きを取り戻したようで、上級幹部たちの間にも安心感が出て少しリラックスした姿勢になる。

アンポンタンは自分のゲロの臭いで追いゲロをしていて、追加の掃除を泣きながら続けている。

威厳的な意味で貰いゲロをするわけにはいかない魔王含め周囲の面々は、顔をしかめつつもアンポンタンの方を見ないようにして話を続ける。


「はぁ……チキュウジンとかいうバカ者をなんとかするしかないのう」

「奴は非常に強く、実際賢くはありませんが世界のルールの盲点を突く狡猾さがあり排除は困難です。なんでも生まれた直後から自我があり、鍛え続けているとか」

「自然生命体としての摂理すら破壊してるとかどんだけじゃよ、マジで」


必死こいて考えた策が潰れるのは今に始まったことじゃないし、それ自体は受け入れられる……それがこの世界で生まれ育ったこの世界の住人であるならば、魔王を超える存在になったこと自体が祝福されるべきだと、魔王は考えている。

しかし、この世界に生まれ落ちたにもかかわらずこの世界になじもうとせず、己の非常識を力づくで押し付け世界を破滅させるだけの異物を許すわけにはいかなかった。


「チキュウジンとかいう畜生は、コミュニティ(この世界)における障害であり、この世界とコミュニケーションをとれぬ障害であるということか。ワシは、奴の事をこれ以降『コミュ障』と名付けることにする。以後奴の事はそう呼称するように」

「ハッ! ……しかし魔王様、これからどうするので?」

「やはりコミュ障の討伐は必須じゃのう……」


軍師や将軍は魔王の発言を聞いてすぐに言葉を交わし合い、それぞれが持つ情報からどのような作戦をとるべきかと素早くシミュレートし始める。

書記官はアンポンタンのゲロ・スメルで胃が急激な収縮を繰り返してくるのをなんとかこらえながら、議事録を必死に書き留めている。

宰相は、魔王の発言を実現すべく国庫に残る資金や物資などの資料を持ってくるように、扉の外で待機している官僚たちに指示をし始める。


軍事にせよ政治にせよ例え民間の商売一つをとっても、何か一つ事を起こそうとすれば多数の人員が動くことになり、それだけコストがかかるということでもある。

遊び半分の素人考えで、ただ強いからという理由だけでひっかきまわされるのは迷惑だと、魔王が喚き散らすのも無理はない話だ。


「少数精鋭で出撃するのだ、軍は動かさんぞ。それは世界の破綻に繋がるわ。もちろんそれが我らの目標であるが、ワシは強い人類と戦って勝ちたいのだ」

「ハッ、しかしそれは……」

「ワシらの死と引き換えとなろうとも……ワシは、世界を救うぞ」


扉の外でこっそり話を聞いている者たちもいたのだろう、周囲が一気にザワついた。

アンポンタンは顔面蒼白のままではあるが、ゲロを拭いていた作業を止めて立ち上がり、片手の拳を握って胸の前に置く敬礼の意を示し、口をひらく。


「魔王様、俺もお供します」

「だからお前はアンポンタンなんじゃ、生まれたばかりの子と妻はどうするというのじゃ」

「妻が残れば子は育ちます、家族の未来すら守れずして何が父か! 見栄と意地の張りどころが今なんじゃあないですか!」

「だからお前はアンポンタンだというのだ……頼んだぞ」


魔王は目を閉じ、感謝するかのように少し頭を下げて言う。

信頼し任せ、成功したら褒め、失敗したなら叱り飛ばしながら共に学び、学びが遅くとも見捨てず背を押し皆で歩む……そうやって魔王は全員を大切にし、魔族たちの未来を紡ぐ道を作ってきた。

個の意識がとても強い魔族と言う社会で王を名乗るまでには多大な苦労があったし、今のような強固な組織を作るためにやるべきことは本当に多かった。

今人類社会が勝手に崩壊してしまうと、平和な魔族たちの国が昔のように魑魅魍魎が跋扈するようなカオスの時代に戻ってしまうという恐れがあった。

そうなれば力の劣る魔族は強い魔族や人類圏の英雄に蹂躙されてしまったりして、今ある笑顔が影響に失われることになってしまうかもしれない。

この魔王は、それが耐えられない。


魔王は国民と部下の未来を守るために転生者を排除することを決め、アンポンタンは家族の未来を守るために死地に供すると言っているのだ。

魔王にとって、これほど心強い味方はいないと言える。


「私ももちろん同行しますよ、魔王様」

「うむ、お前はワシの軍師じゃからなあ。いないとワシなんて失敗ばかりなんじゃ、任せるぞ?」


軍師はにっこりと微笑んで優雅に一礼をする。

彼は脳筋気味な魔族に珍しい頭脳担当であり、魔王の右腕とも呼べるような傑物である。

しかしそれでも彼は魔王城の上級幹部らしく戦場においては常に最前線に出る戦士でもあり、それでもなお軍師として変わらぬその知性を発揮する。

魔王が若き頃は「魔王に過ぎたるもの」のうちの一人として数えられたものである。


「カカカッ、俺も行くぜ大将。久方ぶりに仲良しグループで旅しようぜ?」

「おお将軍……昔を思い出すのう」


将軍がドンと胸を叩いて参戦を希望し、魔王は当然とばかりに了承する。

魔族の土地がカオスであったころ、魔王の説得を受けて最初に彼の仲間となったのがこの将軍である。

本当の意味で魔王と肩を並べて戦えるのは、この唯一無二の親友ただ一人かもしれない。


「人類圏のおねーちゃんは綺麗どころが多いんかね、コミュ障もそういうの集めてんだろ?」

「若いころのワシらに似とるかもかもしれんとは思っとったわ、同族嫌悪とでもいうのかのう。コミュ障が正しく育つならいいんじゃがヒトの寿命を考えれば望み薄じゃなあ」

「カカカッ、俺らはサキュバスをして"性欲モンスター"呼ばわりだからなあ!」

「サキュバスすら一晩で潰れるという噂が広まって、おかげで嫁も持てんかったのう……」


確かに魔王と将軍は、魔族の固定概念を打ち壊し、魔族たちに仲間意識というものを受け付けるに至った。

しかしそれでも世界をやみくもに混乱させることまではやっていない、という自負がある。

そもそも遊びの方で先に名が売れた二人である。


因みに転生者が集めているのは「綺麗どころのおねーちゃん」ではなく、「何も知らない少女」だけであると宰相は知っているが口には出さない。

魔王や将軍が好きなのは夜のガチバトルができる歴戦の女傑たちであり、初心なものは初めからお呼びではないというか、そういうのが出てくると教育することに熱中してしまい己が楽しむことを忘れてしまうからだ。

遊びというのは何も考えずに遊ぶから楽しいのであって、教育を始めてしまったらそれはもう遊びではなくなってしまう。

魔王とその一派の悲しい習性のうちの一つである。


「いやあしかし燃えるね、勝てそうにねえ戦いの相手がまさか俺と同郷とはねえ」

「ぬ、将軍。同郷とは?」

「俺もチキュウジンだった頃があってなあ!」

「なんと!」


魔王が驚くのも無理はない、しかしある意味で当然ともいえる出来事のうちの一つかもしれない。

"コミュ障"が他の世界からの転生者であるならば、それ以外にも似たような出自の人物がいること自体不思議ではないからだ。

多分魔王や将軍含む既知の転生者が知らないだけで、実は数多くの色んな世界からの転生者がこの世界で暮らしていたりするのかもしれないのだ。


チキュウジンあるいは転生者は世界を破壊する存在だなんて評判が出回ってしまえば、静かに清く正しく生きているそんな転生者たちにとっても迷惑な話だろう。

そんな彼らのためにも、魔王はコミュ障を倒さねばならぬと決意を新たにする。


「俺らの世界にゃ"郷に入っては郷に従え"って言葉があってな、まともな知性を持ってる奴ならそう無茶はしねえよ。自分と周囲の寿命を縮めるだけってくらいわかるからな」

「コミュ障のチキュウにはその言葉がないのか、コミュ障らしくその世界自体とコミュニケーション取れてなかったのか、どっちなのかのう……」


魔王の悪い癖のうちの一つだが彼は深読みしすぎることがあり、それによって憐憫を覚えてしまえば彼本来の力が鈍ったりもする。

もしコミュ障もといチキュウジンの転生者がこの世界を尊重し、その中で正しく力を付けその上で魔王の前に立ちふさがるのであれば魔王は本当の喜びの中で死ねたのだろうから……そんな仮の未来を見てしまうのは仕方ないともいえたのだが。


決意を新たにした瞬間に萎みかけるのは何とも情けない話のように思えるが、魔族たちはそんな魔王が嫌いじゃあなかった。


「魔王様、魔族の国のことは気にせず大いに力をお揮いください。下手な同情は禁物です」

「おお、スマンな宰相。確かにワシは多くの事を間違えてきた……だが奴はもっと多くの間違いを犯すであろうからなあ」

「はい、人類圏に残る各国にコンタクトをとり、協調してコミュ障を討伐できないか提案してみます」

「望み薄じゃがまあ、政治のことは宰相に任せとるからのう。ワシらはワシらのできることに注力するだけじゃ!」


そうして「パン!」と膝を叩いた魔王は、ゆっくりと立ち上がる。


「よし! ワシ戦士、将軍も戦士、軍師も戦士でアンポンタンも戦士……久方ぶりのカチコミといこうかの!」

「カカカッ、世の道理も知らぬ大馬鹿野郎と呼ばれた俺らがそろい踏みだぜ!」

「武器は装備しないと効果がないから気を付けてくださいね、倉庫に入れたままじゃ使えないんですよ!」

「そこまで耄碌しとらんわい! ……アンポンタン、倉庫の鍵どこやったかのう?」

「え、無くしたので扉破壊してきていいっすか?」

「やれやれ、軍師らしくピッキングするので破壊するのはやめてくださいね?」


魔王は右腕で将軍を肩を組みあい、左手であほなことを言っているアンポンタンをひっぱたき、宰相に文句を言われ、軍師の意味不明なセリフを笑いながらこう思う。


――これでいい、これがいい。仮にコミュ障に負けたとしてもそれは仕方ない。今までだって勝てると確信できる戦いなんて一つもなかったのだ! 気持ちよく戦って、結果世界を救えるなら笑ってここに帰ってこよう。


魔王城にいる数多くの幹部や官僚たちは、そんな彼らにとっての大英雄の出陣に際し全員が敬礼をして見送った……我らが魔王(勇者)の勝利を願って。


「さあ、ワシらの戦いは……これからじゃ!」

基本は総統閣下で4人の戦士はD&Dリスペクト。

郷に従うと物語にしづらくなるので郷を破壊せざるを得ない数多の主人公たちの哀しみを代わりに背負い、今日も魔王は爆散します。

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[一言] 魔王の最終目的が人類の滅亡じゃなく征服なら国としてやり直せる程度の余力は残さないといけないしコミュ障ほっといて国が周辺諸国巻き込んで滅びるの待つわけにもいかないか…
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