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紙切れ物語 ー見つめる幽霊ー

作者: 綾峰はる人

女子高生の彼女は、若くして他界します。

まだ生きたかったという理由から、この世を彷徨う。


しかしながら、誰にも見えず相手にもされません。


そんな中、彼女はあることを思い至ります。


「おい、聞いたか?あそこのトンネルって、″出る″らしいぜ?」

「それもどうせ作り話でしょー?興味ないよ」

2人の青年が『オカルト研究部』と書かれたドアから出てくるのを、私は見つけた。


彼らは、私に気づくことなく脇を通り抜けていく。

まぁ、見えないのも当然といえば当然で.......。


ーーなぜなら、私は幽霊だから。


まぁ、ちょっと理由あって、成仏できずこの高校をさまよっている。

私も、生前はそういう場所に行って肝試しをしていたものだが、幽霊側になった今、物凄く物申したい。


お前ら、『幽霊=怖い』って発想やめろ。

死んだ後も、生きてた頃の見た目まんまなのにさ。

しかも勝手に空想でゲームや映画に出しやがって、ギャラ貰うぞコラ。

あと見た目どうにかしろ、ほんとに。

「............................」

まぁ、かくいう私も生前はオカ研に入ってめちゃくちゃはしゃいでた1人なんだけど。


でも、こっち側になってみたらマジでつまらない。何もいない『いかにも』な場所で勝手に怖がり、目の前の私はスルーなのだから。


ん?いや、待てよ。


私はもしかすると、気持ちが薄いから見えてないだけなのではないだろうか。


だって、棒アニメの白髪のラーメンの具のようなニックネームの少女は、見えていたわけだし。


もしかすると、そういうことか?


確かに私は、漠然と死にたくなかったという思いがすごい大きくて成仏できてないだけの奴。

ただそれだけ。


誰かにみつけて欲しい、なんて理由はない。


「これじゃ、生きてた時と何も変わらないな」

教室の隅っこで本を読んでいたあの頃と、何も変わらない。

「いや、もう本も読めないのか、私」

なんだか、すごい虚しくなってきた。

こんなところでぼーっとしてる暇があるなら、来世に期待して身を委ねてみた方がいいんじゃないか?


「もう、後悔したって幽霊になっちゃってるんだもんなー」

そういえば、私の飼っていたウサギはどうなったんだろ。まさかとは思うけど、そのまま放置されてたり殺処分されてたりしないよね?


あの子の安否だけ確認してから、成仏しよう。


私は、うさぎのあの子を探し回った。

実家にも行ったがその姿はなかった。


「どこに行ったのよ。あの子」

私はボヤく。たった1週間だ。私が死んでから、まだ1週間ほどしか経っていない。それなのにどこにも姿が見えない。


「ーーほーら、クルミちゃんこっちですよー。ふふふ」


思わず、声のする方向へと振り向いた。私の飼っていたウサギと、同じ名前が聞こえたから。

そこには見覚えのある少女と、紛れもなく私が飼っていたウサギのクルミが庭で遊んでいる光景が広がっていた。


「そうか、あの人に拾ってもらえたんだ。よかった」


私は安堵のため息をつく。

「ありがとう」


私はそうして、成仏した。

クルミ。幸せになるんだよ。

目に見えるものばかりが、正解ではない。という言葉があります。


つまりはそういう事なのでしょう。


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