55.街並み
「2ロキ分のオガールの肉と中銀貨9枚だ。オガールの状態が良かったからな、少し上乗せしての買い取りだ。」
乾燥させた草のような物に包まれた肉と中銀貨が渡された。検索で調べたところ、この世界の通過は、銅貨、小銀貨、中銀貨、大銀貨、金貨の五種類となっている。地球でいうところの銅貨=10円、小銀貨=100円、中銀貨=1000円、大銀貨=10000円、金貨=100000円ぐらいの価格のようだ。
「ほら、リド。」
ナタラさんは、中銀貨を私の手にのせてくれた。
「ありがとうございます。でも、これはナタラさんに。」
私は、受け取った中銀貨をナタラさんに渡そうとするが、ナタラさんは受け取ってくれない。
「あのオガールは、ナタラさんにお土産として渡したものですから。」
「欲のない子だね。お土産はこの肉で十分さ。それにフルーツもあるだろ。」
ナタラさんは私を見て、ニヤリと笑う。
「それでもこれは、ナタラさんに・・・。宿泊に食事までお世話になっているので、どうか受け取ってください。」
ナタラさんは、ハァッとため息をつく。
「だったら、1枚だけもらうよ。あとは、旅の資金にでもしな。」
「でも!」
「リド、年寄りの言うことは聞くもんだよ。」
ナタラさんは私の頭の上に手を置いて、優しく微笑んだ。
「1枚で十分だ。」
「・・・ありがとうございます。」
ギルドを出た私たち。ナタラさんが街の中を見て帰ろうと提案してくれたので、お言葉に甘えることにした。
「ここがノエリアの一番の大通りさ。」
大通りは店が建ち並び、人々の賑やかな声で溢れかえっていた。ノエリアについた日は緊張してたから、ゆっくり街並みを見る余裕なんてなかったけど、こんなにたくさんのお店が並んでいたのね。
「食料から生活用品まで、大抵の物はここに来たら揃うよ。」
大通りの道を進んでいくと、パン屋さんに肉屋さん、武器屋さんに洋服屋さんまで、色々なお店が並んでいた。
「母さん!」
まわりの店よりも大きな店の前を通ると、誰かから声がかかった。
「なんだい!大きな声で。」
小太りの男性がドシドシと近づいてくる。
「会えてよかった。さっき、路地裏の家に行ったけどいなかったから。今朝の契約がまとまったから、書類に目を通してほしくて。」
「いい歳して、まだ母親の許可がいるのかい?情けない
ねぇ。」
「そんなこと言ったって・・・ん?この子は?」
男性と目があう。
「あっ!はじめまして!リドと言います。ナタラさんにお世話になっています。」
「母さんに?母さん、また子どもを拾ってきたのかい?」
「だったらなんだい?」
ナタラさんが男性を睨む。
「何も文句は言ってないじゃないか。」
「ふんっ!」
「リドくん、かな?僕はこの人の息子のノリスだよ。ここの商店をやってるんだ。よろしくね。」
ノリスさんが指を指した方を見ると、タオルや桶など、日用品を扱っているお店があった。
「よろしくなんかしなくていいよ。ほら、他に用がないなら、さっさと店に戻んな。」
そう言うと、目を通した書類をノリスさんに、パサッと戻すナタラさん。
「母さ~ん。」
「いい大人が甘えた声をだすんじゃないよ!リド、行くよ!」
「あっ!はい!ノリスさん、失礼します!」
さっさと行ってしまうナタラさんに、慌ててついていく。しばらく歩くと、前を歩くナタラさんが、一際大きな建物の前で建ち止まった。
「ここは、商業ギルドだよ。」
「商業ギルド?」
「あぁ、稼いだ金を持ち歩くのもいいが、あまり多くを持ち歩くのも物騒だからね。ある程度金が増えたら、商業ギルドで口座を作るといいよ。商業ギルドも各国共通だからね。どこでもギルドがあれば、金を引き出せる。」
「誰でも作れるんですか?」
「基本はね。ただ、預けることができるのが、金貨1枚からだからね、庶民は用がないところだよ。あんたは、そこそこ腕がたつようだから、すぐに貯まるだろう。それに、冒険者ギルドでプレートを発行されてるから、面倒な手続きをしないで、すぐに発行してもらえるよ。」
「なるほど。」
「まぁ、もう少し稼いだら、また来ようかね。」
「はい!」
商業ギルドからさらに歩くと、ノエリアに来た時に見た市場のような所に出た。港に面したお店には、新鮮な魚や貝の殻で作られたアクセサリーなどが置いてあった。一通り見て回った私たちは、家に戻ることにした。
「まだ少し早い時間だね。リドはどうするんだい?」
「食事の用意をお手伝いしますよ。」
「子どもが気を使うんじゃないよ!好きなことをおし!」




