54.買い取り
「あ、あんた、このオガールを一人で倒したのかい?!それに、それは風魔法?!」
「はい。すみません。実は風魔法も使えるんです。」
隠していたことに申し訳なさを感じる私。
「あんた、どれだけの魔法を使えるんだい・・・。しかも、このオガールの状態・・・。オガールはね、近づくと鋭い耳で攻撃してくるんだよ。それに脚力がすごくてね、信じられないぐらい飛び上がるんだ。Cランクの冒険者でも大人2、3人がかりで仕留めるんだ。それをたった一人で・・・。大きさだってあんたとほとんど変わらないじゃないか。一体、どうやって・・・。」
「弓で狙ったんです。」
「弓?!」
ナタラさんは、オガールの傷を調べるようにじっと見ている。
「まさか1発で仕留めたのかい?!」
「はい。」
「あんたの弓はどんな威力なんだ?!綺麗に核を撃ち抜くなんて・・・。」
“あっ!”とナタラさんは何かを思いだしたように、外套を羽織り、私にオガールを持ってついてくるように言った。私は、外套を羽織り、帰ってきた時のようにオガールを背中に隠して、慌ててナタラさんについて行く。
「あ、あの!ナタラさん、どこに行くんですか??」
「ギルドだよ!」
「ギルド?まだ依頼は終わってないですよ!明日も依頼主の所へ行くんです。」
「そうじゃないよ!オガールを買い取ってもらうんだよ!」
「オガールを?でも、せっかくのお肉が・・・。」
「肉?そんなにたくさんの肉は食べきれないだろ。食べる分だけ残して、あとは売っちまいな。オガールの耳は矢じりになるし、他の部位も色々と使い道があるんだ。金を稼ぎたいんだろう?」
「・・・はい。」
「なら、決まりだね。」
私たちは急ぎ足で、ギルドへと向かっていった。
「あら?ナタラさん?と、リドくん?どうかしましたか?」
受付のテラさんが、笑顔で不思議そうに問いかける。
「買い取りをお願いするよ。」
「買い取りですか?」
「あぁ。」
「では、奥の窓口へお願いします。」
私たちは買い取り窓口へと案内された。買い取りの窓口には、がたいのいいエプロン姿のおじさんがいた。
「ナタラさんじゃないか!何を売るんだい?」
「私じゃないよ!」
ナタラさんが私の方を見ると、おじさんもナタラさんの視線につられて私の方を見る。
「ん?こりゃあ、綺麗な顔した坊主だな。お前さんが噂のCランク少年か。」
「リドって言います。よろしくお願いします。」
「あ、あぁ。で、坊主は何を売るんだ?」
「リド、出しな。」
「あ、はい!」
私は背中と外套の間からオガールを出し、買い取り窓口のカウンターの上へ置く。
「お願いします。」
オガールを見たおじさんの目が大きく開いた。
「オガール?!風魔法?!お前さん、このオガールどうしたんだ?!それに噂じゃ、水魔法の使い手じゃなかったか?!」
私は何とも言えないような笑いで返す。
「まぁ、いい。このオガール状態がいいな。全部買い取りでいいのか?」
「肉を2ロキほど持ち帰るよ。それ以外は全部買い取っておくれ。」
「分かった。ちょっと待ってな。」
おじさんはオガールを軽々と持ち上げ、奥へと入っていった。
「あの坊主がオガールを?!まさか!」
「一人で倒したのか!?」
「風魔法の使い手だとよ。」
「水じゃなかったんだな。」
買い取り窓口にいる私たちを遠巻きに見ながら、色々な会話が飛び交っている。
“また目立っちゃったね・・・。”
しばらく待っていると、おじさんが戻って来た。




