51.坊主さんの反省
初依頼の初日を無事に終えた私は、ゆっくり帰路につくのではなく、来た道を戻っていた。
“坊主さんに申し訳ないことしちゃったわ。”
“リディ、ワルくナイ。”
“そうですよ!そもそも、あの男がリディ様に手を出そうとしたのが悪いんですから!リディ様が気にする必要はありません!”
私至上主義の2人(匹)は、私を慰めてくれる。
“ありがとう、2人とも。”
でも、スープを煮込むのに結構時間使っちゃったからなぁ。あれから何時間たったんだろう?さすがに、坊主さんに申し訳ない私は、急ぎ足で坊主さんがいる場所に向かう。
「坊主さん!大丈夫ですか?!」
「だから、俺は坊主っていう名前じゃ・・・しょうね~ん!!」
私が到着すると、坊主さんは縛られたまま、足をモジモジさせていた。
「は、早く、降ろしてくれ!」
「坊主さん、少しは反省しました?」
「した!したよ!」
「本当ですか?」
「あぁ!嘘じゃない!俺が悪かった!」
坊主さんの心の変化を見る。嘘じゃないようだ。
「では、降ろしてあげます。」
私は木に触れ、“離してあげて”と木の精霊にお願いする。坊主さんの自由になった体は、ストッと落ち、水の膜の中でバウンドする。
「早く、ここからだしてくれぇ!」
坊主さんは下半身に手をやり、ブルブルと小さく震えている。まるで、何かを堪えているようだ。
「いいてすか、坊主さん。今度僕に変な言いがかりをつけるようであれば、その時は、覚悟しておいて下さいね。」
絶対零度の笑顔で坊主さんに微笑みかけると、坊主さんはコクコクコクとすごいスピードで頭を縦に振る。坊主さんが了承したところで、水の膜を下に降ろし、割ると、すごいスピードで坊主さんが走っていった。
「・・・何なの??」
“あんなヤツほうってオク。”
“リディ様の貴重な時間を無駄にしてしまいますよ。”
“う、うん・・・。”
私は坊主さんが走っていった方を唖然と見つめていた。
“そういえば、フゥ兄様からもらった検索能力!あれってすごく便利よね!あの能力があれば、この世界のことが調べられるから、お金さえ稼げれば、この街に長くとどまる必要はないわね。・・・ん?もしかして、スノーラド王国で調べれば何か分かるかも!”
【スノーラド王国 検索】
『世界一の大国。国の半分を占めるほどの氷華湖と呼ばれる大きな湖があり、その湖は季節を問わず雪と氷に覆われている。氷華湖は、その名前の通り、氷の華が咲き、その実からとれる宝玉はとても価値のあるもので、どんなに高価でもすぐに買い手が付くほどの逸品。
“宝玉・・・。”
私は傷のついた宝玉を思い浮かべる。
“もしかしたら・・・。”
【スノーラド王国 リディ 検索】
『 エラー 検索不可能 』
【リディ 両親 検索】
『 エラー 検索不可能 』
【リディ 女 雪の月 白月の日 検索】
『 エラー 検索不可能 』
「ダメか・・・。」
私は自分に関することが検索出来ないことを知り、肩を落とす。もしかしたら、行方不明の情報などが出てきて、すぐに家族に会えるかもと期待したが、そう甘くはなかった。肩を落とす私にダウルとアロがすり寄ってくる。
「ありがとう。私は大丈夫よ!2人がいてくれるもの。」
私は2人をギュッと抱きしめる。
「さぁ、街に戻ろう!」
私たちはまた、街に向かって歩き出した。




